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74. サルベージ -3-

光の識別者についてです。

すみません。説明になっています。

男性4人の会議?です。

 レイシル様のサルベージを聞いた。


「王子様のお迎えですか。まあ、随分と()()()()()()()をしたものですね」


 エーリックが溜息交じりに言った。そして何を考えていたのかと、呆れた表情でレイシルを見た。


「面目無い。それに、彼女の憂いを取る事が出来そうだと伝えたんだ。でも、それがお気に召さなかったようで、潜り込もうとしたんで引っ張り上げた。でも、まあ結果的には、沈まれてしまったが……」


「「「……」」」


 つまりはシュゼットにそっぽを向かれて、強引に近づいたら速攻で逃げられたということだ。


「レイシル様、二度とお一人で彼女にサルベージを掛けないで下さい。これ以上警戒されたら、本当に戻ってこれなくなりそうですから」


 エーリックが強い調子で言い放つと、流石にレイシルもムッとした様で顔を上げた。


「一対一と言うのに警戒するんです。彼女は女の子ですよ? たった15歳の。私でも()()と相対するのは緊張するし、委縮する事もあるんです。そこはご理解して頂かないと駄目でしょう?」


 レイシルの隣で聞いていたカイルが、心の中で手を叩いた。



(上手い! エーリック様、レイシル様の扱いが上手いです!)



「……そう言うものか?」


 レイシルの表情が少し緩んだように見えた。



(レイシル師長、案外チョロいですよ)





 二人のやり取りを聞いていたシルヴァだが、新たに設置されたという書棚を覗き込んでいる。普段見る事の出来ない貴重本が目に留まった様だ。


「レイシル。何故彼女があの状態になったか、理由は判ったのか?」


 呼びかけられたレイシルは、シルヴァが立つ本棚まで近づくと、彼の目線の先にある書籍を見た。


「コレ。()()()()()()()()()()ことがあった。過去の光の識別者について書かかれた本だ。まあ、これが編集されたのがたった千年位前だから、記載されているのも半分は作り話かもしれない。確かな記述はここ400年位だろう。しかし、それも100年前からは更新はされていない」


「それで、原因としては何があるのだ?」


 レイシルが、本棚を開けて大きな黒い革張りの本を取り出した。鍵が4ヵ所も付いたタイトルの無い本だ。重そうなその本をシルヴァが支えるのを手伝いながら尋ねた。


「……歴代の光の識別者になった人物は、心が壊れてしまった者が多い。光の魔法術の強度は、識別者の()()()の純度によるらしいから」


 エーリックの片眉がクイっと上がった。


「それは、聖魔力の純度が低くなれば、光の魔法術が使えないという事ですか? でも、シュゼットは聖職者でも聖職に関わる家系でも、その血統を継ぐ者でも無いはずですが。そもそも、聖魔力は神職に関わる魔力でしょう? そうでなくても純度は高められるモノなのですか?」


「判らない。俺達の魔法術を展開するために使う魔力は、個々の識別に由来する魔力だ。でも、光の魔力は聖なる魔力、聖魔力と言う力で展開される」





「レイシル。心が壊れてしまうとはどういう事だ」


 カイルから鑑定石を受け取り、レイシルが本に掛かっている4つの鍵に当てる。鑑定石に反応するようにうっすらと虹色に光った。







「ここから先は、この本の中にあった」



 一番最後の頁を開くと、最後の文章を指差した。古代コレール文字で書かれた禁書だ。




『光の識別者は、聖なる心と聖なる意志によって聖魔力を使役する。万物を平等に愛し、己の欲望や妬み嫉みの悪しき心を持たず。自らを滅して聖なる光に殉じよ』




 レイシルの指先が文字を辿ると、古代文字は現代の文字に替わって浮かび上がった。レイシルの錬金の魔法術によるものだろう。


「自らを滅して? 聖なる光に殉じよ? ナニコレ……自分自身を殺して聖魔力に捧げろって? そうしなければ、光の魔法術は使えない。ってこと?」


 エーリックの瞳に怒りの色が見えた。


「つまりはそういう事だ。過去の識別者は()()()()()()()()()()()()。だから、()()()。それはそうだろうな。幼い頃から世界から隔離され、悪しき感情を持たぬように育てられたようだ。国政の手段とされた使役者は、己の力を理解し自己に目覚めた時に、精神のバランスを崩す事が多かったようだ。教わってきた事と現実の差に理解が追い付かなかったのかもしれない」


「そんな歪な生活させて、感情を持たないようにコントロールして? 使えるだけ魔法術を使わせて? そんな事、現在で赦される事では無いですよ? コレールでは、またコレをしようとしているのですか?」


 エーリックがレイシルに詰め寄った。


「……そんな事にはしない。その為に俺達(魔法科学省)がいるんだ。俺達は彼女を護るためにいるんだから。誓っても良い」


 伏せていた眼を静かに上げて、レイシルが答える。隣にいるカイルも大きく頷いた。


「とりあえず、今はその言葉を信じよう。それで、彼女が意識を沈めている原因はなんだ」


 シルヴァが椅子に座って、正面からレイシルを見詰めて問うた。


「原因は、多分……彼女の()()()が、導入教育で活性化された聖魔力と拮抗したのかもしれない。均衡が保たれていた正と負が、正が活性化したため、負の気持ちが凝縮されて奥底に押し込まれたか……彼女が抱えていた負の気持ちが、昇華されずに奥底に沈み込んでしまったのかも」


「それでは、彼女の()()()がある限り、浮上できないという事ですか!?」


 思わずエーリックが椅子から立ち上がった。レイシルに食って掛かるような勢いだ。


「エーリック、座れ。レイシル、それで目を覚まさせる方法はあるのか」


「……俺がサルベージで行った方法がソレだった。彼女の意識の()をこちらに向けて、紐づいている負の心ごと意識を引っ張り上げる。その為、俺の()()()()を直接手から流したんだが……」


 少し悔しそうにレイシルが唇を噛んだ。自分のやった失態を思い出したからだ。




「……鑑定魔法が使えないと、シュゼットと話が出来ないのですか?」




 エーリックが不安そうな顔でレイシルとカイルを見た。鑑定魔法の識別を持つ者は少ないのだ。


「そんなことは無い。鑑定石を媒体とすれば可能と思われる。俺の魔力を鑑定石に触媒として使えば、仮に鑑定魔法術の識別が無くても話せるだろう。特に、エーリックとシルヴァ殿なら彼女の心象も良いはずだから」


 まあ、試してみないと判らないが。と付け加えられた。話せる可能性がゼロで無い事に、エーリックはほっとした表情になった。同じく鑑定の識別を持たないシルヴァの表情も、ほんの少しだけ和らいだように見えた。








 それまでじっと話を聞いていたばかりのカイルが、ふと思いついたように口を開いた。


「でも負の心って、人ならば多かれ少なかれ皆持っています。私にだって人に知られたくない負の気持ちとかあります。それを無くさない限り、このような事が起きるという事でしょうか? まさか、今のままのシュゼット嬢では、()()()()()()()()()()()なんて事無いですよね?」





「「「ま・さ・か……?」」」




 

 カイルは思わず口を塞いで目を逸らしたが、三人の視線が痛い程に突き刺さった。





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次話でセドリック君にもちょこっと登場して貰いましょう。


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