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翌朝、いつもの野菜スープとパンを食べ終わり

父と母が仕事に出かけたを見計らって、兄妹4人は出かける準備を始める

呼ばれた相手はギルドマスター

普段なら、なかなか話も出来ない相手だ

持っている中で一番上等な洋服に着替え

アリアはフードを被り

リンデンのドングリのソロバンをカバンに入れた

マイクとアリアのソロバンは、マイクが持って

家を出た


4人で出かけるのが珍しいらしく、近所の人たちが声を掛けてくれる

上手にマイクがあしらってくれ

ギルドへ向かった


ギルドに着くとマリーがドアの前で待っていてくれた


「遅くなって申し訳ありませんマリーさん

兄と妹を連れてきました」


「おはよう、マイク、ユーガと、妹さんたちね

こちらこそ無理言って悪かったわね

表から入ると目立つから、裏から回ってもらって良いかしら。

案内するわ」


朝から仕事を探しに来た冒険者たちが「なにごとか?」と見てくる中

マリーさんが先導して案内してくれた


もしかしたらギルド内に父がいたのかもしれない


裏口から入り、3階の一番大きなドアの部屋に案内された

ギルドマスターの部屋らしい

ギルド内は1階が大きく1部屋のようになっていて

仕事の受付カウンターと冒険者の待機、飲食できるテーブルが並んでいる

奥には訓練ができる演習場にもつながっている

2階は事務所と会議室、簡易宿泊場所も備える

最近はここでユーガは仕事させてもらう事もあるみたいだ


3階はギルドマスターはじめ幹部たちの部屋


ここに案内されるのは、ユーガももちろん初めて

【関係者以外立ち入り禁止】区間なのだ



大きなドアをマリーさんがノックすると、部屋の中ら


「はいれ」


と、声がかかる


マリーさんがドアを開けて、私たちを中に促した

横を見ると緊張した面持ちの兄たちと

初めての場所で楽しそうにしているリンデンがいる


いつまでも足が出ない兄たちに

後ろから少し小突いた


「はっ」


マイクに睨まれた………


意を決して中に入る兄たちに続く


その中には、ソファーに座った40代くらいの男性

彼がギルドマスターだろう

その横には、ローブの男性

……彼は誰だ??


ソファーの後ろには男性が2人


「呼び出して悪かったな

ちょっと聞きたいことがあってな……

とりあえず座ってくれ」


ギルドマスターらしき人がソファーを勧めてくれた

兄たちが固まったままだったので

私が挨拶する事にした


「お呼びにより参上仕りました

ハイチの娘でアリアございます

父と兄たちが、いつもお世話になっております」


正しい挨拶かどうか知らない。

昔、映画で見たとうりローブの中のスカートをちょっと摘まんで膝を折った

間違っていても

5歳児のやることだし不敬にはあたらないはずだ


「アッ、すみませんギルドマスター

お呼びにより参上しました。弟から妹たちも同行しろ。と、求められたので連れてきました」


我に返ったマイクがユーガと礼をした


あら、ちゃんと出来るのね


今度は、相手が固まってる

おら??私たちをお呼びじゃなかったのかしら??

それともフードを被っているのが不敬だと驚いているのかしら??


「いや、こちらこそ

とりあえず座ってくれ、話が出来ない。

お嬢さんもフードをとったらどうだ??

そのままでもかまわないが」


ギルドマスターの横にはフードを被ったままの男がいるし、出来ればこのままの方が良いな


「申し訳ございません。私の容姿は皆様のお目汚しになりますので

出来ればフードを被ったままで、お許しください」


ソファーの後ろの男性の表情が歪んだ

そちらが良い。って言ったんですよね??


「わかった、良いだろう

小さなお嬢さんも座ってくれ、いま菓子を持ってこさせる」


「はーい」


良い返事をして、リンデンが誰よりも先にソファーに腰を下ろした

苦笑した兄たちと私が続いて席に着く


そうすると、見計らったようにお茶とお菓子が用意される

すごいなぁ~

こういう世界もあるんだよね


「遠慮せずに、召し上がってくれ」


言われるか言われないかのうちにリンデンが菓子に手を出した


部屋の皆が苦笑する

うん。やっぱりリンデンは天使だ


場が和んだのを見越して、ギルドマスターが声をあげる


「今日呼び出したのは、これのことを聞きたくてだ」


と、テーブルの上にソロバンを出した


「アッ、ソロバンだ!!」


リンデンが声を上げる


「ソロバンというのか??お嬢ちゃんも使っているのかな?」


後ろにいた男性の一人が声をかけてきた


「うん」


「サンダーバードさん。俺たちはソロバンと呼んでいます

妹のアリアが教えてくれたものです

こちらの妹が使っているドングリのソロバンも持ってきました

ほら、リンデン出してみろ」


「はーい」


リンデンが私のポシェットからドングリのソロバンを取り出した


「アーチャが作ってくれたの

お兄ちゃんが作ってくれたのは、重いから嫌い

リンデンは、ドングリのが可愛くて好き」


リンデンが取り出した紐に繋がれただけのドングリをマスターが手に取り

後ろの人に手渡した


「これは、アリアが作ったものなのかな??

ドングリが5個ついている。って事は、同じように使うものかな??」


それにはマイクが答えた


「ドングリのが先です。

木の方は俺が教会の勉強で苦労しているのを知って、アリアが作ってくれたものです

昨日、ユーガから、教会に持っていくな。と、ギルドから連絡があったと聞きました

これは、なにか禁止されているものだったのでしょうか??

妹たちは、何も知りません

勝手に持ち歩いたのは俺たちなんです」


すごい!!マイクが私を庇ってくれる日がくらなんて!!感動してしまう


「俺も、知らないでギルドに持ってきました。申し訳ありません

俺の責任です。兄も妹たちもダメな事だなんて知らなかったです」


ユーガも庇ってくれる。

二人とも小さいのに、良い男だなぁ


「イヤイヤ、ちょっと待ってくれ

これ……ソロバンだっけ??が、悪いんじゃない

いや反対だ!!これは大発明なんだ

これは、誰が考えたんだ??お前たちなのか??」


ギルドマスターが焦って声で伝えてくれると

兄、妹が一斉に私を見た

はい。私が犯人です


「ギルドマスターさま、それは私が兄に頼んで作ったものです

ドングリの方は妹の勉強の為に作りました。

ソロバン………、どこかで、こんな物があったなぁ~。

と、頭に浮かんだものを形にしたものです

外出する機会がないので、家でものを考える時間が多いので……

私より皆様の方がご存知なのだと思っていました

でも、これまでにないものだとしたら………私が考えものになるんでしょうか??

ソロバンという言葉も、この道具を思いついた時に一緒に浮かんだ言葉です」


一気にまくし立てた


ギルドマスターは考え込むようにソファに深く腰掛け動かない


「失礼、アリア?で良いのかな

あなたは、どこで礼儀作法や口調を学んだんでしょうか?

先ほど、外にはほとんど出ていないと言ってましたが

失礼ながら、あなたの両親のハイチとエスタが教えたとは考えづらい

まだ5歳と伺ったが、貴族の令嬢ですら、

あなたの言動が出来るかどうか不明だ」


後ろにいた男性から声を掛けられる


「それに、そのフードも不自然だ。そちらの小さな妹はフードなんて被っていない

外してみてくれないか??

イヤな噂を聞いたことがある。あなたを金持ちに売る。とかなんとか

……それも本当なのか??」


不躾なのにも程がある

まぁ、父も兄もあなたの部下ですがね


マイクが青ざめた私の顔を見る

大丈夫だよ、知っているから……

リンデンはお菓子に夢中で話を聞いていなったようだ


「失礼いたしました」


それだけ言うと、フードを脱ぐ

部屋の空気が変わるのがわかる


「うっ、失礼した。フードを被ってくれ

脱がれたままじゃ、話が出来ない!!エスターそれで良いな!!」


さっきのはエスターさんって言うのか

口を開けてしまっている。

ギルドマスターが先に我に返って、怒ってくれた

ふん。ざまぁみろ


フードを被りなおす


「うん。わかったハイチの言動も納得できる

アリア、あんたを貧民街に置いとくのは危険だよ

これからの事は、俺も相談にのるから、何かあれば言ってくれ」


ありがとうございます

家出先が出来ました


それにしても、向こうのフードの男性は微動だにしない

私に見惚れない2,3割に入る人なんだね

それとも女性なのかな??顔も体形もハッキリ見えないから、わからないが


「さて、じゃ本題に入る

アリアの事は、今は別の問題だ

それを話し合うのは、今でなくて良いだろう


ソロバンって言ったか??

これは大発見だ。これの権利を巡って諍いが起きてもおかしくない

それだけの利権を生み出す可能性がある。

だから、教会には持っていくな。とユーガから伝えてもらった

すでに昨日持って行った。って事は、存在がバレている事になる

教会も含めて落としどころを探すぞ!!」


真剣な顔になったギルドマスターが恐ろしいことを話し始めた


お菓子を十分に食べたリンデンは眠くなってきたのかソファに寄りかかって

ウトウトし始めた


話し合いの結果が出たのは、お昼も過ぎたころだ

リンデンはマリーさんがお昼を食べさせてくれる。と、途中で連れだしてくれた

部屋にいる面々には軽食が運ばれてきた

パンと、薄切りの肉、野菜

家で食べるのとは違ってフカフカの丸いパン

私は嬉しくなって、二つに割り、中にお肉と野菜を挟んでかぶりつくと

周りの眼が見開かれた

パンに直接かぶりつくなんて、お行儀が悪かったのかしら

訝しげに、他の人も真似してやってくれた

「こりゃ、いけるな」

なんてお褒めの言葉までいただくことになる


会議中に、フードの男性以外の紹介があった

彼の分の食事やお茶は用意されない

なんなんだろう??えっ、幽霊??


ギルドマスターはブライアンさん S級の冒険者で兄いわく冒険者の憧れの人なんだって

後ろにいる失礼だった人は、サブマスターのエスターさん

実は優しい……らしい

ギルドの中で一番最初に洗濯の依頼をしてくれた人だそうだ

もう一人はサンダーバードさん

兄が一番お世話になっている。ギルドの事務員さん


話し合いには、自己紹介が必要だよね

名前を呼んだ方が、信頼関係を築きやすいもん

昔の仕事では、準備段階で名前は先に覚えるようにしていた

会ってから、名前と顔を両方覚えるよりも

先に名前を憶えて、当日に顔を当てはめた方が私は楽だったし……


決まったこと


ソロバンの存在は領主様にも報告をあげる

教会が推薦しギルドが認めた商会と契約を結ぶ

契約は利益からライセンス料を貰う

これには領主、ギルド、教会、私たち家族に権利がある

ユーガはギルドに就職して、ソロバンを教える

マイクは商会に就職するか、条件が悪いようならギルドに就職

契約には、魔法契約を使用する

利益の配分やライセンスの期間は、後日決める

ライセンスを設定するに当たって、家名が必要になるらしい

なんと、自分で付けて良いんだって

兄たちは二人で話し合い「ソロバン」に決めた


ライセンス料か………

この世界にもあるんだね。特許料金の事だよね

魔法契約??なんかよくわからないが凄そうだわ

でも、ソロバンがあっても使い方がわからないとダメだよね??

教えるのもお金を貰えるんじゃないかな??

言ってみるか


「あの~。ソロバンを教える事のお金は、どうなるんでしょうか??

ギルドに就職って決まりましたが、それのお給料に上乗せですか??」


この質問には、サンダーバードさんが答えてくれる


「そうですね。教える事には別途お金を支払った方が良い。と私は思いますが……」


やったー!!

兄たちにお金が入る


「一つ出来るかどうか、提案なのですが……

免許制って出来ますか??

兄が教えるときは、その人からお金を貰いますよね??

で、その人がちゃんと勉強出来たらテストして、免許を与える

免許を持った人がお金を貰い他の人に教えると

免許を渡した兄にライセンス料みたいなものが入る。……みたいな

で、その弟子の人が教えた後で、試験みたいなものを受けさせて

免許は兄が与える。って感じとか……

もちろん、お金を貰わないで教える教会とかはお金を払わなくて良いんですけど……

どっちの兄が免許を出したかがわかるように【ソロバン1の免許】、【ソロバン2の免許】ってして」


家元制度みたいなもの

あるのかな??どうかな??


「いや、難しいぞ

それだと、誰がお金の管理をするんだ?ソロバンの有能性を考えると国内に広がるぞ」


エスターさんが答えてくれる


「免許を渡した人が、有料で教える時だけお金を貰うんです

必要な人だけが免許を持って、

それを持たない人が教える時は兄までお金は入らない。

ってすればどうですか??

習っても使うだけなら、免許なんて必要ないし

勝手に教えるなら、お金も貰わなくて良いと思うのです

ただ、免許は一定の基準をクリアした人にだけ与えるようして

免許を持っていれば、一定の水準をクリアしている証明にするのです

生徒も安心できるし、ソロバンをちゃんと使える先生だってわかるんです

ソロバンのライセンス料と同じで

兄、領主様、教会、ギルドで授業料から少しずつ貰う。

免許の管理をギルドカードに取り入れてもらえれば、

ギルドに手数料も上乗せして、みんなラッキーじゃないですか??」


思いついたままを話してみると

ブライアンさんが悩みだした


「ギルドカードで管理するとなると、俺の決断だけでは無理だな。本部に行かないと

ただ、ギルドとして悪い話ではない。とは、思う

少しの手間で、多くの利益が入る。となれば上は喜んで受け入れるだろう

それにギルドカードを使えれば、他の国へのけん制も出来る。」


エスターさんとサンダーバードさんも頷く


「ソロバンの利益だけでも相当だが、それに指導の手数料まで入るとなると

とんでもない話だな!!

ブライアン。俺は、良いと思うぞ」


サンダーバードさんが了承すると


「そうだな、ギルド本部だけじゃなく、領主にも恩を売れる

なんなら、国への手数料も加えてみたらどうだ??それぞれの割合を少なくしても

元手は、免許の管理だけだろう??絶対に受けるべきだ」


すごいな

みんな、頭の中での計算が早い


「よし、分かった。大会議を招集するぞ!!

割合なども、そこで話し合うか。

忙しくなるぞ

本部のジジィどもが腰抜かすんじゃないか??」


決断も早い


うん。うん

良いな


兄二人は、すでに蚊帳の外だが

真剣に話を聞いている


「じゃ、細かい調整はこちらでやる

明後日の朝に来てくれ。文章にでもしておく

文字は読めるんだよな??」


文字……

一応読める。と、思う

兄が教会で借りてきてくれた本レベルだから、わからないけど


「ごめんなさい。字は読めるかわかりません

マイク兄さんが、教会から借りてきてくれた本ぐらいしか読んでません

もし、可能なら何か本か文章をおかりできませんでしょうか??」


紙の流通が少ないので、本は貴重だ

兄が借りてこれるのも教本ぐらいだ。


「あー、そうか

お前さんが5歳の娘だって忘れていたよ

何か本を用意させよう。少しは文字に慣れるだろう

帰りにマリーから選んでもらえ」


恥ずかしいことではない。

けど、下を向いてしまう


「遅くまで悪かったな。楽しかったぞ

じゃ、明後日ここで待っている」


話し合いが終わった

部屋を出る


ふと、紹介もされず、何も話さないフードの人に目が行く


微動だにしない姿がそこにはある。


彼(?)は、なんだったんだろう??


そんな事を考えながら、家に向かって歩き始めるん

リンデンはマリーさんに沢山遊んでもらったようで

マイクに背負われながら寝ている


「知っていたのか??」


マイクから話しかけられた

何のことか最初はわからなかったが、売られる事だ。と思い至った


「うん」


それだけ言う


そのまま3人と黙ったまま家までの道をゆっくり歩いた。



アッ!!リンデンと買い物が出来なかった(泣)






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