1. リベンジ開始は今日からです
悪役令嬢モノを書いてみたくなりました。
天使の容貌で、悪役令嬢ってイイですよね!?
今日は、王立学院の編入試験日ですわ。
私こと、シュゼット・メレリア・グリーンフィールドは、公爵家の令嬢です。
「シュゼットお嬢様、おはようございます。お仕度を致しましょうね」
侍女のマリはそう言ってカーテンを開けていきます。眩しい朝日に一日の始まりが感じられます。
シュゼット・メレリア・グリーンフィールドと言えば、黄金色の眩い金髪はフワフワの緩めのウェーブがついていて、金色の長い睫毛に縁どられた海色の碧い瞳。白い顔は小さくて、すっきりと通った鼻筋は高貴な印象を持たせる。唇は珊瑚の様にピンク色でぷっくりして艶やかだ。そう。見る者が皆こう言うのだ。
『なんてお美しい!!まるで天使の様!!』
シュゼットは、天使のような美貌を持った公爵令嬢なのだ。
「ねえ、マリ。今日は気合を入れるわよ!何といっても王立学院の編入試験ですもの」
シュゼットの父は公爵の身分であるが、外交大使の職務を担っていたため5年間隣の大国に駐在していた。通常であれば大使だけが駐在するはずであったが、愛妻家で子煩悩な公爵が家族同伴を強く主張したことから、彼女は正規の入学はできずに帰国と共に編入試験を受けることになったのだ。
「お嬢様は学業の方は全く問題はありませんでしょう?第一、国務で隣国に行っていたのですから、編入試験なんて免除でイイと私は思いますわ」
マリは、髪を梳かしながら鏡越しに答えます。
「そりゃあね。試験内容なんてどうでもいいのよ。要はいかに印象良く、劇的に編入するかですもの」
「それも大丈夫でございましょう?お嬢様の見た目だけは天使ですよ?まして、5年間の空白がありますから。以前のお嬢様を思い出すのは難しいです」
「見た目だけはって、貴方随分言うわね。まあ、この5年間の血の滲むような努力の成果を見せなければ。私の気が済まないわ」
「そうですわ。今の天使っぷりを見せつけてやりましょう!!」
5年前にお父様の赴任地である隣国に渡ったのには理由がある。まだ10歳になったばかりの私は、内気で大人しくて、恥ずかしがりやで・・・まあ、とにかく地味で目立たなかった。何といっても今とは違い身体も随分、丸かった。いや、太っていた。
太っていたため、瞼は脂肪でパンパンで目は糸目の様になっていた。ほっぺに埋もれた鼻は低くて丸々とした顔はまるで
『白パンダ』
白パンダって、デブよりある意味辛辣な言葉の組み合わせだわ。そう呼んだ者に蹴りの三発位お見舞いしたいけど。
高位貴族の娘として初めて正式に王宮にお呼ばれした日、招かれたのは第一王子フェリックス殿下のご学友と婚約者を選ぶためのお茶会だった。居並ぶ年の近しい令嬢達が一人ずつ挨拶をしていく。公爵家の私も早めのご挨拶ということで、列の右寄りに並んでいた。そう並んでいた。
「おまえ、白パンダみたいだな?」
並んでいた令嬢達を見ていたフェリックス殿下が、わざわざ一段高い王族たちの座る椅子から降りてきてそう言ったのだ。それも私のほっぺを指でツンツン突っつきながら!!
そうです。私の事を白パンダと呼んだのは、コレール王国の第一王子のフェリックス殿下です。
「第一!パンダは白と黒なのよ!!白パンダってなんなのよ!!」
と、今なら食って掛かれるけど、その当時は余りのショックに一瞬何が起きたか判らなかったわ。プニプニ、ツンツンされたほっぺの感触に我に返った私は、その場に立っていることもできずに一目散に逃げだしたのだ。だって、内気で気弱で大人しい私がその場に留まって何事も無く過ごし、皆様にご挨拶なんてできるわけありませんもの。
さすがに、逃げ帰ってしまったのは不味いと思うけど、陛下も王妃様も初めての王宮で、緊張している内気な娘の心情を察して下さったようです。翌日王家からのお詫びということで、大きな薔薇の花束と美味しそうな宮廷菓子が届きました。そして、汚い字のカードが添えられていました。もう、無理やり書かされた感満載のフェリックス王子からのお詫びのカードでした。
『昨日は、シツレイな態度をとってゴメンナサイ F 』
いるかーっ!!こんなモン!! と思いましたが、このカードこそが私の活力の源になったのです。ええ。今でも大事に持っていますわ!
『リベンジノート』の一番最初のページに貼ってあります。永久保存版ですわ。
その件があってすぐにお父様と赴任先に行くことが決まったので、私はお友達と離れて寂しいとか、この国から離れたくなーい、なんてこれっポッチも思わずに隣国へ向かったのです。
そう、いつかあの王子と、あの時に笑った奴に仕返しをするために。教養・作法・芸術・ダンス・馬術にそして何より美貌を磨くことにしたのですわ。
確かに私は太った白パンダかもしれませんが、元は良いのです。美貌の伯爵令嬢と誉れの高かったお母様と美丈夫と人気のあったお父様ですもの。素材はいいのに甘やかされて、美味しい物を食べてた結果のおでぶ体型でしたから。
その気になった公爵家の結束は固く、両親の、いいえ!使用人も含めた全面バックアップを得て完璧な令嬢に生まれ変わるべく努力、努力の日々でした。
そして帰国と共に迎えた今日。満を持して編入試験に臨みます。
「そう。劇的に。天使の降臨ですわ」
楽しんで貰えたら嬉しいです。
一度は書いてみたい悪役令嬢モノですから
がんばります。
評価もして頂けると頑張る励みなります。
別話で、「妖精姫である私の・・・(長いので略)」と
「異世界エステシャンは、王室御用達!」も
掲載しています。