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4話:作戦会議1

「まずは徴収日当日のルートだが、、、」


 ギールや祐二、レイアや智花、ミラやニスアなど主要人物が揃った廃墟内にてギールが大きな地図を広げる。人員の確保に成功し、次は作戦を急いで立てなければならない。


「こちらは私の息がかかっている大臣に調べさせた所、今回は通常とは違うルートで運ぶそうです。」


 レイアが地図の道を指し示しながら、徴収日のルートを説明していく。


「まず今まででしたら、陸路を使って各国から勇者税を我が国に運んできました。また護衛として数人の上位スキルの持ち主を雇い、盗賊などにも対応しておりました。唯今回は先に護衛として勇者を各国に派遣し、その後我が国に運ぶようにするそうです。」


「王様としても今回の勇者税が盗まれたら、戦争を始める為の口実が無くなる事は分かってるんだな。」


 コクリとレイアが頷く。


「また勇者の数を考えて、各国から我が国に直接運ぶのではなく、勇者を派遣後、複数の国の勇者税を一部に纏めて勇者を護衛として運ぶと、勿論勇者税を纏める際の護衛には勇者が付きます。」


「偉く手間がかかってるな。つまり勇者税を盗むには勇者との直接対決は避けられないって事か。だとしたら、勇者が護衛に来る前に盗みたいけど。」


「無理だな。」


 祐二の考えをギールが即座に否定する。


「俺達が手伝うとしても全額を盗むには時間もないし、人員も集められない。こちら側も人員や物資を準備する時間を考えるとやはり徴収日当日に盗むしかないだろう。」


「だよなあ、となると問題はどうやって盗み出すか?できれば勇者や騎士団とは直接対峙せずに盗み出したい。けど対峙する可能性もある以上、最低限勇者から逃げられる人員を割り当てたいが、、、王女様誰がどの国の勇者税の護衛を任されるかってわかってるの?」


 武岡なら事情を話せば八百長をして盗ませてくれそうだが、他の勇者がそうとは限らない。特に御剣や如月は絶対に勇者税を死守するだろう。


「申し訳ありません、そこまでは。唯少なくとも帝国から運ばれてくる勇者税は帝国に移住している勇者美丘が護衛をしてくるでしょう。」


「美丘か。」


 地球に居た頃はクラス一チャラい事で有名だった美丘、そしてフェストニアのグレーリア大陸では最強の勇者として名が通っている。


「なあ、美丘が最強の勇者って言ってたけど、アイツはどんなスキルを持ってるんだ?」


 祐二が前から気になっていた質問をするとレイアやギールは途端に重い表情となるが、やがてギールが言いにくそうに話し出す。


「勇者ミオカのスキルだが、、、、、、奴の所持するスキルは唯一つ、、、”選ばれし者”というスキルだ。」


「選ばれし者・・・?」


 何だそれは?と思う祐二にギールが続けて説明していく。


「ユージ、お前は知らないだろうがグレーリア大陸に存在する国にはそれぞれ”神器”という国宝がある。」


「神器?」


「ああ、”神器”というのはスキルを持った武器の事で、嘗て神がこの地に降臨した際に産み落としたものと言われ、王族によって厳重に管理され、一般には公開されていない。」


 そうなのか?とニスアを見ると、祐二に耳元に『嘗て、神々が人類にスーパーレアやウルトラレアのスキルを授ける前に実験として武器にスキルを付与して作られた物です、その後は作られなかったみたいですけど。』と囁く。


「”神器”はスキルオーブがなくても手にすれば強大な力を発揮できる分、使用者には素養が求められた、具体的な選定の基準は分からないが、歴史上の使い手の記録を読み取る限り、頑強な肉体、鍛え抜かれた技、高潔な精神が必要だったとされる。」


 『悪人が使用して世界を滅ぼさないようにリミッターを付けたらしいです』とまたニスアが耳元で囁く、少々くすぐったいし、ミラからの視線が痛いので止めて欲しい。


「だが、勇者ミオカの持つスキル”選ばれし者”はそれを無視することが出来る。例え使うに値する素養がなくても”選ばれし者”のスキルがあれば問答無用で神器を使う事が出来てしまうんだ。そして魔族との戦争当時勇者ミオカはグレーリア大陸の各国が管理する六つの神器を全て使用し、魔族の軍勢を滅ぼしたとされる。」


「因みに、終戦後は神器は返却されたりとかは、、、」


「されたと思うか?」


 地球での美丘を知っている祐二は矢張りか、と思う。美丘が強大な力を手に入れてソレを返せと言われて素直に返す性格では無いことを祐二は知っている。むしろ逆に脅したのではないだろうか?死にたくなければ神器を俺に寄越せと。


「と、なると一番の問題は美丘の対策って事か、神器を封じるか、美丘に見つからずに盗むか、どっちも難しそうだな。」


「それなんだが、ユージ。勇者ミオカについては俺に一任してくれないか。」


 美丘にどう対抗しようかと考えているとギールが鋭い目つきで祐二を睨む。その瞳には美丘への恨みや殺意が籠っていた。


「俺なら接近戦に限れば勇者ミオカに対抗できるはずだ。俺が勇者を引き付けている間に勇者税を盗めば問題ない。」


「いや、まだ戦うって決まった訳じゃ。」


「だとしても、俺はミオカを倒さなければいけない!!」


「な、なんだよ急に?」


「いや、すまない。」


 大声を挙げたギールに周りの者達が驚くと、ギールは申し訳なさそうに視線を外す。


「ユージ殿、私からもお願いします。どうか勇者ミツルギの護衛する帝国からの勇者税についてはギールに一任してはいただけないですか?」


「王女様・・・」


 レイアも必死に懇願する。そう言えば以前の舞踏会でギールは美丘を睨んでいた。もしかしたら何かしらの因縁があるのかもしれない。


「・・・わかったよ。その代わり、ちゃんと勝てる作戦を立てるぞ。」


「ああ。」


 その後も夜通し、作戦を立てていくと同時にアルティやレイアに協力している貴族や王城に潜んでいる間者と連絡を取っていく。

 時間がない中で人員を集め作戦を立てていく。かなりの無茶をしているが休む暇はない。何せこれが失敗してしまえばまた戦争が起こってしまう。絶対に失敗は許されないのだ。



 

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