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俺TUEEE勇者を成敗 ~俺にチートはないけれどもチート勇者に挑む~  作者: 田中凸丸
なりあがりたい勇者と奴隷の少女
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3話:王都到着そして逃げる(その3)

 騎士団に追われていた祐二達の目の前に現れた女騎士、彼女は祐二に勝負を挑み、勝敗に関係なく祐二を見逃すよう騎士団に命令すると言った。

 王都に慣れておらず、逃げ道も碌に知らない祐二にとって、その提案は信用は出来ないが手放したくないものでもあった。


 女騎士と出会った場所から少し離れた裏通りの広場、幸い今ここには誰もおらず関係のない人々を巻き込む心配はない。祐二と女騎士は此処で戦う事にした。現在二人は10メートル程離れた場所で向かい合っている。互いの武器のリーチを考えた結果だ。

 女騎士の装備は、全身の鎧に大剣を構えた近接向きの装備だが、一方の祐二は鎧は着ておらず(そもそも持っていない)武器は弓と折り畳みナイフのみで近接戦は圧倒的に不利の為、10メートル程離れて戦う事になった。


「さて、それでは改めてルールの説明だが、、、、」


「どちらかが相手に一撃を与える。若しくは互いの武器を弾いて戦えない状態にする。負けをの認めるかのどれかだろう。」


 祐二が確認すると女騎士も頷く。このルール、一見遠距離から攻撃できる祐二が有利に見えるが、先程の女騎士の突撃を見るに距離の差はそれほど問題にはならないだろう。

 祐二は、先程の突撃の威力から女騎士はレアスキル以上のスキルを所持していると考えている。であるならばコモンスキルしかもっていない自分が圧倒的に不利だ。もしこの勝負の内容が正面からではなく、不意打ちで且つ装備がそろっていれば多少は勝ち目があるのだが、無い物ねだりをしてもしょうがない。

 祐二は諦めて、今の装備で最大限戦う事にした。


 勝負の合図はミラが銅貨を弾いて、それが地面に落ちた時だ。恐らく女騎士は、始まると同時に距離を詰めてくるだろう。祐二が勝負を決めるとしたら、その時の一瞬しかないだろう。

 

 互いに武器を構え、緊張が走る。二人が準備を終えた事を確認したミラが、銅貨を指で空高くに弾く。空高く弾かれた銅貨は、やがて地面に向って落ちていき地面に触れ甲高い音を鳴らす。


 その瞬間二人が動き出す。祐二が女騎士に向って矢を放つと同時に、女騎士も祐二に向って突撃をしてくる。祐二が放った矢は女騎士の頭に向って飛んでいくが、突撃の衝撃で弾き飛ばされてしまう。それと同時に女騎士が祐二の目の前に現れ、剣を振り下ろす。


 振り下ろされた剣は、地面を砕き土埃を揚げる。普通の人間であれば直撃して、生身であれば真っ二つになるか若しくは全身が複雑骨折するかだろう。だが、女騎士が剣を振り下ろした先には祐二はおらず、彼が身に纏っていた服の一部があるだけだった。


「?どこに消え、、!」


 女騎士が疑問を感じるが直ぐにその場から離れる。そして女騎士が先程までいた場所に、一本の矢が突き刺さる。女騎士が矢が放たれた方向を向くとそこには、袖の一部が破かれている祐二が弓を構えている。

 女騎士が突撃をすると同時に、変わり身を使い攻撃を避けていたのだ。そんな祐二の見たこともない技を見て女騎士は興奮するが、祐二は焦っていた。正面からでは敵わないと祐二は考えており、先程の一撃で勝負を決めるつもりだったからだ。しかし、攻撃は避けられてしまい失敗に終わってしまった。


 最初の突撃は、銅貨が落ちると同時に仕掛けてくるとわかっていたので、変わり身のタイミングを掴むのにそれほど苦労はしなかった。だが次に女騎士が突撃をしてきた場合、タイミングを掴むのは難しいだろう。


 祐二は自分が最大のチャンスを逃したことに後悔するが、相手は待ってくれない。祐二は急いで指の間に挟んでいる他の矢を放つ。相手の攻撃を避けられないなら、攻撃をする暇を与えない。幸いあの突撃は構えないと使えないらしく、女騎士は剣で矢を弾くのに必死で突撃はしてこない。


 指に挟んでいた矢を撃ち尽くし、祐二が次の矢を矢筒から抜いていると女騎士がその隙を見逃さないとばかりに突撃を仕掛ける。祐二もそのタイミングで突撃を使うと予測していたので、変わり身を使って避ける。


 だが、祐二の考えは失敗だった。祐二は突撃を仕掛けてきた女騎士がそのまま祐二の居た場所を攻撃すると考えていたが、女騎士は一歩手前の場所で止まると先程の場所から数歩動いていた祐二を捕らえる。


「そこか。」


「っ!」


 祐二を捕らえた女騎士が先程の大ぶりな太刀筋とは別の繊細な太刀筋に切り替えて、攻撃を繰り出す。恐らく突撃では攻撃を避けられてしまうと考え、超近距離戦に切り替えたのだろう。連続して繰り出してくる太刀筋に祐二は避ける事しかできなくなる。


 以前、祐二はウルトラレアスキルの”極上剣術”を持つ御剣と戦ったが、あの時は不意打ち且つ御剣は酔っぱらっていたので、攻撃を避けるのに苦労はしなかった。だが女騎士が繰り出す太刀筋は油断など一切なく、確実に相手を倒すために無駄のない太刀筋で反撃する暇などはない。


 このままでは祐二が負けてしまうと、ミラは心配してしまう。女騎士の正体を知っている彼女は、女騎士が血気盛んで祐二と戦いたいが為にこの場所に来ていたことも知っている。流石に殺しはしないだろうが、それでも大怪我を追わせてしまうのではないかと心配になってしまう。


「どうした?避けてばかりでは勝てんぞ!!」


「だったら、少しは手加減してくれないか!?」


「そんな無礼な真似、できるわけがないだろう!」


 女騎士が挑発をして、祐二がそれに答えるが相変わらず避けるのに必死である。今彼が持っている近接戦の武器は折り畳みナイフだけであり、こんな武器で大剣のリーチに入るなど自殺行為である。何とかして逆転の策を考える祐二だが、その間にも攻撃は続いていく。

 やがて、祐二が壁際まで追い込まれかけてしまう。このままだと祐二が剣で切られてしまうとミラは最悪の想像をし、口元を抑える。


「ふぅ、勇者を倒した男と聞いたが、やはり不意打ちでなければ無理か、志は問題が無いから鍛えればあるいは、、」


 女騎士が期待外れのような、或いは今後に期待をするような発言をすると同時に剣を振りかぶる。壁際に追い込まれた祐二には、もう逃げる道はなく攻撃を受けるしかなかった。受けるしか道は残されていないはずだった。


 女騎士が剣を振りかぶると同時に、祐二は女騎士に近づく。正面から攻撃を受けるような動きに女騎士は驚くが、祐二は止まらない。このままでは男を殺してしまうと女騎士は太刀筋を変えようとするが、もう間に合わない。剣は祐二の頭に向って振り下ろされる。


 その瞬間祐二は、腰に装着していた矢筒を自分の目の前に出す。矢筒は振り下ろされた剣の衝撃を受けて粉々に砕け散るが、同時に剣の勢いを多少殺し、祐二に攻撃が当たるタイミングをずらす。


 タイミングがずれた瞬間、祐二はさらに踏み込み剣を避け、女騎士の顔の近くまで近づく。そして自分が手に持っている弓を相手の顔に引っ掛け、パチンコの要領で引っ張り、手を放し相手の目に弓をぶつける。幸い仮面を被っていたおかげで目が潰れるような事には成らなかったが、それでも激痛だったらしい。女騎士は剣を放し、両目を抑える。


「目が、目がー!」


「お前はム〇カか。」


 両目を抑える騎士を尻目に先ほど砕かれた矢筒から、適当な矢を持ち女騎士の首筋に添える。先程までの女騎士が有利な状況から一転、今度は祐二に有利な状況になった。


「俺の勝ちだな。」


「うう、目を狙うとは卑怯な。」


「生憎、俺はコモンスキルしか持ってなくてね。卑怯な手でも使わせてもらうさ。」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 その後、痛みが引いた女騎士は負けを認め、騎士団が祐二達を追ってこれないように約束を取り付けると宣言してくれた。


「で、騎士団が追ってこれないようにするのは感謝だが、アンタは一体何者だ?何でそんな権限がある?」


「それよりも目潰しをした事を謝ってほしいのだが、、」


「うるさい、こっちは殺されかけたんだぞ。」


 女騎士が先程の祐二の行為に謝罪を求めるが、祐二はそんな事よりも女騎士の翔太が気になる。突如現れ、勝負を挑み、それに応じれば騎士団を止めることが出来るという。明らかに一般人ではないだろう。


「ユージ、それなんだけど。僕の方から説明をしたいんだ。僕の正体も含めて」


「ミラ、、」

 

 ミラの発言に祐二は驚く。先程までミラは自分の正体を明かそうとはしなかったのだ。恐らく先程自分が女騎士の正体を知っている事を言ってしまい、もう隠すことはできないと判断したのだろう。

 ミラが恐る恐る口を開こうとするが、その時ガシャガシャと大きな足音が祐二達に近づいてくる。何事かと音のした方を向くと、そこには祐二達を取り押さえようとした騎士団のリーダー格の男がいた。


「グリード!何故此処に?騎士団は動くなと言っていただろう。」


「無論、その命令は知っています。ですが貴方様がその男に接触すると聞いて居ても立っても居られず参りました次第です。」


 どうやら、リーダー格の男も女騎士の正体を知っているらしいが指示を無視して此処まで来たらしい。騎士団の男は剣を抜くと切っ先を祐二に向ける。


「貴様のような怪しい男、見過ごすわけにはいかん。成敗!」


「よせ、やめろグリード!彼は怪しい者ではない。ミラからもそう聞いている!」


「そんなもの所詮演技です。それにあんな娼婦くずれの女が言う事など信用できますか!」


 祐二に切りかかろうとする騎士団の男に女騎士が待ったを掛けるが、グリードと呼ばれた男は止まる気配がない。同時に祐二もミラを侮辱するような言葉に怒りを覚え、碌に武器もないのに戦おうと身構える。


 一触即発の状況の中、突如祐二とグリードの間に炎の壁ができ、二人の戦いを物理的に阻む。そしてまたもや路地裏から新たな男が現れる。男は鎧を着ておらず、ローブのようなものを纏っているが腰に差した剣と雰囲気から只者ではないと感じさせる。


「やめろ、グリード。」


「ギール、貴様、平民の成り上がりの癖に私に指図するのか!」


「姫様はやめろと言ったんだぞグリード。それでも姫様の言葉無視するなら、私が相手になってやろうか?」


 ギールと呼ばれた男がそう言うと、グリードは引き下がる。どうやらギールと言う男はかなりの強者らしい。


「って、待て。今姫様って。」


「ああ、名乗るのが遅れたな。」


 女騎士は仮面を取ると、祐二に前で礼をし名を名乗る。


「私は、ソニア・セインガルド。セイン王国の第二王女だ。貴殿と出会うのを楽しみにしていたぞ。鬼面の男。」



感想、ご意見どんどん募集してます。

別作品も投稿していますので興味を持って読んでいただけると幸いです。


「魔法を使えない僕の職業が実は魔法使いをボコボコにする仕事なのはおかしい話ではない」

https://ncode.syosetu.com/n9129fy/


こちらは一話2000字から3000字ほどの気軽に読める作品となっております。あともの凄い厨二です。

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