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俺TUEEE勇者を成敗 ~俺にチートはないけれどもチート勇者に挑む~  作者: 田中凸丸
勇者の恐怖と民衆の希望の誕生
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8話:和平成立後のフェストニア

ここから、どんどん話が加速していきます。後数話で主人公がチート持ちに対して勝負を仕掛けます。

 最初、魔族の使者からその話を聞いた時、各大陸の首脳陣は耳を疑った。勇者を戦場に投入し、劣勢だった戦争を多少盛り返した所で、魔族から和平を申し出てきたのだ。

 勿論、最初は罠かもしれないと疑った。しかし魔族を収める六人の王からの実印が施された書簡と使者が護衛をつけずに、丸腰で敵地に赴いた事実から話を聞くことにはした。

 使者から話を聞くと魔族が和平を申し出た理由は、互いに疲弊しており、このままではどちらが勝っても復興は難しい。という理由だった。


 話を聞き終わった首脳陣は、当初怒りに震えていた。先に戦争を仕掛けたのは魔族なのだ。なのに少し盛り返されると和平を結ぼうとしたのだ。こちらを舐めているにも程がある。

 しかし頭を冷やして考えると実際互いに疲弊しており、また盛り返したといっても僅かな差である、また窮地に陥るかもしれない。首脳陣は三日三晩会議を続け和平を結ぶことを選んだ。


 和平に合わせて、勇者税を無くすという話もあった。しかし、又魔族が戦争を仕掛けてくる可能性もあるので、そのための蓄えとして引き続き勇者税は徴収するということになり、戦争が終わっても民衆の生活は苦しいままだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「一応、魔族との戦争から世界を救うっていう当初の目的は、これで達成できました。」


「そして今回お邪魔したのは、祐二さんの今後の生活について話すためです。」


 魔族との和平成立と勇者税の引き続きの徴収の一報から一週間、現在ニスアは祐二の部屋で祐二と二人きりで話している。


「今後の生活ってどういうことですか?家計は多少苦しいですけど、生活する上で問題はないっすよ」


「そういうことじゃなくて、地球に戻るかフェストニアで暮らし続けるかという話です」


 ニスアの言葉を聞き、ハッとする。そう元々彼はフェストニアに住んでいたのではなく、地球で暮らしていたのだ。

 ここ一年余りにも充実しており、自分が地球出身である事を忘れてしまっていた。


「えっと、やっぱり地球に強制送還とかされるんすか?」


「いえ、地球に帰るかフェストニアに残り続けるかは、転移者に選んでもらいます。」


 ニスアの返答に対し祐二はホッと胸をなで下ろす。何せここ一年間学校の勉強など碌にやっていないのだ。今の状態で帰っても留年間違いなしだ。

 しかし地球に未練がないと言えば嘘になる。地球には家族がいるし、好きな漫画の続きも読みたい。悩む祐二はニスアに質問をする。


「他のクラスメイト達は、もうどうするか決めてるんすか?」


「はい、先日私たち四神の間で話がありまして、祐二さんのクラスメイト42人のうち、36人がフェストニアに残るそうです。」


 恐らく地球に帰還する事を選んだメンバーは、地球に恋人がいるなどして、帰る理由がある者達だろう。残った者達は、地球に帰る理由がないか、逆にフェストニアで恋人ができて残る理由がある者達だろう。


 祐二は悩んでしまう。地球にも未練があるが、この異世界で出会った人達との繋いだ絆も大切なものだ。簡単に捨てられるようなものではない。


「と、とりあえず、保留でお願いします。」


「そういうと思いました。別に構わないですけど、一つ忠告しておきますよ。いつまでも悩んで保留にしておくと、どんどん地球には帰りづらくなりますからね。」


 ニスアの忠告に言葉を詰まらせてしまう。彼女の言う通り既に自分は地球では、一年以上行方不明の状態なのだ。このまま問題を先延ばしにすると帰りたくても帰れなくなってしまう。


「それでも、ここで出会った人達との思い出は俺にとっては大切なものなんです。地球への帰還と簡単に比べられるものじゃないです。」


「わかりました。それでは二週間後また来ますので、その時に返事を聞かせてください。」


 祐二の回答に理解を示し、二週間後まで待ってくれる事に安堵する。しかし同時に二週間後には答えを出さなくてはいけないのだ。


「ちっ、因みに祐二さんとしては、私との思い出も大切だったりするんでしょうか~。個人的には大切だと嬉しいんですけど。」


「もちろん、大切に決まってますよ!」


 祐二がフェストニアで生きていけたのは、集落の人達だけでなくニスアも自分を支えてくれたからである。そんな彼女との思い出を大切に思っていないわけがないのである。

 祐二から力強い声色で肯定されたニスアが顔を真っ赤にし床をゴロゴロと転がる。恥ずかしがるのは別に良いのだが、埃が立つので、できれば止めて欲しいと思う祐二であった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「今日の依頼は何があるかなっと?」


 ニスアと地球帰還について話し合ってから数日、祐二は観光都市エアフの狩人組合の建物内で銅級向けの依頼を探していた。

 あと二週間で答えを出さなくてはならないが、それまでの生活費も稼がなくてはいけない。そのため受付に張り出されてある依頼を見て祐二は、どの依頼を受けようか悩んでいた。もっともそれは問題から逃げているだけなのかもしれないが。


「やっぱ、レッドゴブリン退治かな?」


 報酬と安全を天秤にかけ、結局無難な所に落ち着く。祐二は、依頼書を受付に出そうとするが、その時、背後から声を掛けられる。


「よぉ、ユージ。久しぶりだな。弓の腕上がったか?」


「エミールさん!久しぶりっす。一か月ぶりくらいすか?」


「まぁ、そんなとこだな。つっても俺が、この町から離れてただけなんだが。」


 祐二に声をかけたのは、二十代後半で爽やかな笑みが特徴の青年で弓を襷掛けしている。彼はエミールという名前の狩人で銀級として活躍している。

 本来、銀級のエミールと銅級の祐二では接点などないはずなのだが、ここで狩人組合の規則が関わってくる。狩人組合ではスキルにかかわらず、皆最初は銅級から始まり最初の一か月は似たようなスキルを持つ鉄級の狩人と依頼をこなす。

 この規則は先人と一緒に行動し、知識を学び新人狩人の生存率を上げるという目的があるのだ。そして祐二の場合は、獲物が同じ弓で当時鉄級だったエミールが相手となり一か月、同じ依頼をこなした。


 一か月同じ依頼をこなしたら、もうそれ以上関わる必要はない。実際そういう狩人も多いのだが、エミールの場合、祐二と同じスキルを二つ持っている事、そして生来の面倒見の良さから何かと祐二を気にかけ声を掛けてくれている。

 ちなみに、エミールが所持しているスキルは、


 ・魔法適正(風)Lv5(レアスキル)

 ・狙撃Lv6(レアスキル)

 ・遠見Lv10(コモンスキル)

 ・挑発Lv10(コモンスキル)


 の四つでうち二つが祐二と被っている。


「エミールさん、ここ最近見なかったすけど、どこ行ってたんすか?」


「ああ、ランセ大陸に知人の狩人がいてな。そいつにある魔物を一緒に討伐してほしいって言われて、ランセ大陸に行ってたんだ。」


 ランセ大陸、フェストニアにある大陸の一つで、戦国時代のような世界だと以前ニスアが祐二に教えた大陸であり、グレーリア大陸とは異なる文化が存在する。

 よくみるとエミールの鎧も以前見たときと変わっており、恐らくランセ大陸独自の鎧を現地で購入したのだろう。


「ランセ大陸っすか、俺は言ったことないですけど、やっぱ見たことない魔物とかいるんすか?」


「山ほどいたぜ。名前は忘れたけど足が三本ある鳥型の魔物とかな。ってそんなことよりも、俺は今日お前に教えたいことがあって此処に来たんだよ。」


「俺に教えたいこと?狩りの穴場とかっすか?」


「違う違う、もっと実践的なこと。祐二お前、確か”挑発”と”音遮断”のスキルを持ってたよな」


 エミールの質問に祐二は肯定の意思を返す。何でもエミールが言うにはランセ大陸で活動していた際、複数のスキルを組み合わせ見たこともない技を使う狩人がいたらしい。

 そして、その狩人に詳しい仕組みを尋ねたところ、”挑発”と””音遮断”のスキルを組み合わせて編み出す技、という事が判明したのだ。

 技の仕組みを聞いたエミールは”ユージに早速教えなくては!”と仕事を早々と片付け、グレーリア大陸に戻ってきたのだ。


「そんな俺なんかの為に、すんませんエミールさん。」


「なーに、気にすんな。元々狩りも早めに片付いて暇だったしな。そんじゃユージ、早速教えるから耳の穴かっぽじって、よーく聞けよ。」


 祐二の謝罪を笑い飛ばすエミール、そして真面目な顔になり技の仕組みを教える。その内容は驚くべきものだった。まさか一番レア度が低いコモンスキルでそのようなことができるとは、創意工夫は大事だと祐二は考えているが流石にそこまで頭は回らなかった。


「と、とんでもない技っすね。」


「だろ。といっても攻撃には使えないし、どっちかと言うと逃走用の技だな。」


 エミールはそう言うが、とんでもない技だ。少なくとも狩人として活動する際の安全度は飛躍的に上がるだろう。


 その後、エミールと互いに近況報告をしているとカウンターで呟く男たちの声が聞こえてくる。


「ったく、何で戦争は終わったってのに、勇者税を徴収されなけりゃなんねーんだ。」


「そう言うなよ。魔族がまた侵攻をするかもしれねーんだ。勇者様には備えてもらわなきゃ困るだろ。」


「でも、毎月金貨三枚はおかしいだろ!物価の品も上がってるし、狩人の依頼額も減ってきてるし!」


 男達の話に思わず祐二は、顔を曇らせてしまう。勇者税の徴収により皆生活が苦しくなってきているのだ。商人は生活を豊かにするため商品を値上げし、狩人の依頼では依頼人の生活が苦しくわずかな依頼料しか払えない。

 彼らを救うために召喚された自分達が、彼らを苦しめていることに罪悪感を覚えてしまう。


「勇者・・か。本当にいざというときに動いてくれるのかね。」


「急にどうしたんすか、エミールさん?」


「ああ、ランセ大陸から此処に来る道中、王都に寄ってな。そこで勇者のあまり良くない噂を聞いたんだよ。」


 ”良くない噂”と聞き思わず、顔を青ざめてしまう。祐二のクラスメイトにそういった”良くない噂”を流される原因の人物達がいるからだ。地球に居たころでも、彼らのせいで学校の悪評が流れた事があるのだ。


 実際、エミールが聞いた噂は最悪なものだった。曰く”王都の高級レストランで無銭飲食を働く”、”その事を咎めた店長に暴力をふるう”、”賭け事や女遊びに日々、金を費やしている”、”凶悪な魔物が出て、討伐を依頼されても王城に引きこもっている”といった内容だ。極めつけは、”勇者が遊びに使っている金は、民衆から徴収した勇者税だ”という噂だ。


 もし、最後の噂が本当だったら祐二はブチ切れていただろう。自分達の生活が苦しくても、勇者に世界を救ってほしいという思いから皆、勇者税を納めていたのだ。そんな民衆の思いを裏切り、遊びに使うなど言語道断だ。だがあくまで噂、本当とは限らない。祐二は怒りを抑える。


 その後、エミールと別れレッドゴブリン退治の依頼を受けようと受付に向かおうとした所、建物の扉が乱暴に開かれる。入ってきたのは肩に鳥型の魔物を乗せている狩人だ。おそらく魔物を手なずける類のスキルを持っているのだろう。男は息切れをしており、走って狩人組合に来たことがわかる。

 突然の来訪者に建物内の全員が男に注目を集める中、男が大声で言葉を発する。


「この町にマグマ・レックスとその配下の魔物がやってくる!」






 

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