プロローグ
その世界は、助けを求めていた。今まで見たこともない種族が現れ戦争を起こしたのだ。このままでは元々暮らしていた種族が滅んでしまう。
神様たちは困っていた。自分たちが手を出すのは神々のルールに反してしまう。どうすればよいのだろう。
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数多く存在する世界、その中の一つフェストニアを管理する神は4人いる。そして現在彼らは自分たちが管理する世界に危機が迫っており、その解決策を考えていた。
自分たちが直接手を下せれば良いのだがそれは駄目だ。過去同じようなことをした神がおり暴走した結果、その世界は滅んでしまったのだ。それ以降神が直接手を下すのは禁止されており見つかってしまった場合思い罰が下される。
私や他の神が悩んでいる中、自称知性派のトラルが進まない会議に業を煮やしたのか、イラついたように案を出す。
「他の世界の人間を転移させてチート与えりゃ、解決すんじゃね。適当な奴呼んで煽てりゃノリノリで世界救ってくれっるしょ。」
トラルがさも名案のように言うが、直ぐに慎重派のシェンが反論する。
「まてトラル、確かに転移者にチートを与えるのはよく使われる方法だが、転移者がチートの力に酔いしれて暴走するケースも多々ある。リスクが高すぎる」
シェンの反論に対して、トラルが不貞腐れる。この男、自分の意見に文句を言われるとすぐに拗ねるのだ。
会議が少し気まずい雰囲気になりかけたところで、出世に目がないジゲンがトラルに助け舟を出す。神々の間でも上下関係があり上位の神にになると最悪、その日の気分で他の神が管理する世界を滅ぼすことも可能で、ジゲンはそのような立場に憧れているのだ。
「ですが、シェンさ~ん時間がなくトラルさんの意見しかまともな案がないのも事実でしょ~。神の権威でやれることと言ったら、豊作にしたり資源を増やしたりで間接的なことばっかじゃないですか〜。」
「これじゃいつまでたっても解決しませんよ~。むしろ転移者にチートを与えて早々に世界を救ってもらえば、主神様に功績を認められて一気に出世できちゃいますかもしれませんよ~。私としては、トラルさんに賛成ですよ~。」
味方が増えたことで上機嫌になるトラル。そしてシェンに対して追い打ちをかける。
「これで2対1だな。シェン。どーよこれでもまだ異世界転移には反対かよ。」
トラルの言葉に対して、シェンが苦い表情になる。
私も会議に参加しているので本来4人のはずだが、彼らはどうやら私を人数として数えていないようだ。
「ッ!分かった私も異世界転移には賛成だ。但し、条件を三つ付けてもらう!」
「あッ!条件?」
「そうだ。一つ目は人数だ。多すぎたら世界を救った後、彼らが世界を滅ぼすかもしれん。逆に少なすぎたら世界を救う前に数で圧倒され死んでしまうかもしれない。二つ目は、転移させる人物の出身地だ。できるだけ異世界転移に理解のある人間を転移させたい。三つめは転移させる場所だ。まだ弱いうちに一か所に集めて召喚し攻め込まれたら、それで終わりだ。できるだけ分散させたい。」
シェンが出した意見に、トラルとジゲンも賛成し、細かい条件が決まっていく。
・召喚する人数は40人前後
・出身地は異世界転移物のメディアが多い日本
・召喚する場所はそれぞれの担当する大陸の首都
「よしっ!これで大体決まったな。んじゃ、早速転移者にチートスキル与えて世界救うか~」
「この世界のルールに当てはめると、我々が与えられるのはウルトラレアのスキルか」
「いや~、私にもチャンスが巡ってきましたね~。このチャンスを逃す手はありませんよ~」
3人がいそいそと転移の準備を進めるため自分の部屋に戻る中、私は一人つぶやいた。
「私、ウルトラレアどころかレアスキルを授ける権利すらないんですけど」
そう、私女神ニスアは、世界フェストニアを管理する四神の中で、碌な権限を与えられていない最下級の神なのだ。こんな自分に召喚される日本人を思い浮かべて申し訳ない気持ちでいっぱいになってしまう。
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日本のある高校、そこの一年生として通う学生、大和祐二は、昼休みののんびりとした時間に幸せを感じていた。
天気の良い日差し、昼食を食べ満腹になり、重くなる瞼。クラスの至る場所でクラスメイトが様々な話題に会話を弾ませている。
御剣達自称不良グループは昨日どんなワルさをしたか、田中達オタクグループは今季のアニメについて話している。太田達女子グループは、内容はわからないが恐らくファッションに関係したことだろう。
クラス内はとても騒がしいのだが、そんなことお構いなしに眠りにつこうとする大和。途中地面から何やら光る魔法陣のようなものも出てきて、クラスメイトが騒ぎ出すが、それでも眠りにつこうとする。
大人しい性格だが自分で決めたことは、絶対に実行する男、それが大和祐二なのである。例え昼寝であろうと実行することを決め、彼は深い眠りについた。
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「あれ、昼の授業は?まだ始まってないの。ってか、ここどこ」
いつもならとっくにチャイムがなり、歴史の先生に教科書で頭を叩かれ起きているはずなのだが、それがない。というより教室で寝ていたはずなのに教室ですらない場所に今自分はいる。
「すいませ~ん。どなたかいませんかー」
大声で人を呼ぶが反応はない。どうしたものか困っていると、柱の陰から人が現れる。
「あの、すいません。ここってどこですか?俺、確か教室で寝ていたはずなんですけど」
祐二が声をかけたのは、銀髪の髪をした同年代の少女だ。10人中10人が美人と認めるような容姿で体型にもメリハリがある。クラスで一番のチャラ男と呼ばれる美丘がここにいたら、真っ先に声をかけるだろうな。と祐二は考えた。
「えっえ~と、私はニスアと申します。あなたをここに呼んだのは、私なのですけれど~。ど、どこから話せばよいのか困りますね」
ニスアは、困った表情でどこから事情を説明しようか悩み口を閉ざしてしまう。そんな彼女に対し祐二は、疑問をぶつける。
「えっあなたがここに俺を運んできたんですか?何のために?できれば学校に戻りたいんですけど。俺、歴史の先生に目付けられてて、流石にサボりはまずいかなって、後ほかのクラスメイト達もここにきているんですか」
祐二の質問に対しニスアは苦しい表情になる。だが覚悟を決めたのか表情をキリっとした表情に変えると祐二に向って言う。
「あッ!あなたはこの度!!、異世界を救うものとして勇者に選ばれました!おめでとうございます!!」
ついに言ってやったぞ。という表情のニスアに対し、祐二の返答は一つ。
「は?」
今回、初めて小説を投稿した。田中凸丸です。感想、ご意見どんどん募集しています。