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50. 動き出したら止まらない?

本日2話目です。

「「シュゼットお姉様!!」」



 馬車から降りたところで、大きな声で呼ばれました。

 さすがに、コレール王国の王室馬車は玄関近くに寄せられていますので、私が降り立った場所からは少し離れています。でも、その大きな呼びかけは周囲の皆様も振り返る位の大きさでした。



「おはようございます。パリス様、カルン様。お元気そうで何よりですわ」



 少しだけ制服のスカートを摘んでご挨拶をします。

 お二人は、子猫さながらに私の前まで駆け寄っていらっしゃると、そのグリーンがかった琥珀色の瞳をキラキラさせています。なんてお可愛らしい!! 本当に高貴な子猫のようですわ!!


「シュゼットお姉様、昨日はお会いできて嬉しかったです。今朝は、お約束をしたくてお待ちしていました」


 パリス様が可愛らしく小首を傾げて言います。


「なんでしょうか?」


 つられて私も小首を傾げます。


「あのですね。来週の木曜日の講義は、私達と受けられるでしょう? 中等部の教室で行われるのですけど、シュゼットお姉様は中等部はご存じないかと思って、お迎えに行こうって! カルンと相談したのです」


 カルン様もうんうんと頷いています。確かに、中等部の教室は行ったことはありませんわね。


「「シュゼットお姉様、僕達、教室までお迎えに行っても良いですか?」」


 声を揃えてそうおっしゃいます。



 やーん!! 可愛いー!! なにこの攻め方!!




 マリが鞄を渡すタイミングも忘れて、肩を震わせて堪えています。あらイヤだ、ツボが同じなのですね?

 


 おっと。銀色子猫ちゃん達に気を取られていましたが、少し離れた場所でヤツとオーランド様がこちらを見ています。




 早く玄関に入ればイイのに。




「ありがとうございます。でも、ご迷惑ではありませんか? パリス様、カルン様」


 この二人に誘われて、断わる理由はありません。寧ろ、仲良くなって愛でたいですわ!!


(お嬢様! 抑えてくださいまし!)


 マリが小声で耳打ちします。いや、アナタもそうでしょう?


「「僕達が案内したいの!! お願い、シュゼットお姉様!」」


「ええ。こちらこそ喜んで。カルン様、パリス様、木曜日にお待ちしていますわ。よろしくお願いしますね?」


 双子王子に天使150%で微笑みかけます。これは自然発生した微笑みです。だって、仕方ありませんでしょう? 朝から、ヤラレマシタワ。




 約束の印と言って、お二人から押し花付きのカードを頂きました。カードにはお迎えに行くという文字と、お名前が手書きでされています。

 そして、私がそのカードを受け取ると、手を振ってヤツとオーランド様の所に走って行かれました。ヤツがお二人に目を向けている時に、オーランド様が小さくお辞儀をされました。


 面倒を掛けて済まない。といった表情ですから、それに私は天使150%でそんなことありませんと答えます。こちらは、意識ありありの150%ですけど。





(シュゼットお嬢様? モテモテですね?)


 小声で囁くマリに、振り返って鞄を受け取ります。なんともこういう風景を身内に見られるのは、恥ずかしいものですね? 私の顔は少し赤くなって、マリに抗議の目を向けていたと思います。




(あっ! フェッリクス王子が、こちらをご覧になっていますよ?)




 私の背中越しに、マリからヤツの様子が見えたようです。


「そう? でも何ともないわ。昨日の作戦通りですもの。じゃあ、行って参りますわ」


 頂いたカードを、手提げポーチに大事に仕舞って玄関に足を向けました。




 ヤツ達の姿はさっきの場には見えません。教室に向かったのでしょう。


 さあ、私も急ぎましょう!









「シュゼット!! おはよう!!」


 ぐえっ! 毎朝の恒例行事。カテリーナ様からの力いっぱいのハグです。


「おはよう。シュゼット。・・・カテリーナ、止めてあげて」


 エーリック殿下もいつものようにそう言って、カテリーナ様を引きはがして下さいます。これ、もう何年もやっていますわね。


「おはようございます。エーリック殿下、カテリーナ様」


「おはよう! シュゼット・メレ・・・いや、疲れていないか?」


 セドリック様。またフルネーム呼びしそうになりましたわね? そろそろ慣れても良いのではありませんか? でも、昨日の事を労わって下さるのですね。


「おはようございます。セドリック様。大丈夫ですわ。ご心配ありがとうございます」


 アッシュブロンドの前髪がキラキラとしています。・・・やっぱり、前髪が長いですわ。思わずじっと見詰めてしまいました。


「っ!? い、いや大丈夫なら良いのだ。でも、何かあったらすぐ私に言えばいい! そうだ何でも言うがいいぞ!!」


 若干の上から目線を感じますが、まあ、平常運転ですわね。何故かホッとします。






「おはようございます。シュゼット様」


 おお。ロイ様とローナ様の登場ですわ。このお二人は結構時間ギリギリですわね。お家が遠いのかしら?それとも何か理由があるのかしら?




「おはようございます。ロイ様。それに、ローナ様」




 ご挨拶をして下さったのは、勿論ロイ様です。ローナ様は口を開きませんけど、近くにいるエーリック殿下やカテリーナ様、セドリック様には会釈をされました。

 見ようによっては、人見知りの内気そう・・・に見えないこともありませんけどね。



 当然、私には目も合わせなければ、会釈もありませんわ。イイですけど。



「あの、この前言っていた校内行事等のお話ですけど、今日の放課後とか如何ですか?」


 ロイ様からのお誘いですね。良いじゃないでしょうか? 今日は特に予定はありませんから。


「ロイ様のご都合が宜しければ、ぜひお願いしますわ」


 私がお誘いした訳ではありませんからね? ローナ様、そんなに睨んでもしょうがないでしょう? 貴方のお兄様に言ってくださいな。


「いいだろう、ローナ?」


 ロイ様が、相槌を求めるようにローナ様に声を掛けました。でも、彼女は・・・


「わ、私は放課後は・・・」


 用事でもあるのでしょうか。歯切れが悪いですね。


「あっ、そうか。今日は楽しみにしていたピアノのレッスンの日だったね。それなら仕方ない、先に帰っておくれ。いいかい?」


 ロイ様は、無理にローナ様をお誘いすることはありませんでした。


 そんな話をしていると、始業の鐘が鳴りましたわ。


 ロイ様、()()()()を頂きました。




 ローナ様は、ピアノをお弾きになるのですね? それもレッスンを楽しみにされる位にお好きなのですね?




 私、ピアノ()()()なのですわ。

 この時の私の顔は、ワルかったと思いますわ。マリが見ていたなら、きっとこう言ったでしょう。


『クロい! 笑顔が黒いです! 皆さーん!! ここに悪役令嬢がいますよー!!』と。 








 ランチの時間になりました。私達4人は、いつものように食堂ホールに向かいます。この学院の食堂はとっても美味しいので、ランチの時間が楽しみです。


 ヤツとオーランド様、ロイ様と今日は珍しいですわね、ローナ様もご一緒にテーブルにいらっしゃいます。あら、今日はドロシア様とイザベラ様はどうされたのかしら?

 

 ああ、お二人はヤツのテーブルから少し離れた丸テーブルで、それぞれ女子4人でいらっしゃいます。もしかしたら、お取り巻き? と言われるご令嬢達でしょうか? クラスメートではありますけど、まだお話をしたことが無い方々ばかりですわ。そう言えば、私がお話するのって、このテーブルのダリナスのお三人ばかりですね。もう少し、他の方々と交流したほうが良いですわね。




「さあ、今日のお薦めは何かしら? あら、オムライスだわ。私はこれにするわ」



 カテリーナ様がニコニコです。トロトロオムライスですね。美味しそうです。季節のサラダとスープ。デザートはマスカットのゼリーですか。これに決めましょう。エーリック殿下とセドリック様は午前に行われた男女別の授業で、剣術の授業に出られていましたから、もっとがっつりした物が食べたいようです。


 因みに、女子は刺繍の授業でした。今は、学院主催の慈善バザーで販売するという、ハンカチーフの刺繍をしています。貴族の令嬢が刺繍したハンカチーフは、バザーの目玉なのですって。バザー当日までに1人5枚のノルマを負っているのです。頑張らないといけません。




 ええ。刺繍も得意ですのよ? ワ・タ・ク・シ。





 ランチが来るまで、私達はワイワイとお喋りをしています。


「ところで、剣術の授業ってどうやっているのですか?」


 素朴な疑問です。


「ああ。今日はトーナメント方式だった」


 エーリック殿下が、グラスの水を飲み干して言いました。随分、喉が渇いていたようですね。


「で? 今日はどなたが勝ったの? 二人はどうだったのかしら?」


 カテリーナ様が、詰め寄ります。そう言えば、エーリック殿下は剣術も得意で有名でした。コレールに来てもそれは変わらないでしょうね。セドリック様は、どちらかというと文系の方ですから、剣術は余り得意でないと聞いていますけど。




「予想通りだよ。オーランド殿が優勝」


 二杯目の水を飲みかけて、エーリック殿下がチラリと視線を外して言います。悔しかったのですね。


「そう。エーリックはどうだったの? セドリックは?」


 引き下がらないカテリーナ様に、エーリックが不機嫌そうに横を向いたままです。こんな表情は珍しいですわ。


「エーリック殿下は、3位だった。私は・・・9位くらい?」


「お前は、12位だ」


 ぷっ。と笑ってしまいました。エーリック殿下は普段は冷静で思慮深い方なのに、今はこんなに表情豊かです。3位ということは、オーランド様、次は・・・


「2位はフェリックス殿下だった。でも、今日はいつもと違う感じがしたような?」


「あら? 何それ?」


 セドリック様の言葉にカテリーナ様が食いつきました。


「それが、随分と本気だったというか? 気迫が違ったと言うか? それも、エーリック殿下との一戦にですけど」


 ふ・・・うん? 何ですか? じゃあ、いつもは力を抜いているんですか?




「まあ、そうだろうね。彼からすれば、私の存在は()()()()だろうからね?」



 エーリック殿下が、じっと私を見詰めました。何時になく熱い視線に、居た堪れない気持ちになりました。



「ところで、シュゼット・メ・・・! 今日の放課後だが、私も付き合うからな! まさか、駄目だとは言わないだろうな?」



 ああ。セドリック様の空気の読めなさ感が、・・・今はありがたいですわ。


ブックマーク、誤字脱字報告、感想、イラスト

ありがとうございます。


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これからもよろしくお願いします。


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