それぞれの未来
「その本をこっちの棚に、ああ、それはこっちじゃ、そっちじゃないわい。」
「あいよ。」
「ねえ、お婆さん。こっちの本は?」
少し大きめの部屋に所狭しと並べられた本棚と地面に積み上げられた本、それらを祐二とミラは家主である老婆の指示に従い、本棚へと並べていく。
今日は狩人組合の依頼で、占い師である老婆が大量に所蔵している本の天日干しと整理を行いに二人は来ていた。
最早狩人の仕事とは言えないが、これも仕方のない事。勇者税の煽りを受けて狩人組合に回される依頼の額が減り、多くの狩人が路頭に迷う事を危惧した組合が獣や魔物の討伐だけでなく、ちょっとした困り事なども依頼として受領するように規則を変更したのだ。
まあ、それでもやはり依頼の数は獣の討伐などが多いし、報酬の額も微々たる物だ。
「ほれほれ、きりきり働かんか!このままじゃ、夜まで掛かってしまうぞ、こりゃ!その本は丁重に扱え!」
「痛って!!」
本の背表紙で頭を叩かれる祐二をミラがクスクスと笑っている。
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「目録通りに本はあるし、並び順も問題なし、よし、これで依頼は完了じゃ!報酬は既に組合の方に払っとるから、この達成書を持っていけ。」
「どうもー」
「人の頭をバンバン叩きやがって、、、」
地球で言えば大体午後3時頃、漸く全ての本を片付け終わった二人は依頼完了書を老婆から受け取り、適当な挨拶をして、組合へ戻ろうとする。尚祐二は何度も本の背表紙で頭を叩かれた所為か、少しタンコブが出来ていた。
「ああ、お二人さん、ちょいと待ちな。」
だが、二人が老婆の家から少し離れた所で老婆が二人を呼び止める。何か依頼に不備があったのだろうか?
「どうかしたの、お婆さん?もしかして僕達何か失敗でもしちゃった?」
「違う違う、その逆じゃよ。お二人さんはよく働いてくれたからの。ちょいとオマケをしようと思ってな。」
「オマケ?」
「ちょっと待ってくれ、勝手に報酬額に色をつけたりするのは組合の規則に反するんだ。婆さんの気持ちだけ受け取っとくよ。」
達成した依頼の報酬額は事前に決まっており、追加報酬や報酬額が減る事は、それ相応の理由があるない限り認められない。そしてもしそれが発覚した場合、その狩人には厳重な罰が課せられる。
その事を伝え、老婆の言うオマケを受け取らないと言う祐二に対して、老婆は目の前で腕を振る。
「違う違う、別に金を渡そうと言う訳じゃないわい。ただ、二人の未来を無料で占ってやろうと言う話じゃ。」
「未来?」
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老婆の話を詳しく聞くと老婆はスキルとして"占術"というスキルを所持しており、普段はそのスキルを使い、人の運勢や将来を見る商売をしているらしい。
「こう見えても若い頃は、王家に仕えとった凄腕じゃったんじゃぞ。まあ先代国王や大臣の浮気を言い当てて、クビになったんじゃがな。いやー浮気を言い当てられた時の国王の顔やその後王妃様が大勢の配下の眼前で国王をボコボコにした時は面白かった。」
「アンタ、わざと大勢の前でバラしたろ?」
祐二のツッコミを無視して、水晶玉に向かい合う老婆。何でもスキルを発動するにはこういった触媒が必要らしい。
また、未来を覗くといっても、あくまでそれは確率として一番高い未来を覗くだけで、その後の本人の行動によって未来は変わるらしい。
実際に過去には、己が乞食になる未来を知った商人が、より一層努力し、商売に力を入れた結果、確率の低かった巨大な商会の支配人になるという未来を引き当てたらしい。その逆の例もあったそうだ。
そして何かが見えた老婆は祐二を指さし、彼の将来を予見する。
「アンタ、、、ヤリたい盛りなのはわかるけど、避妊はちゃんとしな。」
「どんな未来が見えた!!」
いきなり訳の分からないことを言われた祐二が、大声を挙げると老婆がクックックと笑いながら説明をする。
「アンタの一番可能性の高い未来を見たんだけどね。アンタ将来デキ婚で奥さん達の尻に敷かれているね。」
「マジかよ、、、というかもう少し別の未来を、、、」
具体的には”勇者税”の廃止が成功するのか?とかを聞きたいのだが、”鬼面の男”として正体を隠している以上、聞くわけにはいかない。
「んで次はそこの嬢ちゃんじゃな。」
「僕は別に、、、どうせ碌でもない未来でしょ?」
「これこれ、勝手に未来を決めつけるのはいかんぞ、儂が言うのも何じゃが、未来は本人の努力で変わる。良い未来を手に入れようと努力すれば可能性は高まるし、努力をしなければ望む未来は手に入らない。儂はその手助けを少々するだけじゃ、儂の言葉を聞いて努力するかは嬢ちゃん次第じゃぞ。」
再び水晶玉を除く老婆、もし彼女から最悪な未来を告げられたらどうしよう、という不安にミラは駆られているが未来を観終わった老婆は笑顔でミラを指さす。
「安心しな、アンタには幸せな未来が待っとるよ。敢えて一つアドバイスするなら、避妊はせずに押して押して押しまくる事じゃな♪」
「へっ?」
「嬢ちゃんの一番可能性の高い未来では、旦那とはデキ婚で尻には敷いとるが、子供達と旦那で幸せな家庭を築いとるよ。頑張るんじゃな。」
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「何というか、、、」
「反応に困る未来だったね、、、」
組合から依頼達成の報酬を受け取り、帰路に着く二人。祐二は自分が将来責任を取る覚悟もなく、女性とそう言う関係になってしまう可能性に不安を覚えるが、ミラの方は言葉とは裏腹に笑顔である。自分にも幸せな家庭を築ける可能性がある事に喜びを隠せないのだ。
何度も老婆から言われた自分の未来を頭の中で繰り返し妄想するミラだったが、途中で老婆が祐二に言った未来で一つ不可解な点がある事に気付く。
「奥さん、、、、、、、達?」
達とはどういう意味だ?奥さんならまだしも、奥さん達だと意味が多少変になる。奥さん以外の人にも尻に敷かれるという事か?例えば子供や親戚とかにも、それかもしくは、
「奥さんが複数いる?」
いや、まさかそんな訳がないと思いながらも、ミラは自分より数歩先を歩いている祐二の背中を複雑そうな顔で眺めていた。
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