クラウスとボクの過去
懐かしかった。歳を重ねていくにつれて、国境近くの小屋で過ごした。そのとき彼らはよく会いに来てくれた。というか一緒に暮らしたんだ。
あの楽しくて、ボクを独りにはせず友達として支えてくれた。その1人がクラウスだ。
「本当に懐かしいよ。元気でいてくれて嬉しい。」
ボクたちは街はずれの小さな家に来ていた。ここはクラウスの家のようなものらしい。よく1人になりたい時にくるそうだった。ここに住んでいるわけじゃないのかな?
「何か飲み物を出そう。」
クラウスは棚から綺麗なカップを出してくれた。いかにも高そうなものだった。
「茶葉はあるんだ。ポットはある?」
「ああもちろんさ。」
2人分の茶葉を入れ、鮮やかな色になるまで待った。心地いい香りが漂い、飲み頃を教えてくれる。
「じゃあ…2人の再会に。」
カップを掲げ、一口啜る。やっぱりこの茶葉を持ってきて正解だった。
紅茶が半分くらいになった頃、クラウスが口を開いた。
「なあカロルはずっとあの国にいたのかい?」
「そうだよ。あの後裏路地で珈琲店をやって、情報を集めてた。」
「そうだったんだね…無事で何よりだ。」
「クラウスは?この国で生活しているんでしょ?」
「そうだね…まあ僕のことはそのうちね。」
何かをごまかすようにコップを仰ぐ。なんだ強くなりすぎて悪いことでもしているのかな?クラウスは昔から頭が良くていたずら好きだった。だから狙われたのかもしれない。
「なあカロル…君のおかげで今の僕がある。君が僕を…僕らを守ってくれたから、生きている。ほんとうにありがとう。」
あの時はボクもみんなに逃げてもらうのに必死だったからね。
僕らは教会で過ごしていた。でも姉さんが死んでから1人でも生きなくちゃいけなかった。姐さんを守ってくれない神なんてクソ喰らえだ。だから教会を離れ1人暮らしていた。他の子は反対したけれど、シスターだけは銃の扱いを教えて1人で暮らすことを反対しなかった。まあボクあの時もう14だったし1人でなんでもできると思っていた。
ボク1人が教会を離れても、クラウスたちは相変わらず教会に住み、手伝いをしていた。
ボクは1人で国境近くの小さな小屋を見つけ、暮らした。復讐するための計画を立てていた。誰に復讐すべきかもわからないのに。
ある日、急に3人が訪ねてきたんだ。「1人じゃ寂しいだろう?」って言ってさ。お菓子と食料とたくさん持ってきてくれた。そして「僕らも成長したし4人で暮らそうよ。」って言った。
ボクは承諾し4人で暮らした。森に狩に行ったり、小さな商店街で買い物をしたり、夜通しトランプゲームをした日もあった。そして成長して、4人でこの国を出て冒険してもいいかもなんて夢物語も語り合った。
「楽しかったよなあ。クラウスとボクと…レオンとフェリンであのちっちゃい小屋で生活してさ。」
「あぁ本当にな…お揃いのタトゥー入れたよね?若かったよねぇ。」
そう言えば4人でお揃いの、友情の証として彫った。痛かったけれど綺麗にはいったし、今もうっすらと残っている。
「あの頃は本当楽しかったよ、カロル。でも…あの日で変わってしまった。」
あの日…あの日ボクらはバラバラになってしまった。
突然フォイルの幹部を名乗る奴らがボクらの小屋を襲った。
「クラウスってやつがいるだろう!奴はどこだ!」
本当に突然で何が何だかわからなかった。しかもクラウスは今いない。フェリンと出かけてしまっていた。
この場にはボクとレオンしかいなかった。
「おいおい、勝手に俺らの家に来て何言ってんだ?」
「うるせぇ!死にたくなきゃ出せ!」
彼らはナイフやら何やらボクらにちらつかせる。ボクらよりも2倍はある体格差じゃ勝てない。フォイルになんて捕まったら何をされるかわからない。だからクラウスを渡すわけにはいかなかった。
でも彼らは帰ってきてしまった。
「あれぇどうしたの?お客さん?』
フェリンとクラウスだった。まずいぞ…
「逃げろ!!こいつらやばいぞ!」
レオンが大声で叫んだけれど、間に合わなかった。後ろから殴られ、クラウスが倒れる。
「クラウス!」
しまった今大声で呼べば倒れた人物が、クラウスとバレてしまうではないか。
「こいつか…?」
軽々とクラウスを持ち上げてしまった。まずい連れていかれるっ…!
止めようとしたけれど、そこからは地獄だった。ボクらはあいつらを殺せない。端っこに住んでいてもそのルールを破れば殺されてしまうから。だからボクらから攻撃することなく一方的にやられた。レオンは激しく抵抗していたからか殴られ、ナイフで切られ、一番大きいやつに腕を反対の方向に曲げられた。フェリンは小屋の外にいたから無事かどうかわからなかった。
ボクも必死に抵抗したけれど叶わなかった。クラウスさえ目が覚めればなんとかなるかもしれない。
ボクらは立ち上がれなくなるまで殴られ、意識も怪しかった。
「はあ…はあ…なあレオン…もういいよね…?走れる?」
「あぁ⁈何する…気だ?」
自身が倒れている机の下…あれがある。これさえあればきっと彼らを逃がせる。
「ボクが隙を作るから…2人を抱えて国境を超えるんだ。あいつらは国境を出られないはずだから。」
「?お前は…どうするんだ?後から…来れるか?』
ボクが国境を越えられないのはクラウスしか知らない。だからボクは…彼らを逃すための壁となる。
「あぁ後から行くよ。ボクが合図したら2人を抱えて全力で逃げて。」
「…わかった。」
こんなに怪我をしていたら不安だけれど、レオンは力持ちだしきっと大丈夫だ。そっと立ち上がった。
「あぁなんだお前?まだ生きてんのか?」
こいつらの問いには答えない。力を振り絞り、机を蹴り飛ばした。
机の下から出てきた銃を掴む。クラウスを抱えている奴の頭を撃ち抜くと同時に、レオンに叫ぶ。
「行け!!!振り向くな!!」
レオンは素早く立ち上がり、倒れたクラウスとフェリンを抱え走った。あれならきっと大丈夫だ。
「お前!!!ルールを破ったな!!殺されても文句言えねえな⁈」
一斉に襲いかかってきた。
「大事な仲間に手出されて黙っているわけないでしょう?」
そのあとはよく覚えていない。アドレナリンが出まくって、倒れた敵の山に1人だけになった時に、ボクは意識を失った。