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21. 天使の邂逅

集まってきましたよ?



 シュゼットは2階席を気にしていた。もしかしたらヤツ(王子)が来ているかもしれないから。1階のボックス席は、2階からは丸見えである。

 ついさっき、エーリック王子の姿を認めたから、きっと彼も自分達を上から見ているはず。




「シルヴァ様は、エーリック様の叔父上様なのですね? 知りませんでしたわ」


 口元を隠して扇越しに問うた。公にしていないと言っていたから、多分シルヴァ本来の身分を知っている者は限られているのだろう。エーリックが先日言えなかった訳も理解できる。


「王族としてこの国に来ている訳では無いのだ。魔法術の研究者として、学院を拠点にしているだけだ」


「研究?」


「ああ。残念ながら、さすがに他国の王族が魔法科学省には入省はできない。まあ、特例として学院の研究室を使わせて貰っているということだ」


「そうでしたの。それでは学院でハート先生に授業を受けることは無いのですか?」


「いや。魔法術の授業は受け持っている。しかし、限られた学生しか受けられないからな。君が受けられるかは、魔法鑑定式を受けた結果によるな」


「魔法・・・」


 シュゼットの身内には、魔法術を使える人間はいなかった。グリーンフィールド公爵家の血には、一滴の魔法術も流れていないと思った。家系に只の一人も魔法術士はいないと聞いていたから。その代わり、頭脳の回転や記憶力にが定評があった。



「鑑定の結果、私に魔法術があったら先生、是非宜しくお願いしますわ」


 扇を畳んで膝の上に置くと、隣の青年に微笑んだ。そうであったら、とても嬉しいという風情を漂わせて。




「ところで、君はエーリックとも親しいのか? 知っているようだったが?」


「はい。5年間ダリナス王国にいて、テレジア学院ではクラスメートでしたわ。異国人の私にも、とても優しくして頂きましたの。私の父の帰任に合わせて帰国したものですから、先にこの国に留学されていたエーリック様達に、お知らせしたのです。昨日、1年振りにお会いできましたの」


「そうか。仲良くしてやってくれ。アイツは()()()()()を負わされているからな。気晴らしも必要だ」


 それはもしや、カテリーナのお目付け役の事か? はっきりとは言わないが、彼の目の奥がほんの少しだけ温かく見えたような気がした。


「はい。こちらこそお願いしたいですわ」


 






 2階のボックス席には、多くの知った顔がいた。

 天覧席の向こう側にはクラスメートであり、隣国の王子であるエーリック殿下と従姉妹姫のカテリーナ様がいた。珍しくエーリック殿下がエスコートされたようだ。


 カテリーナ様は、茶髪に黒い髪がメッシュの様に入った特徴のある髪色をしている。黒いアーモンド形の大きな瞳が少しばかり吊り目気味のせいか、どうにもキツイ美人に見られてしまう。ほっそりした身体つきと王族として立ち振る舞いと相まって、ゴージャスな・・・()()()()といった風情だ。


「ロイ? どうかした?」


 じっと周囲を眺めていると、妹が小さな声で聞いてきた。

 白くて丸い顔は、ほっぺがぽちゃぽちゃとした赤子のようだ。それに、垂れ気味の茶色い瞳に栗色の巻き毛は、僕ら二人が良く似ていると言われている所以だ。小柄で少し・・・・いや正直に言うと・・・若干? 太っているように見える。クラスメートに何て言われているかを知っている。多分、ローナ自身も知っているはずだ。




 ・・・・・だって、泣いていたもの。




「ううん。今日は知っている顔も多いなって。それに、この前お世話になった方がいたから、幕間に挨拶に行かなくちゃ。って思っていただけだよ?」


 1階のボックス席に、お目当ての人物を見つけた。顔は残念ながら余り見えない。でも、金髪とパステルブルーの肩先が見える。隣の男性はエスコートしていたパートナーなのか? どこかで見たような気もするが、あんなに綺麗な大人の男性を見たことがあったか? いや、覚えが無い・・・と思う。

 

 誰なのだろう? 随分親しそうに見えるけど。



「ロイ、フェリックス様がいらっしゃいましたわよ?」 



 深紅の天鵞絨のカーテンが開かれて、天覧席に銀髪が見えた。人影は二人。


「フェリックス殿下が、チェリアーナ姫をエスコートしていらしたのですね?」


 ローナがうっすらと頬を染めて天覧席を見ている。


 知っている。ローナはフェリックス殿下に恋している。でも、自分から近づくことも話をすることもしない。出来るだけ目立たないように過ごしている。

 その理由も知っているから、あまり触れないようにする。まだ、()()()()()()()()()()








 フェリックスは天覧席に着くと、そこかしこから注がれる視線に、王子然とした表情で応えた。一番目立つ席で、一番最後に席に着くのだから目立って当たり前だ。ふと左側に眼をやると、隣国からの留学生でクラスメートのエーリック王子がいるのが見えた。



 彼も同じようだな? カテリーナ嬢のエスコートか。


 ふと目が合って、視線で挨拶を交わす。お互い面倒な役をしていると。相哀れむ気持ちが通った気がした。

 エーリック王子の隣にいるカテリーナ嬢は、こちらに気付いていないのか劇場の冊子を熱心に読んでいる。この二人は付かず離れず、絶妙な距離感でいるように見える。もっとも、エーリック王子がカテリーナ嬢の面倒を見ているというか、ストッパー役になっているように見える。


 確か、彼の傍には外交大使の()()()()()()が居たはずだが、今日は来ていないのか? しかし、隣国の関係者はどこか個性的で、一筋縄ではいかない人間が多いような気がする。


 それは、それで面白いが・・・




 いつになくざわついていた会場で、ふとある一角が目が留まった。1階のボックス席辺りが何となくいつもの雰囲気と違う。様子を伺っているというか、遠巻きに見ているというか。ある席の客に注目がいっているようだった。


 誰が来ているのだ? 目を凝らしてみるが、見覚えは無い。




「あらっ!? あそこの席にいらっしゃるのは、シルヴァ様ではなくって?」


 オペラグラスを覗いていたチェリアーナが言った。



 確かに。

 

 ダリナス国王の弟、シルヴァ王弟殿下の姿だった。





 隣に女性がいる?


 そう思った時、開演を知らせるベルが鳴り響いた。


 煌びやかな照明の光が落とされ、客席は一瞬の内に暗闇に包まれた。


幕間の休憩時間がどうなるか?

不安ですよ。


シルヴァ様の立ち位置によっては、

若者たちは戦々恐々ですよね?

オトナの魅力ですから。


ブックマーク、感想、誤字脱字

ありがとうございます。

楽しんでい頂けたら嬉しいです。


次話では、やっぱりカレに

登場して貰いましょう。

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