2話:スキルの正体
突如現れたニスアとアシュリー、取り敢えず騒がしくなったので一旦場所をミラの家へと移すことになった。喫茶店の支払いは祐二が払う事で武岡との友情を何とかつないだが中々痛い出費だ。
そして現在、ミラの家の応接間にてニスアとアシュリー、祐二とミラが隣に座り合い対面している。メイドのクレアは客人である二人にお茶を入れている。
「粗茶でございます。」
「あ、ありがとうございます。」
よくある小説では、大抵この場合修羅場のようになるのだが家に来るまでの間にある程度の関係を話し合っていたので空気が重くなることは無かった。
元々、祐二が一人で勇者に戦いを挑むことを心配していたニスアは、祐二を支え共に戦ってくれるミラに好感を抱いており、ミラは以前祐二から二人の事を話に聞いていたので特に警戒もしていない。
「でけ~。」
そしてミラは今、ひたすらアシュリーの規格外の胸の大きさに驚愕していた。自分も自慢できる大きさの胸だと自負していたが、あれは反則だ。しかも下着を付けていないのか、付けていてそうなのか、少し息をするだけで揺れている。アシュリーと一年間程一緒に暮らしていて全く手を出さなかった祐二の自制心の強さは相当の物だろう。
まあ唯のヘタレと言う可能性もあるが。
「それでニスアさんとアシュリーさんはどうして王都に?何か俺を探しているみたいでしたけど。」
「あ、そうなんです実は祐二さんにお伝えしなければいけない重要な話があるんです。それで王都まで来たんです。」
「アタシはその付き添いかな。」
「それで、できればその二人だけで話したいんですが。」
ニスアがミラやアシュリーを見ながら、そう呟く。ニスアがわざわざ二人だけで話したいという、という事はそれは祐二とニスアしか知らない事、彼が勇者達と同じ転移してきた者という事に関係しているのだろう。
「分かりました。それじゃミラとクレア。悪いけどアシュリーさんと一緒に席を外してくれるか?」
「うん、わかった。」
「かしこまりました。」
「ミラ?クレア?」
ニスアの考えを察し、三人に退席を促すのだがニスアは何故か祐二が言ったとある一言に反応し不機嫌になってしまう。
「ん?どうしたんすかニスアさん?」
「・・・・・・・」
祐二が呼び掛けても無視をするニスア、何となく彼女が不機嫌になっている理由を察したミラが祐二にある事を耳打ちする。その内容はニスアが不機嫌になった理由と機嫌を直すための方法だったのだが、祐二としては本当にそんな単純な事で彼女の機嫌が直るのか不安になってしまう。
それでもやるしかない。
「えーっと、ニスア?」
「はい!何でしょう!」
祐二がニスアを呼ぶ捨てにした瞬間、さっきまで不機嫌だったのに一瞬で満面の笑みになるニスア。どうやらミラの言うとおり、彼女達を呼び捨てにしてニスアをさん付けで呼んでいたことに嫉妬していたらしい。
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「で、話って何ですか?ニスア。」
「はい、先ずはこれを見てください。」
二人だけになった応接間で、ニスアが小さな黒板のような物を取り出す。その黒板には日本語で様々な情報が記してあった。
「これは祐二さんが所持しているスキルの一覧ですけど、此処を見てください。」
「ん、何だこのスキル。俺こんなスキルを持った覚えはないですよ。それに何か文字化けしてるし。」
ニスアが指を刺した一つのスキル、それは祐二にとって習得した覚えのないスキルであると同時にレベルやレア度が文字化けしている奇妙なスキルだった。
・装填Lv●☆×▽(◎♪2◇◆スキ▲〇ル):銃に次弾のリロードをする際、素早く行える。その速度はレベルに比例する。
「はい、実はこのスキルの存在が私が祐二さんと話し合わなくてはいけない理由なんです。祐二さん、貴方は別の世界の人間なのにスキルを作ってしまったんです。」
「スキルを作る?」
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「そもそもスキルなんですが、祐二さんに一つ質問です。全てのスキルは最初からこの世界に存在したと思いますか?」
「え?違うんですか?」
祐二がスキルを作るなという謎の現象を引き起こしたことを説明した後、ニスアはそれのどこに問題があるのか説明していく。
「ええ、違います。例えば”剣術”というスキルが存在しますけど、剣が存在しなかった時代にこのようなスキルがあると思いますか?剣が作られなければ剣術なんて存在しないのに。」
「あっ!」
「フェストニアは最初から文明があった世界ではありません。祐二さん達がいた地球と同じように一歩ずつ進化して、文明を発展させていったんです。」
確かにニスアの言う通りだ。剣が存在しなければ剣術なんて生まれないし、祐二が持っている”大道芸”のスキルもその概念が無ければ存在しないはずだ。
つまりスキルは、最初からあったのではなく後から生まれてきた物という事になる。だがそうなると疑問が沸いてくる。
「じゃあ、スキルはどうやって作られたんですか?そもそもスキルって何なんですか?」
「スキルは簡単に言えば、”受け継がれていく記憶”です。」
「”受け継がれていく記憶”?」
「はい、先人達が生み出した技術、偉業、記憶。それらを確実に後世に託すために”スキル”と言う形で受け継がせる。それがこの世界で適用される”スキル”というルールの正体です。スキルオーブも同じように記憶が固形化された物なんです。」
受け継がれる記憶、スキルの正体を知り唖然とする祐二。それはつまり彼が今も使用しているスキルは過去の先人たちの記憶や技術を引き継いでいるという事になる。
「ん?じゃあ、”必中”や”超回復”とかいうスキルもそうなんですか?あれも元はそれを使える人がいたって事ですか?」
「いえ、それは違います。説明が足りなくてすいません。正確にはスキルの内コモンスキルや、アンコモンスキル、レアスキルが先人たちの記憶として引き継がれるんです。昔はそれでよかったそうですけど、魔族や魔獣が現れてからはそれだけでは人間や獣人、亜人は生き残る事が出来ないと主神が判断して、それらを超越する力として神の権能を使用してスーパーレアやウルトラレアのスキルを作ったそうです。」
「はあ、」
「それでここからが本題です。」
改めて黒板のスキルを指さすニスア、文字化けしてるスキルを見て思わず緊張してしまう。
「祐二さん。貴方は集落から旅立つ際に拳銃を作ってもらい持っていきましたよね?」
「はい。」
「でもその時は火薬が無くて意味を成さなかった。でも王都に来てから火薬を手に入れて銃が使えるようになった?」
無言で頷く祐二、そんな彼の表情を見てニスアも表情を暗くする。
「本来フェストニアに銃は存在していませんでした。ですが祐二さんが銃を作り、使用したことでそれらの経験、記憶が装填というスキルとなって祐二さんに宿ったんです。」
「俺にスキルが増えた理由は分かりました。でも、それに何処か問題があるんですか?」
ニスアの話を聞く限りだと、偶々銃を作った結果新しいスキルを作ってしまった。という話だけで特に問題があるようには見られないのだが、ニスアの表情を見る限り何か問題があるようだ。
「はい、もし祐二さんがフェストニアの人間であったのなら問題はありませんでした。でも祐二さん、貴方はフェストニアの人間ではない。」
「異世界から人間を転移させる際にあるルールがあるんです。それは”転移先のルールに干渉させてはならない”。フェストニアの場合ですと”スキルを作る事”ですね。実は転移した祐二さんのクラスメイトにウルトラレアのスキルを授けたのもこれが理由の一つなんです。世界を救ってほしいのも本音ですが、下手にスキルを与えなかった結果、彼らがルールに干渉して新たなスキルを作ることを防ぐためでもあったんです。」
「じゃあ、新しいスキルを作った俺は。」
「はい、この世界のルールに干渉してしまった事になります。」
ニスアの言葉に祐二はショックを受ける。今まで世話になってきた人達に迷惑を掛けないようにと考えていた癖に結局迷惑を掛けている自分が情けなくなってしまう。
「そうなると俺はどうなるんですか?」
「それなんですが、祐二さんが選べる選択は二つあります。」
息を大きく吸い込むニスア。きっとこれから言う言葉は彼女にとっても辛いことなのだろう。
「一つは地球に戻ってもらい、二度とフェストニアに来ない事、もう一つはフェストニアの人間として一生をこの世界で過ごす事です。」
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