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彼が強欲になった理由

 私はグリード、セイン王国に仕える貴族の一つマクシマム家の長男である。突然だが私には尊敬する人物が一人いる。

 それは曾祖父だ。彼がいなければきっとマクシマム家は貴族には慣れなかっただろう。元々私の一族は平民の一族で、曾祖父は王国の騎士団に所属している一人の騎士でしかなかった。運命が変わったのは曾祖父が二十代後半になった頃、とある村が魔物に襲われるという事件が発生し多くの騎士が命を落とす中、曾祖父は果敢に戦い魔物を討伐した。

 その功績を当時の国王に認められ末端の貴族としての地位を与えられ、曾祖父も国王や領民の期待に応えた結果我が一族はセイン王国でも地位の高い貴族となった。


「グリード、お前は曾祖父様のスキルを受け継いでいる。お前ならきっと曾祖父様よりもさらに素晴らしい功績をあげることが出来る。」


 幼い頃の私に父は何度もそう言い聞かせ、曾祖父の武勇伝を聞かせていた。また父も戦闘系のスキルは所持していなかったが、税の横領などを許さぬ正義感で領民からは慕われており、幼い私の目標は父と曾祖父だった。


 そして私は騎士団に所属し努力を重ねることで二十歳になるころには騎士団統括の補佐をする副団長の地位にまで上り詰めていた。だが、この程度では曾祖父には及ばない、より一層自らを鍛え上げ父や曾祖父、領民の誇りとなる人間に成らなければいけない。


 そんなある日とある噂を耳にした。何でも第一、第二王女が“勇者税”の廃止に動き出しており、勇者の代わりに民衆の希望になる”錦の御旗”なる人物を探している事を。


「これだ!これなら父や曾祖父にも顔向けができるぞ!」


 すぐさま私は王女達に自分を売り込んだが王女達は首を縦に振らず、代わりに勇者から”勇者税”を奪った人物を”錦の御旗”に推薦すると言った。


 何を考えているのだあの方たちは!それはつまり強盗を民衆の希望にするという事だぞ!話を聞く限り盗んだ金は元の民衆に返却したらしいが、全額返却したかは怪しい。もしかしたら何割かは横領しているかもしれない。

 しかも、第二王女が直々に顔合わせを行うという。とてもではないが自分達の国の王女にそんな危険な事はさせられない!私が直接会ってソイツの人となりを確かめてやる。


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 王女達が見出したというユージとかいう男だが、まあ悪い人間ではないだろう。だが、あの程度では勇者達にはとても勝てん!今日も王女の近衛騎士であるギールに扱かれていたが、午前の特訓の時点で既に倒れているではないか!全く情けない!やはり私の方が”錦の御旗”に相応しい!


 ん?私も足が震えているだと?ハハハッ馬鹿めこれは武者震いで、、、、オロロロロロ。


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 ユージだが、まあ少しは認めてやってもいいかもしれない。今日は勇者を交えての他国との舞踏会があったのだが、その際勇者の一人であるカイドーが女性に言い寄るという事件が起こった。私達も止めたかったのだが、表向き貴族と言う勇者に従う立場故何もできなかった。しかしあの男は勇者の水をかけ啖呵を切ったのだ。

 我々が動けない中、恐ろしい力を持つ勇者に立ち向かうあの勇気、確かに王女様たちがあの男を”錦の御旗”にした気持ちも理解できる。しかし、私とて民の幸せを願う貴族の一人、決して私が”錦の御旗”になる事を諦めたわけではない!


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 騎士団長が行方不明になった。今は私が騎士団長の代理を務めているがやはり今の私では経験や知識が足りない。早く騎士団長を見つけ出して仕事に戻ってもらわなければ、


「それで、お前達は本当に騎士団長を見ていないんだな?」


「ええ、行方不明になった日から全く見かけておりません。」


 部下はそう言うが、やはり何処か怪しい。こいつ等何か知っているのではないか?しかし下手に突っつくと私も何かの事件に巻き込まれてしまうかもしれない。やはり極秘に調べるしかないか。


「そうか、済まない時間を取らせたな。それでは、」


「ええ、お疲れ様です。グリード副団長、、、ジュルリッ」


 !!!、今何か尻の辺りに悪寒が走ったぞ!


 

次回からは二章で出番が無かったヒロインの話になります

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