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人生終了ゲーム 〜リバースカード〜  作者: Teko
1章 佐藤 美夢
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02 続 私の日常

 

 ――五月も下旬。あいも変わらずな日常を過ごす私は学校で友人たちと、二つの机をくっつけて三人で囲んでの昼食。


 どこにでもいるような女子高生の風景。アイドルを目指している女の子の風景ではない。


「最近どう?」


 ぽっちゃり体型の友人の一人、相沢 ほのみがこう話し出す。


 私は自分で作った弁当の玉子焼きを箸で摘み――。


「……いつも通りだよ。何も変わらない」


 ――そう答えた後、パクっと口にする。こっちに来てから自炊して随分上手くなったなぁと心の中で自画自賛。


 料理の腕前が上がること自体は将来的には良い事だが、今はそこを求めてはいない。


「いつも通りって、あのスケジュールこなしてるの?」


「大したことじゃないって……」


 私のことを知っている友人たちは驚いてみせる。


 学校側は勿論、学校生活にも影響が出ることもあるだろうからと知ってはいるが、周りの人にはあまり言っていない。


 何分、所属しているだけで、活動自体は全然していないのだ……言える訳もない。


「いや、それでも美夢ってすごいよ。やっぱりトップアイドル目指すには努力、努力なんだね!」


「だから、そんな大したことじゃないって。トップアイドルって、活動もしてないよ」


 こう私を褒めてくれる彼女は金子 奈々。黒髪ロングの可愛い女の子。


 この学校は共学。奈々は性格も天然な部分もあるせいか、アイドル志望の私より男子受けがいい。


 この()こそアイドル目指せばいいのにって時々思う。


「奈々も可愛いんだからアイドルとか目指せば?ここにコネもいるし……」


 皮肉混じりに箸で私を指して見せるほのかに、行儀が悪いのとコネの話のどちらも注意する意味のツッコミを入れる。


「コラコラ、やめなさい」


「――わ、私がアイドルとか無理無理!」


 咄嗟に両手でぶんぶんと振ってみせる。この仕草も可愛い。


 冗談だよとほのみはハンっと笑い、コンビニから買ってきたであろうカツサンドを食べ、口をもごもごさせながら雑談を始める。


「だって美夢が行ってる事務所ってめちゃくちゃ売れてる人多いけど、その分、厳しいでしょ?美夢、最初出会ったときなんか酷い顔してたよ」


「……あれは酷かったね」


 二人が私の事務所のことについて、私の入りたての当時の様子から語る。


 私が所属している事務所はその業界では五本指に入るほどの大手事務所。


 練習生とは言え、時たまに思う……なんで入れたんだろうと。


「もう慣れたよ。それに結局レッスンしかやってないし……」


「仕事貰えないの?」


「うん……」


 答えずらそうに頷くと、ほのみがそんな顔すんなと背中を強く叩く。


 でも、この一年、何もないというのは焦りも感じている。


 一生懸命、真面目にレッスンだって頑張ってるし、一日だって休んだこともない。


 なのにどうして話がこないのだろう。


「……何がいけないんだろ」


 ギシッと椅子の背もたれにつく。奈々は大丈夫、大丈夫と両手をグッと握り締めて励ましてくれた。


「大丈夫っ!今までの努力が実を結ぶ時がきっと来るよ!」


「……だといいんだけどなぁ」


「まぁ、なるようになるって……」


 不安な将来を抱えたまま、他愛のない女子高生の日常を送る。


 私のスケジュール表には相変わらずアイドルらしい事は書かれていない。


 只々、日頃の不満を垂れ流すだけの私のつまらない日常風景――。

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