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第二の人生

 気が付くと周りを大人たちに囲まれていた。

 自分の体が上手く動かせないのと自分の小さな手が見えるのでおそらく赤子で無事に生まれ変わったのだろう。


 生まれたばかりで聴覚の機能が未発達だからなのか、まだ周りが何を言っているのか理解できなかったが皆笑顔で喜んでいる様子だったので一安心して眠りについた。



 それからしばらくはお腹がすいたら母乳を飲み、眠くなったら寝る生活が続いたため、その間にいろいろと観察していたため、いくつか分かったことがある。


 まず自分の名前はレスタのままだった。父はジンで母はパナという名のようだ。家名は恐らくなさそうだ。家はあまり大きくはないようだが父と母と3人暮らしをする分には問題がないように感じた。文明は火を起こしているのを見たが電気はないようだ。言語に関しては聴覚が成長しているからなのか女神様が与えてくれた能力なのかほとんど前の世界の言語と同じように感じ、すんなりと理解できてきていた。

 

 父は毎日弓や刃の付いた武器をもって出かけて行き、動物などを狩りに行っているようで、母は皮などから衣服類を時折作っているようだった。

 裕福と呼べるような生活ではないかもしれないが、平和な日々が続き、自分も少しずつ話せるくらいまで順調に成長することができた。


 その間にいくつか気になることがあった。

 まず一つは父や母がまるでストレスを感じているように苛立っていたり不安定になっているような日が何度かあった。狩りが上手くいかない日が続いた時や、ほかに必要な物が手に入らなかった時などに顔や行動に出る日もあった。少しおかしいと思ったが見間違いかもしれないし、女神様もストレスの無い世界と言っていたし今はまだ信じてみようと思う。


 もう一つはこの世界にはどうやら魔法が存在するらしい。素質がある人は誰にでも使えるらしいが、両親は全く使えないようだ。

 これに関しては女神様から頂いた特別な力で使えるのではないかと期待をして魔法をイメージしてみたが全く使える様子はなくて少し落ち込んだ・・・。



 それからまたすくすくと育ち、ある程度話せるようになったため、両親にストレスについて聞いてみた。


 「ストレス?聞いたことないな。何かの名前だろうか。」


 「ストレス?うーん私も聞いたことないわね。魔法の呪文か何かかしら。」


 と、言われたのでああ、やはりストレスが無い世界なんだな・・・と一安心した。



 しかし、その安心はそのあと簡単に崩された。

 ある日、父が狩りの途中で大ケガをしてしまい、ケガが治るまでの間、狩りに行けない日々が続いたのだ。狩りに行けない苛立ちから声を荒げたり、食料などの余裕がないのに酒をどこからか交換してきて飲んでいたりした。食べるものはどんどん質素になっていった。そして母は食事をほとんど摂らなかったため日に日に衰弱しているようで体調も崩してしまっていった。


 僕はこんな事態にも関わらずなぜか自身はストレスを感じることなく冷静でいられた。

 しかしストレスは感じなかったが自分の無力さに悲しみ、ああ、どうしてまたストレスのせいでと思い落ち込んだ。


 しかし、ストレスに対する怒りが出てきたときそれは突然起きた。

 なんと自分の手が光に包まれだしたのである。そしてわずかな希望を見出した僕は酔いつぶれている父と寝込んでいる母に触れたとたん奇跡は起きた。


 父の苛立っていた表情はなくなり、母の表情まで良くなったのである。

 さらにどういうわけか父のケガは治り、母の体調も完全に回復していたのである。


 それからは父も母に謝り、仲も戻り今まで以上に気合をいれて狩りに行くようになったため、また平穏な生活を取り戻すことができた。母も元気を取り戻し、僕の手は魔法の手のようだと言ってくれた。



 間違いなくこれは女神様に与えられた力のおかげであると思い、女神様に感謝の祈りをした。

 するとなぜだか心の奥が暖かくなり、少し成長したような感じがした。

 どうやらこの世界はストレスという概念が無い世界のようだがストレス自体は存在しており、それを無くすことのできる特別な力を女神様は与えてくれたようだ。少し最初に思っていたものとは違ったが、うまく力を使うことができれば完全とまではいかなくともストレスを無くせるかもしれないと思い、これからの人生でストレスを無くせるようにしようとレスタは心に誓った。

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