僕らの過去
それからボクらは離れ離れだった。もうあの小屋にはいられないと思い、仲良くしてくれた商店街の人に助けてもらった。そして裏路地の空き家で珈琲店を開き、情報を集めることにしたんだ。
「懐かしいね…ねぇ2人はどうしたんだい?」
「レオンとフィリンは…今この国にいない。」
ちょっと長くなるんだけど…と言うクラウスはあの日の出来事を話してくれた。
あの日…僕らは国境を越えることができた。レオンとカロルとフェリンのおかげでね。国境を出たすぐの場所に古い洞窟があったからそこでしばらく過ごしたんだ。
僕が起きた時、レオンとフェリンしかいなかった…もうカロルとは会えないかもしれないって思ったよ。だって君は呪いのせいで出られないんだから。レオンたちに話した時、ものすごく怒ってたよ。自分を犠牲にして助けてるんじゃねぇってね。でも、もし僕らが君の立場だったら同じことをしていたと思うよ。
それで僕ら、しばらくしてからイリスに行ったんだ。それでさ、カロルと同じように通行証なんて持っていなかったから、止められちゃったんだ。そしたらね…助けてくれたんだよ。シスターがね。
「シスターは生きているの⁉︎」
やっぱりシスターは生きていたんだ!
「カロルから見たらそうなのか。シスターはイリスとフィスカを行き来してたんだよ。」
シスターはイリスの出身で、ずっとフィスカの子供たちを守ろうとしていたんだ。あんな殺戮の国にいたらいけないって思っていたんだろうね。
それで僕らはしばらくシスターとイリスの教会で過ごしたんだ。シスターは子供だった頃の僕らには教えてくれなかった、イリスがどういう国なのか、フィスカのこと、魔法のこと、生きるために必要なことを教えてくれた。シスター曰く、僕には魔法を扱える力を元から持っていたみたいなんだけど、レオンとフェリンは魔法が使えなかった。
「クラウスは、教会にいた時から魔法使えていたもんね。」
「そうそう、僕、意外に才能あったみたいなんだよねぇ。」
へへっと笑うクラウスの顔は幼かった頃と変わらなかった。
「それでね、なんで2人が今ここにいないかって言うとね…この大陸の秘密の宝を探しているんだ。」
宝…?
「宝って…?金銀財宝ってこと?」
「そう思うだろう?誰もそれを知らないけれど、僕は違うと思っている。もっとこう…世界を揺るがす何かだと思ってる。」
シスターが教えてくれた宝の存在。この大陸にはまだ隠すべき秘密があるらしい。なぜシスターがそれらを知っているのかはわからない。けれど信じてみたいと思ったんだ。
だから僕らは別れて行動しているんだ。2人は今、イリスの隣国、サイクラームにいる。
「そうだったんだ…でもみんな生きているんだね。」
「あぁカロル、君のおかげでね。」
よかった。あの時のボクの選択は間違っていなかった。彼らが無事でいてくれるのならそれでいい。あれ、でも…
「ねえクラウス。彼らがいる場所ってわかるの?国の中にしか手紙は届かないんじゃない?」
「あぁ手紙自体は国境を越えることができるらしいよ。フィスカが国境を閉じていたから届かないだけらしい。」
そうだったんだ…ボクは知らないことばかりかもしれない…
急にクラウスは「思い出した!」と言い立ち上がった。
「カロル!見せたいものがあるんだ!」
そういって胸元のペンダントを渡してくれた。ロケットのようになっているのか留め具を外して中を見ることができた。これは…?
「これは導くっていう魔法でできた羅針盤みたいなものなんだ。それぞれが彼らの居場所を教えてくれる。」
それぞれ違う場所を指し示しているように見えた。便利な魔法だなあ。
「これ、作りに行こう!カロルの分をさ!」
「ああ、行こうか。」
カップを洗い、ボクらはペンダントを作れる場所まで向かった。