13 エリス・メールワルス
エリス・メールワルス。メールワルス家の長女に生まれる。家族構成は父と母、あと3つ離れた兄がいる。
爺は語った……本来、家を継ぐはずなのは兄なのだが、勉学及び魔法の才能がなく、それなのに母に似て傲慢でプライドが高く、挙句浪費家という悪いところしか受け継がなかった。
将来を考えた父は長女であるエリスを家に継がせるよう英才教育を施した。幸い、エリスの方は父に似て勉学も魔法も才能に溢れていた。……性格は若干母似らしい。
だが、ある日事件が起きる。彼女の母は元々、階級の高い貴族だったせいもあって、色々なツテがあった。浪費家の母は莫大な金額で、ある魔法石を購入。
しかし、それは曰く付きの呪われた宝石だった。その宝石を家に飾ってから僅か数時間後に父が死去。兄は難病にかかり、エリスは魔力暴走を起こし大怪我を負った。
さすがにまずいとわかった母はその宝石を捨てたは良かったのだが、元々大量のお金を注ぎ込んでいたツケが響き、息子や娘であるエリスの治療にとお金が底をつき没落していったという。
「――その後、お嬢様は無事にお身体を治されはしたのですが、没落しお金のなくなったこの家には居られないと出て行き、御坊ちゃまもその後間もなく亡くなられたという、ご事情があるのです」
2人は終始無言で立ち尽くす。奈々に関しては涙を流している。
「ですがお嬢様は家族は散り散りになり、借金にまみれても、お家の復興はしてみせると奮闘しておられるのです」
奈々は涙を流しながら鼻声で聞いた。
「それで……ぐすっ……あなたは……そんなお嬢様を……ずっ……見ていられず……側にいてあげてるんですね」
ええ。その通りですと爺はぺこっと頭を下げて答えた。
「なるほどね。つまり、あれだけ頭がキレるのは英才教育の影響か……」
「――ほのかちゃん!」
「な、何?」
目を赤らめ涙でいっぱいにしている奈々が怒る。
「どうして今の話を聞いてそんなことが言えるの!可哀想だって思わないの!」
「いやいや、確かに可哀想だけど、私が聞いたのはあれだけ頭がいい理由とあの狡猾な性格のことをね――」
「ほのかちゃんがそんなに冷たい人だなんて思わなかった!」
と私たちが言い争っていると、爺が止めに入る。
「申し訳ございません。私が余計な話をしたばかりに――」
「いえ!あなたは何も悪くありません!」
奈々は今、感情が抑えられないようだ。
「いいえ。私が悪いのです。お嬢様のご事情を簡単に話してしまった私が悪いのです」
「それに、あのお嬢さんプライド高いみたいだからさ、そんな同情されても多分嬉しくないと思うけど」
奈々は徐々に落ち着いていく。涙も止まっていた。




