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プロローグ──紅月百が案内人鳥になるまで(3)

土砂降りの日の安置所はやけに暗い。はじめてきた場所なのにそう思えた。

顔に布を被せた家族が横一列に眠っている。

(冗談はやめてくれよ。ご褒美デーの翌日はいつも寝不足じゃんか)

生臭い血の臭いと焼き焦げた臭いが一歩踏み入れると鼻を刺激する。

電話に出た刑事が説明するには家に強盗が入り、家を血祭りにさせた、とのこと。犯人も一緒に炎の渦に巻き込まれたという最悪なオチ。

大声で泣くことも膝を崩すこともできず、感情がぐしゃぐしゃになって、

「寝るには早すぎんだろ……っ」

小さく震えた声しか出なかった。

それからが大変な毎日だった。借金取りが学校まで押しかけてきたり、転校の手続きをしたり、中学卒業後の進路先決め……等。

(進路は誰でも悩むか。僕はもう一択だけど)

滲む世界におかしさを覚えながらも、ペンを走らせた。だって、この書類で最後なのだから。

──そして迎えた新学期、今度は自分でしくじりを起こす。

「離してくださいっ!」

高校までの通学路で通りがかった路地。そこで中肉中背の男に襲われる女を──助けた。

(星の紋章……。同じ学校だ。髪がサラサラで危機的状況でも崩さないお淑やかな口調。胸も強調していない。まさに理想の女性。どうか無事でいて欲しい。また会いたいと思うのは不謹慎かな)

生まれてはじめて誰かに見蕩れていた。高鳴る鼓動を抑えきれず、地面にくたばったはずの男の不気味な笑みに全く気づけなかった。

「ほう。男でも可愛い顔をしてるな。こりゃ、あの女の代わりになりそうだ」

掴まれる腕。異臭を放ち、迫りくる不健康な顔色をした太った中年の顔に逆らえない。先ほどの綺麗な思い出が気持ち悪いものに即刻塗り替えられると共に、脳裏に過ぎる家族の顔。

「……たかったなぁ」


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