51 勝者の報酬
本当にこんなにも短い時間に色々なことがあった。
やっていた事はカードを当てるゲームだったはずなのに、色んなことに気づかされた時間だった。
「さて皆さんもお帰りになりましたし、あなたにもね」
悪魔はウインクをして見せる。似合わない……。
パチン。
「きゃああ!えっ何?」
「ちょっと悪魔!」
「はい?なんです?」
悪魔は不思議そうに首を傾げる。
「私勝った……のに……あれ?」
右手の甲に青い髑髏のマークがボボボッと出てきた。彼女たちのとは色が違う。まるで青い炎のようだ。熱くもない。
「これって……」
「ええ。何でも望みが叶え放題の力ですよ。忘れてましたか?」
「あっ……」
そうだ!勝ったら望みが叶う力が貰える……本当だったんだ。すっかり忘れていた。
「そうだよ!私たちもつい忘れてたけど勝ったら望みが叶え放題だったんだよ」
「ええ。あなたのその一生、望みが叶いますよ」
正直、意外だった。このでかい悪魔は今までのやり取りを見る辺り、ほんっとうに悪魔だ。
くれるとは思わなかった。まあ忘れてたんだけど……。
「でもいいの?貰っても?」
「別にあげてはいませんよ」
「へ?」
「その力は私と仮契約で結ばれた証。私の力の一部であるその力の行使をあなたも出来るようにしただけです」
なるほどと手をポンと叩くが今の話を聞いて疑問も出てきた。
「何で仮契約?契約じゃなくて?」
「あ、本契約の方がいいですか?その代わり本当に人間辞められますけど……」
「えっ」
その言葉に顔が引きつった。えっ!人間辞める!
「いやいやいや!辞めない!人間辞めない」
首と手をぶんぶんと慌てて振る。その反応に悪魔は少し残念そうな表情をする。
「そうですかぁ?悪魔になるのも楽しいですよ。人間虐められるし、寿命が無くなるので永遠に生きてられるし……」
「いーや結構です!ホント、大丈夫ですから」
悪魔と契約したら人間辞めて悪魔になるってむちゃくちゃだ。仮でもちょっと怖い。
「でもこれで美夢は悪魔さんの望みを叶える力だけ使えるってこと?」
「まあ仮契約って言ってたしね」
そっか……何でもか……。
ふと右手の甲をかざし、青い髑髏を見つめる。
…………。
「ど、どうしたの?美夢?」
何か違う気がする。最初は私、この力でアイドルを目指す再スタートを切れると思ったけど……。
「美夢!どうしたの?」
そもそも何で人生終了何だ?負けたらの理由ならわかるが勝っても人生終了って言ってたな……。
呆然と手の甲を見る私に不審がる2人。声をかけても返事がない。
…………そうか。だから人生終了か……。
なるほどね。うん、そうだよね。私は勝手に自己完結すると悪魔に宣言する――。
「ねぇ悪魔。私ね……この力でアイドルにはならないよ」
そう強く言葉にした。




