07 敗者の末路
悪魔の作るこの空間に沢山の映像が映る。音声はないものの、見るに恐ろしい光景が広がる。
永遠とも思える荒野に女性が1人、まるで誰かを探しているかのように叫びながら涙を流す。その表情は孤独に生き続け絶望しているように見えた。
大観衆の中、女性が1人、十字架にかけられている。騎士たちが次々と槍を女性に刺している。その表情は苦痛に歪み、叫び声が聞こえるかのよう。
暗い一室の中、女性が1人、襲われている。その表情は……。
「………………」
私は茫然とした。……こんな事が永遠に……。
「いやぁ数多の負を食ってきましたが、やはりいい。人間は好きだ。だって、こんなにも上手い負の感情をくれるんだからなぁ」
悪魔はその口からでる長い舌で上唇から唇の先を舐める。その表情、その言葉、その仕草、どれも恐怖へと駆り立てられる。
「……い、いやぁあ……嫌だ……そんなの嫌よ!」
私は崩れる。両手で頭を抱え、震える。倉田は茫然とその景色を眺めている。目の焦点が合っていない。エリスは下に俯いたまま震えている。爺の袖を強く握りしめて……。東堂は少し下を向き、目を閉じている。多分、この中で1番冷静だ。
「ちなみにこの空間の中で死んでも契約はしてもらうからそのつもりで」
「……どうゆう……意味?」
たまにいるんですよねぇと答えると……。
「死ねばこの罰は与えられないだろうって奴。ここは私が作った空間で私が支配者。そもそも表明した奴がここから出るには私と契約せねばならないと言うのに」
契約?と尋ねると……つまりはこうゆうことだ。
ゲームの勝者は悪魔と仮契約をして望みを叶える力を……敗者には魂に呪魂契約をして不幸に堕ち、負の感情を排出し続ける燃料タンクになるということだ。
「……つまりその契約を賭けて私たちに勝負しろってこと?」
「はい。その通りです」
逃げ出すにも逃げ出せない。だからと言ってゲームで勝てるかもわからない。
同じことを考えているのだろう、3人は表情がどんどん悪くなる一方、1人だけ随分と楽しそうだ。
東堂はフッと笑い……。
「面白い」
と言った。その発言を聞いたエリスが東堂に怒鳴り込む。
「み、美夢……」
ほのかと奈々もこの世の終わりのような顔で同情する。そんな恐怖がこの空間を支配する中、悪魔が言う。
「大丈夫ですよ皆さん。勝てばいいんですよ!勝てば!1人はデメリットどころか望みは叶え放題ですよ」
「……そ、そうか。勝てば良いのですよね。勝てば」
「ええ!そうですとも。負ける心配など無用。勝てば問題無しです」
だが、それでも思う事はある。
「でも、1人が勝てば他の人は――」
「そんな余裕あるんですか?」
私の意見にあっさり入って切り捨てる。
「じゃあ何です?他の人に不幸に堕ちてほしくないから、自分は堕ちるんですか?」
「……い、いや、そうゆう訳じゃ――」
「でっしょーー!ここにいる皆さん、望みを持ったからここにいる。だったら存分に戦いましょ!潰し合いましょ!堕としあいましょーー!キャッハハハハ」
……覚悟を決めよう。勝ったら天国、負けた地獄。こんなの物語だけのものだと思ってた。
でも、この現実は私に突き付けられたものだった……。