さらば友よ!!
「グリードさーーーん!!」
「あ、ユリさん!」
「すいません、予定より少し遅れちゃって、もしかして待たせてしまいましたか?」
「いえ、そんな自分も今来たばかりです。」
王都の中央広場にある噴水、待ち合わせなどによく利用されるその場所でテンプレ通りの会話をする王国の騎士団団長代理のグリードと彼と待ち合わせの約束をしていたらしい長い赤髪とスレンダーな体型が特徴の女性。
「そ、それでは、行きましょうか!!」
「はい!あっでもその前に。」
「?」
そして二人で出かけようとグリードがユリと呼ばれた女性をリードしようと先を歩くとユリという女性が、グリードの左腕を握ってきた。
「手を繋ぎませんか?せっかくのデートなんですから?」
「はっはいいいいいいい!!!」
首を傾げるという余りにも可愛らしい仕草に早くもノックアウト寸前のグリードだったが何とか耐えて、このデートの為に数週間前から予約を入れていた喫茶店へと彼女を案内する。
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「此処の喫茶店はパンケーキが絶品なんですよ!」
「そうなんですか?それでは私はベリーソースのパンケーキをグリードさんはアップルソースのパンケーキを頼んで半分こしませんか?」
「ぜ、是非喜んで!!」
初めての女性とのデートという事でテンションが上がり、口調がどもり気味のグリード。若干気持ち悪い彼を笑顔で見つめるユリ。
そんな二人を少し離れた席でサングラスをかけ、新聞を読むふりをしながら見守っている三人組の男女、見るからに怪しい者達だが余りにも怪しすぎて周りの客は見て見ぬ振りをしている。
「いや、俺達何やってんの?」
三人組の一人、”鬼面の男”にして”錦の御旗”である祐二は自分が今何をやってるのか分からなかった。
今日は休日、勘を鈍らせないために狩人組合で害獣駆除の依頼を受けようと思っていたのに、ギールとソニアが廃墟にいきなり現れ、彼を此処まで引っ張ってきたのだ。
「む、そうかまだ説明していなかったな。」
サングラスをかけ、口には玩具のパイプ(息を吐くと煙ではなくピロピロが出てくる縁日で買った玩具)を加えたソニアが説明をする。
何でもここ最近グリードの様子が変だったらしい、訓練中もぼーっとしていたり、鎧を前後逆に着たりなど、それで事情を伺うと花屋に勤めている看板娘に一目ぼれをしたらしく告白しようか悩んでいたそうだ。
その話をお節介一割、面白さ九割で聞いたソニアがその恋をサポートしてやろうと言い出し、ギールと祐二がそれに巻き込まれたという事である。
「っで、色々相談や手助けをして無事友人としてデートにまではこぎつけたんだが、当日になって奴が怖気づいてな。”二人だけだと心が折れそうになる。負けそうになる”とかいうのでな。私達が見守りながら助けてやろうという訳だ。」
「結構面倒くさいな、アイツ。」
「まあ、そう言うな。今のグリードはいわば私達の傀儡、私達で色々と面白可笑しくしてやろうじゃないか!なあにそれでフラれても問題はない、私達に助けを求めた時点でアイツは一生私に頭が上がらないのだからな!」
「そしてお前は最低だな。」
こんな王女が国を引き継いだら嫌だな、と考える祐二。なおギールは”こんな仕事、業務内容にないんすけど”とでも言いたげな表情で無言を貫いている。
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その後も二人のデートはソニアの手助けという名の妨害に何度もあったが、無事進んでいた。具体的には”デートの会計は男が支払うもの”と聞いて財布に所持金を多めに入れてきたはずなのにソニアによって、空の財布にすり替わってたり(支払いの直前で祐二が金の入った財布にすり替えた)。”デートでは女性の胸や尻を褒めろ”とアドバイスをされて危うくセクハラ発言をしそうになったり(ギールと祐二がグリードの頭めがけて煉瓦を投げ、気絶させて無理矢理口を塞いだ)。三人でチンピラに扮して絡んだり(普通にグリードは負けた)。二人のデートを見守っていたら、パトロール中の騎士に三人が職質されたりなどがあった。
そして夕焼けが眩しい、王都で一番見晴らしが良く街を一望できる高台に二人はいる、ここは王都に住んでいる者なら知らない者はいない告白の定番スポットだ。
「無事此処までたどり着いたな。」
「俺達がいなかったら最初から無事にたどり着いたんじゃないのか?」
「静かに!そろそろアイツが告白するぞ!」
二人を見るとグリードは真剣な顔でユリを見つめている。
「ユリさん!今日はとても楽しかったです!」
「はい、私もです。」
「私は今後も貴方とこんな楽しい時間を過ごしていきたいです!ユリさん!私と恋人になってください!!」
上半身を腰から90度に曲げて、指を伸ばした右手をユリに差し出すグリード。突然の告白にユリは困惑する、確かに今日は楽しかったが、あくまでも友人としてのデートで恋人としての関係を求められるとは思っていなかったのだろう。
「で、でも私は花屋のバイトで平民で、、、グリードさんは貴族で騎士団長じゃないですか?私なんて釣り合いませんよ。」
「そんな事関係ないです!私は貴方が好きなんです!」
「で、でも。」
「面白くなってきたな!!さあ、グリード、昨日教えた通り、ここで権力を振りかざすんだ!!」
「それやったら付き合えても、恨まれるんじゃ?」
完全にグリードを玩具にしているソニアに祐二が冷めた視線を向ける中、グリードは必死に告白を続ける。
「私は本気です!貴族の遊びなんかじゃない!貴方の為なら貴族の立場だって捨てたってかまわない!」
「で、でも、、、」
「ユリさん!!」
「だって私、胸毛の処理も髭の処理も甘い女なんですよ!!」
「「「「ん?」」」」
ユリの言った言葉の中に含まれていた単語の意味が理解できずに四人が固まる。今彼女は何と言った?胸毛?髭?
「だから夜のバイトの女装酒場でもまだ固定のお客さんがいなくて、、、、」
「ちょ、ちょっと待ってください!!!女装、酒場?」
更にユリの放った言葉にグリードは困惑する。女装酒場、単語の意味を考えればどんな酒場かは大体察しが付く、だが何故ユリがそこで働く?
「はい、あれ?知りませんでした?私、夜は女装酒場で働いているんです。ユリっていう名も源氏名で本名はゴンザレスって言います。」
「ゴ、ゴンザレス、、、」
「ごつい名前だな、、、」
次々と明らかになる真実、そう言えば胸が殆どないとか、肩幅が少し大きいとかも思ったことがあったが本人も気にしているだろうと考えてグリードは敢えて口にはしなかった。だが、まさかそんな理由があったとは。
「でも私嬉しいです。未だに女装が上手くできない私を好きって言ってくれるなんて、今はまだ無理ですけど、いずれ女装が完璧になったら返事をお聞かせします。」
そう言って固まっているグリードの頬にキスをし、高台を去っていくユリ、いやゴンザレス。高台に残ったグリードを三人が何とも言えない表情で見守っていると、ギギギと寂れた螺子を回すような動作で首を動かしたグリードと目が合う。
「・・・・・・」
「「「お幸せにな!!じゃあな!!!!!」」」
そして三人は全速力でその場から逃走した。
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