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俺TUEEE勇者を成敗 ~俺にチートはないけれどもチート勇者に挑む~  作者: 田中凸丸
なりあがりたい勇者と奴隷の少女
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9話:狩人の鉄則

 勇者税廃止に賛同した者達との顔合わせから数日が過ぎ、祐二の周りでは色々なことが変わっていた。まず今まで祐二が狩人として活動する際に使っていたクロスボウなのだが、興味を持ったドワーフの王族の手によって魔改造が施されとんでもない代物と化してしまった。

 矢の装填はカートリッジ式、次弾の装填をする際はポンプアクションで行い。大型化し連射性は下がってしまったが、威力は易々と石造りの壁を貫通するレベルになってしまった。しかもドワーフはこれでもまだ満足しておらず、祐二が冗談で言った3点バースト機能を付けるつもりらしい。

 また鬼面の男として活動する際に使っている籠手と一体型のクロスボウも改良してもらい、こちらは威力は抑えて、連射性や装填できる矢の種類を重視した改良を行ってもらった。


 祐二を気に入ったエミからは、お近づきの印としてレアスキルのスキルオーブを譲ってもらった。但し、いくら貴族といえど戦闘系のスキルオーブは管理が厳しいらしく貰ったスキルは”大道芸”という旅芸人が使うスキルだったが、何かの役に立つだろうとありがたく受け取った。


 そして一番に変わったのはグリードとの関係だった。今までの彼は特訓の旅に祐二に突っかかり、自分の功績を自慢していたのだが顔合わせを行って以降、そういった事が無くなったのだ。

 ギールに聞いてみたところ、”舞踏会の一件でお前を認めたのだろう”という事らしい。今ではお互いに特訓中は弱音を吐かずに真面目に取り組んでいる。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 午後の特訓、本来であればギールを相手にした特訓を行うのだが今日は少し異なり()()()()の試験を行うことになった。


 祐二がその武器を構え、数メートル先にある的に狙いを定める。いきなり的の真ん中に当たるとは思わないが、かと言って外すわけにもいかない。呼吸を整え引き金を引く。


 ドパァァン!!


 間延びした音が草原に響き、的の端が少し削れる。弓であれば真ん中を射抜く自信があったのだが、この武器では照準がブレてしまうらしい。まだまだ改良の余地有りだ。


「ふうむ、その大きさでこの威力、中々の物だが精度に問題があるな。それに音も響く。」


「それは仕方ないさ。元々この武器は狙い撃つことよりも携帯性と威力を重視した武器だから。」


 問題点を挙げるギールに祐二は答える。彼が今手に持っているのは、作ったは良い物の肝心の火薬が無く籠の肥やしになっていたフリントロック式の拳銃だ。

 ギールのスパルタ特訓が始まってから一週間と数日、漸く王族御用達の錬金術師から火薬を譲ってもらうことが出来、今日試験をしてみたという事だ。

 だが、肝心の結果は先程の通り、威力は十分だが数メートル離れた的にすら当てられないし、単発式なので連射も出来ない。問題点は山積みで、改良の為にはドワーフの王族や王都の鍛冶師などの協力が必要だろう。それでも強力な武器には変わりはないので装備するに越したことはない。


 それからいつも通り、ギールを相手にした特訓を行い、夜まで勉強をして終わりとなった。そして明日の特訓だが、王女が他国へ使者として出向くのでギールは護衛として、第二王女はその間の国の守備として、グリードは行方不明となっている騎士団長の捜索の為、全員特訓に参加できないという事になり、休みとなった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「で、どの依頼受ける?ユージ」

 

 特訓が休みとなった当日、祐二とミラは狩人組合にて依頼を受けていた。休みの日なのだから王都を観光しても良かったのだが、軍資金を貯める必要があるのと勇者達の情報が集められるかもしれないと狩人組合で依頼を受けることにした。といっても勇者税の影響で依頼達成額は通常よりも四割程減った額になっており、皆割の良い依頼を必死になって探している。

 そんな中、一際大きな声で受付に食いついている女性狩人が居た。長く伸びた艶やかな金髪、鎧に隠れているが、鎧の形から見事なスタイルを保持していることがわかる。


「頼む!何とか黄金級の依頼を!せめて銀級の依頼を斡旋してくれないか!」


「ですから、何度も申し上げておりますが、狩人は自分のランクより上の依頼を受けることはできません。貴方は鉄級ですので黄金級や銀級の依頼を受けることはできません。黄金級や銀級の狩人の付き添いと言う形でしたら依頼を受けることはできますが、貴方はソロでしょう。」


「ぐ、しかし、しかし。」


 しつこく女性狩人が、受付に依頼の斡旋をしていると、四人組の男性狩人が声を掛ける。どうやら彼らは銀級と黄金級の混成パーティーらしく、現在荷物持ちを募集しているらしい。そして依頼達成の報酬を等分するという条件でなら雇っても構わないという内容だった。

 彼らの誘いに女性の狩人は喜びを隠さずに雇ってもらう事にした。依頼の内容は西の森林地帯にある魔物の討伐。彼らは準備をするとすぐに建物を後にした。


「ねぇ、ユージ、今の人、、」


「言うな。俺も分かってるから。」


 ミラの言葉に祐二も額を抑えながら考える。狩人の中にはとある鉄則があり、それを知らない狩人は一瞬で悪質な狩人のカモとなる。祐二も狩人になった初日にエミールに教えてもらわなければカモになっていただろう。そして恐らく先ほどの女性はその鉄則を知らなかったのだろう。このままでは彼女の身にとんでもないことが起こってしまう。


 祐二は少し悩んだ後に今日は依頼を受けるのは止めて、女性を助けることを決意した。ミラも賛同し祐二の後に付いていく。


「ユージってさ、お人よしだけど損する性格だよね。」


「知ってるよ。じゃなきゃ勇者相手に喧嘩売ったりしないよ。」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 黄金級と銀級のパーティと組んで魔物討伐を終えてから数十分、女性狩人はメンバー達と昼食と取っていた。


「本当に皆様のような親切な方達と出会えてよかったです!」


「いやいや、こちらも荷物持ちが欲しかったから助かったよ。」


 女性の狩人は嘗て貴族に仕えていたのだろうか、何処か高貴な印象を与える作法で食事をとっており、親切な狩人に出会えたことを感謝しながら食事を続けていく。

 元から人が好い性格だったのだろう。女性狩人は彼らが自分が困っているから助けてくれたと考えており、彼らが何か邪な事を企んでいるとは欠片も思っていない。そんな思い込みがあるせいで、男性狩人達が先程から彼女の胸元や足元をいやらしく見つめていることに気づいていない。


「それでは、魔物も討伐しましたし、今日はこれを運んで終わりですね。」


「いやいや、まだ君がやる仕事は残っているよ。」


「え?」


 自分に与えられた仕事は、荷物持ちのはずだ。そして魔物を討伐した以上この魔物の死骸を運べば自分の仕事は終わりのはずだ。訳の分からないことを言い出した狩人に自分が他にやるべき仕事を聞こうとするが、突如体が痺れて動かなくなり地面に倒れてしまう。

 そして男達は、そんな自分をにやにやしながら見つめてくる。


「漸く痺れ薬が回ったか。ったく睡眠薬の方が回りが早くて楽なのによ。」


「そう言うなって、寝てて意識が無い女を犯すより、意識はあるのに体が動かない女を犯す方が興奮するぜ!反抗的な目で睨んでくるくせに体は正直に反応しちまうんだからよ!」


 この時彼女は理解した。彼らは最初から自分を荷物持ちとして雇うつもりなど毛頭なく、ただ間抜けな女性狩人を騙して犯すつもりだったと、よく考えればこんな都合のいい話などあるわけがないのにホイホイと騙されてしまった自分が情けなくなる。


 男達は高ランクの狩人の立場を利用する犯罪者だった。金に困っている女性狩人に声を掛け人のいない場所に連れていき、痺れ薬で体の自由を奪い犯す。その後は金品をはぎ取り魔物がいる場所に置き去りにするか喉を潰して娼館に売り飛ばしていた。無論被害を訴える者もいたが高ランクの狩人である彼らは一部の職員に賄賂を渡し、罪をもみ消していた。


 男達がゆっくりと女性狩人の鎧を剥がす。鎧が脱げるたびに自分の純潔が汚される事実を突きつけられて涙が出てくる。男達はその反応が面白いのか更にゆっくりと服を脱がしていく。


 遂に肌着だけになり男達が盛り上がる。そして胸元の肌着をはぎ取ろうと男が手を挙げた途端何処からか弓音が聞こえ、男の肩を貫通する。


「ぎゃあああ!」


 男が激痛に苦しんでいると更に数本男達に向って矢が飛んでくる。一本は別の男の足に当たったが残りは避けられてしまった。


「くそ、何処からだ!?出てきやがれ!」


 男達が叫ぶが、矢が放たれた方向からは誰も出てこない。男達が警戒していると女性狩人が居た方向から物音がする。慌ててそちらを向くと仮面で顔を隠した女性が居た。女は腰にナイフを刺しているが手には何も持っていない。男達は警戒しながらも女に近づく。


「さっきの矢はテメーの仲間が放った矢か?その隙にその女狩人を助けようとしたか?へへっ残念だったな。テメーを人質にして仲間を引きずり出してやる。」


「まさか、そんなつもりはないよ。僕はおじさん達を懲らしめに来たんだ。」


 男達の一人が仮面の女、ミラに触れようとした瞬間、男の手が切り裂かれ宙を舞う。斬られた男は呆然としているがミラは止まらない。ミラはいつの間にかナイフをホルスターから抜いており、一瞬で別の男に近づき同じように手を切り裂く。


 これがミラが所持しているスキルの一つ”奇襲”の能力だった。このスキルは一瞬で動作に移れるという内容のスキルだ。例えば少し離れた位置にいる相手を腰に差しているナイフで切りかかろうとする場合、ナイフを抜き、構え、相手に向って移動し切りかかるといった手順を踏まなくてはいけない。

 だが、”奇襲”のスキルを所持していれば、この手順を限りなく短くすることが出来る。もたつくこともなく自分が出せる最高の速度で攻撃することが出来、相手から見たら瞬間移動しているようにも見えるのだ。


 男達がミラを倒そうと数人がかりで襲い掛かってくるが、正面から来る男はミラにより手を切り飛ばされ、背後から切りかかろうとする男はどこからか飛んでくる矢に貫かれ、矢じりに塗ってある男達が使っていた痺れ薬よりも強力な痺れ薬で地面に寝転がる。


 数分後、男達は完全に沈黙し、仮面を付けた男と女に女性狩人は解放されこの場を離れた。男達には強力な痺れ薬を浴びせたので、丸一日動けないだろう。このまま夜になれば魔物に襲われるだけだが自業自得と言うものだ。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「先程は助けていただき誠にありがとうございます。」


 女性狩人が自分を助けてくれた男女に感謝する。だが、仮面を付けた男の方は、ため息を吐くと女性狩人に拳骨を喰らわした。


「いだ!いっいきなり何をする!」


「喧しい!お前は狩人の鉄則を知らないのか!」


「てっ鉄則?」


「”複数人のパーティがランクの低い狩人一人に声を掛けたら気を付けろ”だ!」


 狩人の中の鉄則の一つ、”複数人のパーティがランクの低い狩人一人に声を掛けたら気を付けろ”これは過去に高ランクの狩人のパーティーが新人のランクの低い狩人を甘い言葉で騙し、魔物の囮に使ったり、女性狩人を複数人で強姦したことから広まった鉄則だ。狩人組合でも対策はしているのだが上手くいってないのが現状だ。因みに”複数人のパーティに声を掛ける狩人に気を付けろ”という鉄則もある。これは敢えて下衆な目的の集団に声を掛けて返り討ちにする高レアスキル持ちの狩人が存在したため広まった言葉だ。


 そんな狩人の鉄則を知らない女性狩人に祐二は怒っているのだが、女性狩人は涙目で祐二を睨み反論する。


「た、確かに鉄則を知らなかった私に責任がある。だが私には急いで高ランクの依頼をこなし金を貯めなければならないのだ!」


「だからって、こんなあからさまな誘いに引っかかって、何のために?」


「急いで金を貯めなければ、お嬢様が勇者に奴隷として買われてしまうのだ!」


「勇者?その話詳しく聞かせてくれ。」


 

いつも感想ありがとうございます!これからも精進していきますので今後ともよろしくお願いいたします!


また、誤字報告などもとても助かっております。

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