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(いよいよ、今日だ)


朝、起きてリビングに向かう


以前住んでいたハーツ地区から引っ越したのは昨日


契約をしてから、ゆっくりと引っ越しをするつもりだったが

治安の問題で

契約する店から、住居まで用意された

どうやら、ブライアンさんが手を回したらしい


契約してしまうと、周りに発表される事になる

そうするとハーツ地区にいるには、危険が多くなりすぎるらしい

それだけ大きなお金が動くって事なのだろう

庶民には理解できない世界だ


以前の家で使っていたものは、この地区に持ち込むのはダメだしされた

ほぼ身一つ状態での引っ越し

とりあえず仮の家になるだろう。との事で

家具などが付いている居抜きの家を用意してくれ

着るものなども、勝手に見繕って家に運んでくれていた

手配はサンダーバードさんがしてくれたらしい

すっごく助かる。至れり尽くせり。である


ここまで、ギルドを通じて

細かな打ち合わせをしてきた

最初の呼び出しの2日後から始まり

準備に2か月かけた


今日は、これから馬車で古着屋経由で

領主館に行く

貴族の前に出れる服なんて持っていない

購入しても、これから使う予定がない。と、言ったら

古着屋でレンタルしてくれる事になった



ブライアンさんたち冒険者ギルドが全ての契約の下準備をしてくれた


本当に頭があがらない


その際に、知ったのが

ブライアンさんの父親が内務大臣だった

兄が1人と弟1人と男所帯で、それぞれの兄弟たちが法務局と財務局にいた

実家は文官の家だったが、家風に合わず冒険者になったらしい

今回は、その伝手を最大級に使ってくれたみたいだ


ソロバンを扱う商会は、アルト地区にあるインダス商会

老舗ではなく、まだ若い商会長がやり手で、ここ数年で急成長した店だ

免許制度など、新しい商売を始めるのには最適で

この店は教会とも関係が深い、教会の幹部に親戚がいるのだそうだ

マイクがソロバンを教会に持って行ったから、教会も絡ませないと

問題が起きる可能性があるらしい

この世界も忖度があるんだな……


魔法契約は、2点

・ソロバンの独占販売。純利益からライセンス料20年間に渡り払われる

  教会、ギルド、領主、ソロバン家にそれぞれ決められた金額だ

・免許制度確立

  免許はギルドカードで管理

  免許を持つものが有料で他者に指導する時に、権利を持つ者に手数料が払われる 

  権利を持つ者:ギルド、免許発行者、国、教会、領主


魔法契約は権利を侵害するものは、罰を受ける

魔導士によって特別な契約があるらしく

契約に使用する魔道具は効果なうえ、契約を扱える魔導士も少ない

罰則があり、特別な契約の為

領内であれば、領主

国内であれば、国王

の許可が必要らしい

ただ、今回はギルドカードを免許に利用するので、

念のため大陸全てを管理する冒険者の最高機関 冒険者5大顧問の許可も取得した


通常は、ここまで大掛かりな契約は必要ない。費用も莫大になるが

ギルドカードを使った免許というのが初めての事なので

テストケースとして、経費をギルドと国で負担にしてくれた


そうしなければ、一つの商会などでは、払えない金額なのだ


まさに国を動かしたのである




馬車が2台新しい家の前に泊まった

家といっても、マンションのような共同住宅である


前の馬車からエスターさんが降りてきた

正装しているエスターさん。メチャメチャ素敵だ

ブライアンさんがチョイ悪親父だったら

エスターさんは正統派の紳士。


どうやら、一緒に行ってくれるみたいだ


前の馬車にエスターさんとユーガ、私が乗り

後ろに両親、マイク、リンデンが乗る

新しくついたファミリーネーム「ソロバン」家の全員のサインが必要なのだ

両親とリンデンは、名前を書けるように練習は済んでいる

もう、問題はないはずである


「準備を全て終わっている。後は、サインしてくれれば良い

終わった後は、簡単な食事会を用意している

ロビン様も参加されるが

ソロバン家の事は話してあるから、マナーは気にしなくて良いだろう

ただ、王宮から来る者には、近づかない方が無難だろう

誰が来るかは聞いていないが、面倒な貴族もいる。

両親にもよく、言っておいてくれ

質問は、何かあるか??」


意外と面倒見が良いエスターさん

最初の印象と、ずいぶん違う


「質問出来る内容すら、わかりません」


私が答えると、軽く笑って


「まぁ、そうだな。私とブライアンは近くにいるから、何かあれば言ってくれ」


そんな事を話していると馬車は古着屋に到着した

古着屋と言っても貴族のドレスを扱っている店だ

先に選んでおいた服にみんな着替える

私の担当は、中年の女性だ

男性には会わないようにしてくれ、フードもキレイな物を用意してくれた


すでにフード付きが私の標準装備なので

エスターさんも何も言わない


今まで着たことないようなドレスに着替え

フードもターコイズブルーの生地に刺繍がしてあるものを用意してくれた

これはエスターさんからのプレゼントで持って帰って良いらしい

「最初の時の無礼のお詫びだよ」

と、笑ってくれた

本当に紳士である。



着替えが済むと、また馬車に乗る

今まで入ったことのなかった貴族街を通り抜ける

白い壁と赤い屋根で統一された街並みは、そこだけ異質だ

さらに奥へ走らせると、壁に囲まれ、大きな鉄の門がある領主間へ近づいた

こちらは、淡い黄色のレンガ作りのお城だった


車寄せに場所が止まり

外からドアを開けられると

なんと、ブライアンさんが待ってくれていた

その後ろには、領主館で働いている人たちだろうか、お仕着せを着た人たちが並んでいる


「よく来た。

契約の準備は済んでいる

とっとと契約をしてしまおうぜ」


正装してカッコ良いのに……言葉はいつもどうりだ


「ソロバン家の方が慣れてない場所で疲れないように

必要ない儀式は全て取り除いた。安心してくれ」


馬車の中からエスターさんがフォロしてくれた


「はい。ありがとうございます」

ブライアンさんのエスコートで馬車から降りた


後ろの馬車から、両親と兄、妹が降りてくる

みんな緊張で固まっている

促されるままに、屋敷に入る

………両親は並んでいる人たちにペコペコしている


大きな応接室に案内された


待っていたのは、

ソファーに座っていた

60歳前後の男性が3人。40歳前後の男性2人と20歳ぐらいの男性が1人だ


奥には大きなテーブルもある

会食用の部屋らしい


ブライアンさんから


「ここでは、フードを取って良いよ」


と、促された

最初の面会から後は少しずつフードを取ることを許されていたので

抵抗はない

初対面の人も話を聞いていたのか

驚きはしたが、それほどではなかった


それぞれ紹介が始まった


なんと一人は王太子様だった


60歳の方はロビン・アルトバイン侯爵と冒険者5大顧問の一人でハセイン様

契約を行う魔導士でアーサー様

40歳の方が王太子殿下とカイン・アルトバイン伯爵

20歳の方は魔導士のキンドリー様だった


契約が終わるまで人払いしてくれている。のだという


横にいるエスターさんも

王太子殿下やハセイン様が来られる事は知らなかったらしく驚いていた


「さて、紹介は終わったし

契約してしまおう

向こうのテーブルに契約書は用意した

私たちはすでに署名をしておいたから、ソロバン家の方が署名して

アーサー殿が契約魔法をかけるだけだ」


と、王太子殿下が促してくれる


この空気の中から早く逃げ出したい私たち一家は

思わず早歩き状態で、テーブルに向かった


エスターさんから

「内容の確認をするように」

と言われたが、すでに内容は教えてもらっているし

高貴な方々が署名されたものを私たちが不利になろうとサインするしかない


用意された紙の束が2束

その中に契約内容が書かれているらしいが

署名するのは、一番上の紙だけで良いみたいだ


私が一番最初にサインした

羽ペンが人数分用意されていたので、端にあった1本を取って書いた


本当は父からなんだろうけど、待っていたら終わらなさそうだ


2枚とも書くと、不思議な事に羽ペンがなくなった


家族みんなも同じようにサインすると羽ペンが消えた


それを見計らったように高貴な人々が、テーブルまでやってきた


魔導士のアーサーさんが1束を持ち上げた


なにかブツブツ唱えると

契約書が光りながら浮かび上がり、消えていった


それを2度繰り返した


「これで、魔法契約が結ばれました」


アーサーさんが宣言


みな一応に安心したような溜息が漏れた


もし、他の人がすでに「ソロバン」を契約してしまっていたら

アーサーさんに危害が加わるそうだ

領や国だけの契約なら、他と被らないか事前に確認が出来るが

今回は冒険者ギルド全体がかかわるので、

他の国で契約がすでに結ばれてる可能性を排除でてきていなかった


「アーサー、お疲れ様。よくやってくれた」


「ありがたき、お言葉」


王太子の言葉にアーサーが答えた


「さぁ、みんな座ってくれ

ロビン卿が食事を用意してくれたようだ

あぁ、アリア

フードはそのままで良いぞ

ロビン卿の屋敷の者だから、隠さなくても大丈夫なはずだ」


王太子の発言にロビン様は苦笑いする


「今日は、マナーを気にするような方はいらっしゃらないから

ソロバン家の方も楽にしてくれ」


ロビン卿がさらに席を進めてくれる


みな席につくと、なにか合図があったのか

一斉に使用人たちがグラスとお皿を持ってやってきた

アリアの顔を見ると、まな一瞬動きがとまるが、それだけだった


「さぁ、契約に乾杯しよう!!」


王太子が大きく手を挙げると、みな同じようにグラスを掲げた


「「「乾杯」」」


私たち兄、妹にはジュースを入れてくれた

この世界にきて初めてのジュース

本当に美味しかった


運ばれた料理には、それに合わせてカトラリーが一緒に運ばれてきた

最初からセットしないのはソロバン家の事を思ってくれてだろう

スープもカップで出してくれた


王太子殿下は、昔から城を抜け出して王都を探索するのが大好きで

その相棒たちがカイン伯や、ブライアンさんで

なぜか年齢が違うキンドリー様も悪友として参加してたらしい

庶民の食堂を何度も利用していた

だから、気にせず食事をしてくれ………

と、優しく声を掛けてくれる


食事が進んでいくと

それまで、あまり話さなかったカイン伯が両親に話しかけ始めた


「あなたの子供たちは、とても優秀ですね

領主代行として、誇らしい。

あなた方家族のおかげで、領地にも恩恵が与えられた

これから援助は惜しまないよ。困ったら言ってきてくれ」


ここにいる人たちは、身分を嵩にきない

こんな人たちが本当にいるんだろうか


恐縮している両親にカイン伯は続けた


「ブライアンから聞いたが、アリアを売る。というのは本当かね?」


一気に青くなり震えだす両親たち


「彼女は、君たちでは手に負えないのは、今回の事でよくわかっている

今まで守れただけでも、大したもんだ

どうだろう、私の養女にもらえないだろうか??

俺が買った形にして

金は出しても良いが………それは、やめた方がお互いに良いと思うんだ

……俺やアルトバイン家が、あとは引き受けるよ」


優しく労わるように声を掛けてくれる

青くなっていた両親の顔から大粒の涙が流れ落ちてきた


「養女になった後は、そこにいるキンドリー・ハイドの下で魔術を習わせようと思う

彼は賢者と言われていて、王宮の筆頭魔導士だ

神様のお告げ??……で、この森の女性と出会うためにきていたんだけど

どうやら、それがアリアみたいなんだよね」


今度は、わけがわからない事を言い出した


「キンドリーが直接に引き取っても良いけど、彼や魔法がイヤになったら

俺かブライアンのところに逃げてくれば良いよ

その為には、俺の養女になるのが一番良いと思うんだよ」


えっ、それって私の家出先予定の2つじゃない!!

家出しなくてもよくなる??


お願い父さん、母さん頷いて

入る予定だったお金は、私が必ず働いて返しますから!!


食事会場の静まり返った


「………お願いします………」


小さな声で涙ながらに母さんが返事してくれた

そして、売り払う事になった状況を話してくれた


「この子が3歳の時、私の食堂に一緒に連れて行きました

それまでは、兄たちが見てくれていたのですが

2人とも風邪をひいてしまっていて………

家の中でも、器量が良いことはハイチとも話していたんです

でも、連れて行ったとたんに

店のご主人や、客から変な視線が娘に集まって……

次の日に店に行くと、ご主人から『おかみさんには内緒で売ってくれ』と言われ……

前の日に来てた人は自分の雇い主まで連れてきて売ってくれ……

って、私の娘を何だと思っているんだって、最初は怒ったんです

でも話をなかなか聞いてくれなくて

このままだと、悪いことが起きそうで………

だから、言ったんです

あと、3,4年は最低でも待ってくれ!!って、

そうしたら、ご主人は自分よりもお金持ちに売るんだろうと思って。

諦めてくれて………

外に、この子を出したら、きっと同じような事が起きるだろう

だから、家の中でだけ育てようと思ったんです

そうしているうちに、魔法を使えるようになってて………

もう、私たちでは守り切れない。

だから、お金持ちに売って、大事にしてもらおうと……」


つかえながらも話してくれた


私、愛されていたんだ


兄たちも両親の気持ちは知っていたのだろう……


静まり返った部屋の中に、嗚咽だけが響き渡る


「うん。わかった。君たちの対応は正しいと思うよ」


こんどは、王太子殿下が肯定してくれた


「で、どうなんだいアリア

今の話をきいて、カインの養女になるかい??

なるんなら、私が認可を下ろす。そうすれば、君を守る事が出来るよ

町中に君を戻すのは心配だから、このまま屋敷にいて

家族にも何時でも会えるようにしてあげるよ」


スゴイ!!私の全ての希望が備わっている

身の安全、家族との面会……さっきキンドリー様の弟子にもしてもらえる

って、言ってたから魔法の勉強も出来る


「はい。ぜひ、お願いします。

両親だけじゃなく、兄妹の面会も許可していただければ嬉しいです」


王太子殿下とカイン伯が満面の笑顔で返事をしてくれた


立ち上がり父と母に抱き着く

兄たちも私を一緒に抱き合った

……リンデンは机に伏して寝てる。うん。かわいい


「じゃ、カイン、手続きをしよう。アーサーもいるし契約書はすぐに作れるはずだ」


即断即決

素敵です


私は家出をすることもなく

安全安心な場所を手に入れた

魔法だって勉強できる



これで、一件落着

神様ありがとう


最初に妄想した

お金、器量、魔法、運、身体強化、前世の記憶


全て叶えてくれてたのね

貧乏な家で記録が戻った時に

ちょっと【ケチ】って思って、ごめんなさい

出血大サービス


与えてもらった2番目の命

頑張って、楽しみます!!


もう一度言わせて

ありがと~











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