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俺TUEEE勇者を成敗 ~俺にチートはないけれどもチート勇者に挑む~  作者: 田中凸丸
勇者の恐怖と民衆の希望の誕生
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3話:ショボいスキルで異世界転移

 土下座、それは日本で最上級の礼とされ深い謝罪や感謝の意を示すものである。これを行うということは、その者は深く己の罪を反省しているか若しくは感謝してもしきれないということだ。

 そして、その土下座を現在、異世界を管理する四人の神の内の一人ニスアが行っているのである。それはもう一片の隙もない見事な土下座である。


「ちょっ、ちょっと頭上げてくださいよ。なんで急に土下座なんてするんすか?別に俺貴方に怒ってもいないですし、酷いこともされてないですよ?」


 スキルを祐二が閲覧した途端、急に土下座を行ったニスア。祐二としては土下座された理由がわからないし、女性を土下座させるというのは傍から見ると凄いゲス男に見えてしまうのだ。”こんなところ誰かに見られたら、俺の人生終わる”など誰も来るはずがないのにそんなことを考えてしまう。

 それだけ女性(しかも凄い美人)に土下座させるというのは、男にとってキツイことなのだ。


「じ、実は私祐二さんにとても重大なことを隠していたんです。それが凄い申し訳なくて。」


「隠している事?それって異世界転移に関係することですか?」


 祐二の質問に対し首を縦に振るニスアに”まさかっ!いきなり敵地に召喚されるとか!”と考えうる限り最悪な状況を考えてしまう祐二。ニスアに続きを促す。


「はいっ、それでは白状しますね。すーはーすーはー」


 涙目になりながらも覚悟を決めるニスア、深呼吸をし息を整える。


「わっ!私が祐二さんに隠していたこと、それはッ!じっ、実は私フェストニアを管理する神の中で一番立場が弱く碌な権利もないポンコツ女神なんです~~!」


 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「えっと、つまり貴方は他の三人の神と比べて若くて経験も実績もないから、他の神からレア度が高いスキルを転移者に与える権限を与えられていないと。」


 さっきから涙と鼻水を垂れ流し、涙声でニスアは説明を続ける。なんとか内容を理解した祐二を見てニスアは話を続ける。


「はい、ほかの神は”経験も実績もない小娘に高い権限を与えても世界に混乱を招くだけだ!”といって私に碌な権限をくれなかったんです。」


「ちなみに、神様の年齢はいくつなんですか?」


「今年で15歳です。」


「まさかの同い年!」


 こういった異世界物の神様って普通、百年や千年単位で生きているものだが、まさかの同い年という回答には、流石の祐二も動揺を隠せなくなる。

 それと同時に納得もする。先ほどからフェストニアの歴史などに詳しくない印象があったが、15年ほどしか生きていないなら知らないことも多いだろう。


「そっ、それで実際今ある権限はどのようなものなんですか?」


「えっと、今ある権限は転移者を一人だけ連れてこれる権限とコモンスキルを与えられる権限だけです。」

「ちなみに、他の三人の神には、好きなだけ転移者を呼べて、複数のウルトラレアのスキルを転移者に授ける権限があります。」


 ニスアと他の神との差に愕然とする祐二。もはや怒りや悲しみを超えてニスアに対して憐れみすら抱いてしまう。


「まぁ、権限がない以上仕方ないですよ。それでこの三つのスキルは具体的にはどういう能力なんですか。」


 与えられないならば、仕方ない!前向きに取り組もう!祐二はニスアにスキルの説明を求める。

 ある意味それはやけっぱちになっているだけかもしれないが、今この場にそれを突っ込む人間はいない。


「はいっ!それでは説明させていただきます!」


 祐二からの催促にニスアは嬉しそうに返事をする。恐らく彼女は自分の正体を明かしたときに失望されるか激怒されるか、そう考えており祐二の優しい言葉に感激しているのだろう。まぁ実際は、憐れみなのだが。


「”音遮断(おとしゃだん)”は、自分の足音や声を聞こえなくするスキルで、レベルを上げていくと自分の心音も消すことができます。”遠見(えんけん)”は遠くの物を見ることができるスキルで鍛えていくと10kmも離れた米粒も見ることができます。”聴覚強化(ちょうかくきょうか)”は名前の通り聴覚を強化するスキルで、これはレベルを上げていくと遠くのものが落ちる音が聞こえたり、筋肉の動く音が聞こえたりできます。」


 ニスアからスキルの詳細を聞いた祐二は思案する。説明を聞いた限りだと地球に住む人間にとっては、中々凄いスキルと思うのだがフェストニアに住む人間にとってはこれが一番ショボいスキル。価値観の違いだろうか?それとも上位スキルは更に凄い能力なのだろうか?


「ちなみに、似たようなスキルでウルトラレアになると、どんなスキルがあるんすか?聞いた限りだとさっきの三つも中々強力だと思うんすけど?」


「似たようなウルトラレアのスキルですと、音だけでなく気配や自分の姿すら隠せてしまう”完全迷彩(かんぜんめいさい)”のスキル、ありとあらゆるものを見通し過去や未来すらも見れてしまう”千里眼(せんりがん)”、五感全てが常人の域を超えている”超感覚(ちょうかんかんく)”のスキルがあります。」


 ”やっぱり、ショボい”ウルトラレアのスキルにそのようなものがあるなら、自分が貰えるスキルは確かにショボい。祐二はウルトラレアのスキルが貰えるクラスメイトに羨ましいと思ってしまう。


 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「えっと、それで考えたんすけど、このスキルだけで世界を救えっていうのは無理があると思うんすよ。」


「でっ、ですよね~。」


 改めて、自分に与えられるスキルのショボさから、”自分が勇者になるのは無理!”と決める祐二。一度決めてしまった以上、彼の考えを変えさせるのは困難だろう。といってもニスアもショボいスキルしか授けられないくせに無理やり転移させ戦わせる。なんて考えていないのだが。


「私自身も、祐二さんに無理やり戦わせようという気はありません。ただ元の地球に戻すには時間がかかってしまいます。それで考えたんですけど、フェストニアに住んでみませんか?」


「フェストニアに?」


「はい、グレーリア大陸東の山間部に私を信仰している集落があります。魔族との戦争地帯からも離れていて、農業も盛んで食糧にも困りません。人や作物を襲う動物や魔物も出てきますが、強い人も住んでいますし祐二さんのスキルでも追い払うことができます。」


「なるほど、それなら安全に暮らせ、魔物?」


 今のセリフの中に先ほどの授業では出てこなかった単語があり、思わず反応してしまう。


「すいません!先ほどの授業で説明をしていませんでしたね。」


 そんな祐二の反応を見て、”しまった”という顔をするニスアは慌てて説明を行う。


「魔物とは、スキルや魔法を使うことができる通常の動物とは異なる生物です。フェストニアにも作物や人に危害を加える熊や猪が出てきますが、魔物はそういった動物も捕食し、しかもスキルが使えるので脅威は段違いです。ちなみに大きい魔物は大味だったのであまりお勧めはできません。」


「喰えんの!、つーか喰ったのッ!」


 最後にとんでもない台詞を吐いたニスアに驚愕する祐二、確かに猟師は狩った獲物を食べると聞くが魔物を食べるというのは、ゲームや小説でもあまり聞かない。


「でも、いきなり俺みたいな訳の分からない人間が住みたいっていって、集落の人は受け入れてくれるんすか?」


 自信なさげな声でニスアに問題点を上げる祐二、確かにいきなり身元が分からない人が住むと言われてもそう簡単には受け入れてもらえないだろう。


「大丈夫です。集落の人達には私から説得します。」


「神様が説得?」


 そんな祐二の不安を吹き飛ばすようにニスアは答える。自分の勝手のせいで祐二に迷惑をかけてしまう、それだけはどうしても許せないのだ。


「実は、私の持つ権限の中に見分を広げるためフェストニアに肉体をもって降臨する権限があるんです。使えるのは週一で”豊作(ほうさく)”というスキルが使えます。何度か集落の人達と交流もしましたし、不作の時にはスキルを使って助けたこともあります。」


「それに、祐二さんのスキルはどれも狩猟に向いてますので、畑を荒らす動物や魔物を追い払えば集落の人からも受け入れられると思います。基本的に気のいい人達ばかりなのであまり心配する必要はないですよ。」


 ニスアの説明で先の不安が晴れていく、世話になる集落の人達の為に自分なりに役に立とうと誓い、異世界転移する覚悟を決める。


 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「それで、授けてもらうスキルなんですけど、三つの内幾つまでもらえるんすか?」


「あっ、スキルは全て差し上げます。」


 転移する覚悟を決めた祐二、貰えるスキルの中からどれを貰おうか迷っていた中ニスアから意外な返答が返ってくる。


「え、全部貰っていいんすか?」


「はい、私のせいで祐二さんには迷惑を掛けちゃいましたし、可能な限りサポートしたいので私が授けられるスキルは全部差し上げます。それに他の神もきっと転移者に沢山、ウルトラレアのスキルを授けてるでしょうし。」


 転移の魔法陣を描きながら答えるニスア、彼女としては本当なら最低でもレアクラスのスキルを授けたいのだが、それが無理な以上今の自分にできるサポートを最大限する。

 そんなニスアの姿勢に対し、”確かに権限はショボいけど、自分はこの人に選ばれてよかった”と祐二は考える。誰かに真摯に思ってもらえる。それはとてもうれしいことなのだ。


 転移の魔法陣を書き終わり、「それでは、いよいよ転移しますね。」といい、祐二の背中に手をまわし抱き着くニスア。彼女の豊満な胸が自分の胸板に押しつぶされ、甘い体臭が鼻腔を痺れさせる。


「私も一緒に転移しますので、転移先で逸れないよう祐二さんもしっかり私を抱きしめてください。ん?祐二さん何か股間の辺りが、」


「さあ!早く転移しましょうッ!!」


 疑問を顔に浮かべるニスアに対し、転移を促す祐二。早く転移してもらわないといろいろと困る。祐二も力強くニスアを抱きしめる。


「やっ、やだ祐二さん。そんな情熱的に抱きしめて、神と人との恋はいけないんですよ。寿命の差もありますし、でっ、でも禁断の恋だからこそ燃え上がるっていうのは有りだと私は思います。ちなみに神と人との間でも子供はできます!幸せな家庭を築きましょう!」


「そんなことはいいから!、早く転移をお願いします!」


 急かす祐二に対して、「そんなことって」とか「まさか、私は愛人枠ですか!」など呟くニスア、だが転移の準備は出来ているので早く転移をしてほしいという祐二の気持ちもわかる。モヤモヤしたものを抱えながら転移を行う。二人の体を光が包み、やがて体が粒子となり消えていく。

 二人がいた場所には、もう転移の魔法陣しか残っていない。転移が成功し今、二人の体はフェストニアに向っているのだ。この先祐二の身に何が起こるか、それ神すらも知らないことなのだ。



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