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67. 守護者達は苛立つ

本日三話目です。


今日はこれでお終いです。

「ああ、何て事に!」


 グリーンフィールド公爵家に行ったシルヴァが、公爵夫妻に現状の報告説明をした。

 気丈に報告を受けていた夫妻も、さすがに意識不明のままでいる事を聞くと顔を青くした。公爵夫人は今にも卒倒しそうになり、夫である公爵に支えられている。


「それで、今、シュゼットはどこに?」


 震える声で公爵が尋ねた。


「今は、レイシル殿が魔法科学省の医術院にお送りしているはずです。魔法術が原因でこの状態になってしまったので、普通の医療院では不足でしょうから」


 今頃は医術院に着いた頃だろうか。


「シュゼット嬢への魔法術教育は、私がしておりました。このような事になり大変申し訳ない。深くお詫びする。何としても、回復するように尽力する」


 シルヴァが頭を下げて礼を執った。さすがに隣国の王弟殿下に、頭を下げさせる訳にはいかない。公爵がシルヴァの元に近づいた。


「頭を上げて下さい。娘が100年振りの光の識別者という事で、我が家では初めて尽くしの事ばかりなのです。まして、このような事があるなど思いも寄りませんでしたが、それは誰もがそうでしょう。何卒、娘をお願いします。どうかシュゼットが無事に目を覚ますよう、お力添えをお願いします」


 何が起ころうと魔法術に関しては、レイシルとシルヴァの二人が最高の権威者なのだ。この二人に頼むしかない。


 本来ならばもっと責めたい気持ちもあったが、なんとかそれを押し留めた。


 シルヴァがグリーンフィールド公爵家に来て説明するのも、授業の担当者だったという事()()では無いのだろう。コレール王国の作為も感じる。レイシルが故意に仕向けたのか。





 もし、光の識別者に何かあったら・・・




 シルヴァの高い能力と大国の王弟という身分を利用したのか。いや、彼が自ら志願してここ(公爵邸)に来たとしたら、コレールにとっては()()()()()()()だ。




 彼は(から)めとられたかもしれない。




 公爵はそう思って、若い王弟の肩をそっと抱いた。


「とにかく、娘を、シュゼットをお願いします」



 シルヴァは大きく頷いた。








「お話は終わったのですね」


 シルヴァがダリナス王族用の馬車に乗り込むと、馬車の隅にエーリックが待っていた。


「ああ。とりあえず説明はした」


 少し疲れたように眉間を揉んで眼鏡を外し、エーリックの方を見て続けた。


「お前も来れば良かったんだ。面識はあるのだろう?」













()()()()? 叔父上()()で充分用は足りるでしょう」



 無表情なエーリックがシルヴァをじっと見詰めている。普段見せない顔だ。



「・・・」


「さあ、医術院に行きましょう。シュゼットの様子が心配ですから」


 シルヴァの返事を待たずに、エーリックが御者に声を掛けた。いつもの温和な表情に戻っている。



「医術院に行ってくれ」


 馬車は魔法科学省に向かって速度を上げた。










 カイルが魔法科学省の馬車を寝台型に誂えると、医術院から受け入れの準備が整ったと連絡が来た。仕事が早くて助かる。




 初めて見た光の識別者は、意識の無い状態での対面となった。噂には聞いていたが、大変愛らしい少女に見えた。金色の長い髪に、白く小さな貌。残念ながら瞳は閉じられていて見ることは叶わなかったが、眠っているようなその姿は、まるで天使が微睡(まどろ)んでいるように見えた。




 100年振りの光の識別者として、神が最高傑作を地上に降ろしたのか。




(これは、何とも・・・()()()()()()()のも致し方ないか?)


 静養室のベッドに横たわるシュゼットの身体を抱き起す。上司であるレイシルには出来ないだろう。幾ら少女が軽いと言っても、彼には難しいと判断した。全く意識の無い人間を抱き上げるのは、思った以上に体力と技術が必要だから。



「それでは、医術院に向かおう」


 横抱きにした彼女の顔を、覗き込むように確認すると上司は柔らかな目でそう言った。






 魔法科学省の付属施設である医術院。

 極秘で運び込まれたシュゼットを、カイルが馬車からそっと下ろす。



「さすがだね。カイル。君がいてくれて助かるよ」


 副師長であるカイルは、魔法術も高い能力を有しているが、元々は騎士の家系であるため、鍛錬も欠かさなかった。その為、レイシルの部下の中では珍しく鍛えられた身体の持ち主だった。


 最上階の特別室迄、軽々と運んでいく。本来であれば、移動用の魔法陣があるが、何の魔法が彼女に影響するか判らないため、人力で運ぶことにしたのだ。


 最上階の特別室は、王族が入院するために作られた立派な病室だった。すでに、シュゼットの扱いは王族にも匹敵するとされていた。



(これで目を覚まさないなんて事になったら・・・)


 カイルは思わず身震いをした。


「どうした? 大丈夫か?」


 目敏(めざと)くレイシルが声を掛けて来た。そうだった。この御仁の前では気を抜いてはいけない。


「大丈夫です」


 何事も無いようにそう答えた。






 部屋のベッドにそっと下ろす。しかし、彼女に反応は無かった。


「叔父上、私はこの事を陛下に報告します。念のため、経過をお話しておいた方が良いと思いますので」


 病室まで着いて来たフェリックスは、シュゼットがベッドに横たわったのを確認すると、すでに、自分に出来る事は無いと思った。


「レイ叔父上、シュゼットをお願いしますね」


「判っている。陛下に宜しくな」








 カイルに判らないように、フェリックスがレイシルを手招いた。


「?」


 フェリックスに呼ばれて、レイシルが扉の陰に行く。何だと首を傾げて、よく似た二人が顔を見合わせる距離に近づいた。







「叔父上、彼女に何かあったら・・・殺されるよ?」



 レイシルの耳元で小声で囁く。

 思わず目を見張った。少し背の低い甥っ子を見下ろすように見つめた。


「本当だよ。()()()()()()()()()、そのつもりでいてよ」


 念の為と、フェリックスなりに叔父を心配しての事だ。すぐにピンときたレイシルが、真面目な顔で答えた。





「ああ。肝に銘じておこう」




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― 新着の感想 ―
[一言] うわー。みんな参戦するって…どーなるんや!(笑) 何気にフェリも参加権手に入れた感じやし…
[一言] 続きがすごく気になっていたので、1日に3話も更新ありがとうございます! そして最後のフェリックスの台詞でまた続きが楽しみになっています。
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