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俺TUEEE勇者を成敗 ~俺にチートはないけれどもチート勇者に挑む~  作者: 田中凸丸
なりあがりたい勇者と奴隷の少女
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15話:王城潜入(その1)

今回は話の展開を考えて分割式にしました。少々短いかもしれませんがご了承ください

「結構、この体勢キツイな。」


「我慢しろ、それよりそろそろ正門だ。決して声を出すなよ。」


 ”勇者税”徴収の日、祐二が”錦の御旗”として活動する日、彼は現在ギールが御者をしている”勇者税”を納めるために大量の金貨が入った袋を乗せた馬車に忍び込んでいる。

 忍び込んでいるとはいっても馬車の荷車に隠れているわけではない。正門では門番が待ち構えており、馬車の中身や御者の身分の確認などが行われておるため、荷車に隠れているとすぐにバレてしまうのだ。

 そのため祐二は馬車の下、車輪の軸などがある箇所に手足を引っ掛け隠れている。門番が確認するのはあくまで金貨と御者の身分のみ、そこさえクリアできれば王城に入るのは楽勝であった。


 無事検問をクリアし、馬車は一旦”勇者税”が入った袋を降ろすため王城の中にある宝物庫の近くの部屋に移動することとなった。その部屋は丁度馬車一台が入れるスペースで中で何人もの使用人たちが馬車から金貨が入った袋を降ろしている。

 積み荷も降ろし終えると、中にいた人間達は中身の金貨を数える為、部屋から出ていく。遂に誰もいなくなったことを確認して祐二は馬車の下から這い出ていく。


「取り敢えず潜入は成功だな。」


「ああ、そして俺がサポートできるのは此処までだ。直接助けることは出来んからな。油断するなよ。」


 出てきた祐二に再度、宝物庫から脱出までのルートをギールは説明する。もし此処で祐二が見つかり捕まってしまっても彼らは祐二たちを助けることが出来ない。だからこそ、絶対に作戦を失敗させないよう何度も何度もルートの説明をする。


「いいか、宝物庫から盗むのは金貨数百枚の袋を一つか二つだ。それ以上だと重すぎてまともに動けないからな。そして逃げる方角は南側だからな、絶対に勇者がいる北側には逃げるな。そして南側の城壁の外には逃走用の馬を用意しておくからそれで逃げろ。いいな。」


 ギールの言葉に頷く祐二、作戦開始だ。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 丸一日掛けて、王城に所属する文官が徴収された”勇者税”を数え終えた後、彼らは徴収された”勇者税”を荷車に乗せて宝物庫へ向かっていた。宝物庫の警備は厳重で常に門番が構えており、また宝物庫の扉は、外からカギを掛けることはできても内側からはカギを開けられない仕様となっている。故にこっそり宝物庫に忍び込んだとしてもカギを掛けてしまえば、コソ泥はそのままお縄に頂戴されてしまうのである。


 何十万枚ともある金貨を数え終わった文官たちは、疲れ切った表情で宝物庫に金貨が入った袋を投げ入れていく。本当ならもっと丁寧に扱うべきなのだが疲れた彼らにそれを求めるのも酷と言う者だろう。

 その後、宝物庫にカギを掛け門番に適当な挨拶をした後、文官たちは自室へと帰っていき残っているのは屈強な門番二人だけとなった。


「しかしあれだな、目の前に大金があるっていうのに触れないのは地獄だぜ。」


「おいおい、間違っても金に手は出すなよ。シャレになんないからな。」


 静まった夜、誰も通りがからない宝物庫の前で門番二人が暇を持て余すように雑談をしていると、夜食を持ってきた使用人がやってくる。


「お勤めご苦労様です。本日の夜食となります。」


「おお、ご苦労さん。ん?アンタ見ない顔だな。新人か?」


「はい、本日より配属となりました。ユーマと申します。」


「そうかそうか、色々と分からないことがあるだろうが、そん時は俺達に聞いてくれ、ちょっと待ってろ。直ぐ食べ終わるから。」


 夜食を急いで食べる門番達、このとき彼らは連日の業務で疲れ切っていたので気づいていなかった。”()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 門番が夜食を食べ終わると使用人の男は、皿を配膳台に乗せて廊下の角へ消える。そして数分後、使用人が再度、宝物庫の前へ行くと門番二人は深い眠りに就いていた。


「良い人達ぽかったけど、すいません。一服盛らせていただきました。」


 使用人の変装を解き、鬼面を付けた祐二が彼らに謝る。毎日この時間に彼らが夜食を取っているという事はギールから聞いており、宝物庫に忍び込むためには、どうしても彼らを無力化する必要があるため夜食に睡眠薬を盛り、眠らせたのだ。

 因みに本当の夜食を運んでくる使用人は、王城のトイレで睡眠薬を嗅がせて眠らせた上で縄で縛って放置している。


 門番二人が寝ていることを確認すると、宝物庫の扉の解錠を行う。祐二は籠手からピンセットのような物を取り出し。それを鍵穴に差し込みガチャガチャと弄っていく。スキル”大道芸”の一つ”鍵開け”により、今の祐二であれば30秒程あれば並大抵のカギは開けられるようになっていた。


 やがて”カチャン”と音がして、宝物庫の扉が開く。大きな音を立てないよう”音遮断”を発動させながら宝物庫に入ると、驚きの光景が広がっていた。

 宝物庫の中は少し大きな教室位の広さで、その中にこれでもかと言うほど金貨が入った袋が押し込まれている。壮絶な光景に一瞬思考を放棄していた祐二だったが、のんびりしている暇はない。急いで近くにある金貨が入っている袋を二つほど、腰のベルトの金具に引っ掛けると宝物庫を後にする。その際門番の一人が懐に隠し持っていた度数の高い酒も頂戴する。この度数の高い酒があれば”ある事”が可能だと祐二は考えていた。


 それから、急いで頭に叩き込んだ逃走ルートに従って南側へ逃げる。勿論他の兵士に見つからないよう”音遮断”と”聴覚強化”を発動することも忘れない。足音を消し、他の兵士が近づいていないことを確認しながら出口へと向かっていった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 ギールやソニアから聞いていたおかげで、どの時間帯にどの区画を兵士が巡回しているかを熟知している祐二は易々と警備の目を掻い潜りながら進んでいくが、何事も思い通りにいかないのが世の中の常と言う物だ。


 祐二が壁に潜み、巡回中の兵士達から隠れていると後ろの方から誰かが走ってくる音がする。驚きながらも”聴覚強化”で確認すると、どうやら巡回の交代の時間に寝坊してしまった兵士らしく、その為走ってるようだ。


「クソ、どうする。このままじゃ見つかるぞ。」


 急いで解決案を考えるが兵士達は刻刻と近づいてきている。このままでは祐二の存在がバレて、そのまま捕まってしまうだろう。


「やるしかないか。」


 この作戦の為に様々な人達に協力してもらった。彼らは皆自分の立場が危機に立たされるかもしれないのに、それを覚悟して祐二を信じてくれたのだ。ならば自分はその期待を裏切るわけにはいかない。

 祐二は籠手に内蔵されているクロスボウの安全装置を外すと走りながら兵士の前に出る。


「っ!何者だ貴様!」


「敢えて言うなら、指名手配犯だ!」


 祐二の存在に驚きながらも剣を抜いて切りかかろうとする兵士の一人、だが先に狙いを付けていた祐二の方が速く、クロスボウの矢を兵士に当てて矢じりに仕込まれた痺れ薬により兵士が倒れる。

 他の兵士も剣や弓を構えて祐二に攻撃を仕掛けようとするが、その剣筋はギールの物と比べるとお粗末で祐二にとってはハエが止まって見えるくらい遅さだ。そんな剣が当たるはずもなく祐二は軽々と避けると兵士の首にラリアットを喰らわせ地面に伏せる。

 一方の弓を構えた兵士は、祐二が兵士二人を倒して視線を自分から外した瞬間に矢を放つが、”聴覚強化”及びギールとの特訓により、暗闇でも音だけで戦えるレベルにまでなった祐二は例え真後ろから放たれた攻撃でも避けることが出来るのだ。

 祐二は首を少し捻りながら体を回転させ矢を避け、振り向きざまにクロスボウから矢を放ち兵士を沈黙させる。


 残りの兵士は自分が敵わないことを悟り、逃げようとするが祐二が一人も逃すはずがない。籠手から抜き出した痺れ毒入りの投げナイフを投擲し、膝に喰らった兵士は崩れ落ちる。だがその瞬間兵士が最後の力を振り絞り、懐から出した笛を鳴らす。この笛は城に侵入者が現れた時にそれを知らせるための笛で、静かな夜である事も相まって、城内によく響いた。


「クソッたれ、他の兵士や勇者が来る前に逃げなきゃな。」


 倒れている兵士から、弓と矢を数本奪うと急いで逃走用のルートに向って祐二は走る。彼の背中には多くの人の希望が背負われているのだ。絶対に捕まるわけにはいかない。


 

 


 


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