表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/11

第1羽、男性は女性向けソシャゲがお嫌い?(4)

「では転生の手続きを行いますね」

モモは小鳥遊に書類を渡し、しっかり目を通して貰う。承諾を得たら拇印かサインを。その間、百は置き去りだった。

手続きでサインをして貰うまでは研修でやった。だから仕事を放棄したも同然なのだが、フリッパーを挟もうとすれば「ありがとうございます、次はこちらを」「ここ抜けていますね」「もう一度ご確認いただきますようお願いいたします」とモモに先を越される。

(僕の接客態度が気に入らなかったのか?)

一切目が合わないどころか、口調も正していた。わずかに開いた嘴も横に結んでしまう。

だが、項垂れてはダメだ。

(とりあえず、モモの仕事振りを観察して小鳥遊さんを見送るんだ)

「これで小鳥遊さんにやっていただく手続きは全て完了です」

「フゥー、結構あるもんだな」

「お疲れ様でした。今から奥の間に行きましょうか」

奥に部屋なんて存在したのだろうか。

モモの後を踵を浮かせて伸びをする小鳥遊と共についていく。

宴会場及び案内所を抜け、左に曲がると階段を上がった時にはなかった襖一枚が現れていた。

(いつの間に……)

「どうぞ中へ。布団を敷いてあるのでまずはお休みになってください」

「えっ、いいのか? 眠くなってきたから助かるが……」

くかぁ、と大欠伸をする小鳥遊にモモはニコリと笑う。

「はい、もちろんです。浴衣もご用意させていただきましたので、お好きに着用してくださいね。またお声掛けしますのでそれまでどうぞごゆっくり」

「何から何まですみません」

とろんとした目付きのまま頭をペコペコ。どこか厳つい、取っつき難い印象もあったが根は良い人だ。

(やるだけやって収集がつかないまま、モモに仕事を押しつけてしまったのがする心残りだが)

広い背中が二人の前に出る。そのまま襖を引くかと思ったら、小鳥遊は眠気を抑えてしゃがみ込んだ。

目線はまだ高い。けれど綺麗な歯を零して笑いかけられた。

「ペンギン、世話になったな。愚痴……つーか、和葉さんとの思い出を聞いてくれてありがとうな!」

(……あっ)

わしゃわしゃ。頭の羽毛が乱雑に浮き出て、「今度また会ったら美味い刺身でも食わせてやるよ!」と最後の最後に太陽を見た。

トクントクンと鳴る心臓は全身を暖かくさせてくれる。

「……ごちそうさまです!」

太陽は隠れた。それでも届いたと思う。

嬉しい、嬉しい──悔しい。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ