05 望み
「状況の説明が欲しいですわね。悪魔さん?」
腕を組み、キッと睨む。
悪魔はまあまあという仕草をすると答えた。
「するために出てきたんですからしますよ。ちゃーんとね☆」
「その……人を小馬鹿にする態度、何とかなりませんの?」
「なりましぇーん!キャッハハハハハハ」
イライラするが、そうも言ってられない。こんな訳の分からない場所にずっとというわけにもいかない。
「とにかく説明、お願いしてもいい」
「はいはーい。コッホンッ」
悪魔は私の方へ向くと説明を始めた。
「ここは私、悪魔が支配する空間でその石は私とあなた達を繋ぐ……そうですね、通行証とでも言っておきましょう」
「石ってこれの事?」
右手の石を差し出して見せる。ほのかと奈々、爺を除く、他の人たちも自分たちの石を見る。
悪魔はそうそうと頷くと……。
「そして、石を持ち、参加表明していただいた皆様でゲームをやっていただきます。」
「……ゲーム?」
「……人生終了ゲーム」
私は広告を思い出す。確かにそんなことが書かれていた。
「ちょっと待ってくださいな。私は望みの魔人を呼び出す儀式をしたのよ。ゲームだなんて聞いてないわ」
「ええ。言ってませんもん」
「はあぁ」
確かにさっきみんなの事情を聞いたと時、それらしい説明があったのは私と東堂さんくらいだ。
「……じゃあ、望みが叶うおまじないっていうのは、嘘なの……」
わなわなと倉田さんが青ざめながら語る。それを聞いてエリスちゃんも……。
「冗談じゃありませんわ!私にはやらなければならないことが――」
「望み、叶いますよ」
刹那。私たちの表情が変わる。
「あなた方の望み、ぜーーんぶ叶いますよぉー」
小馬鹿にする言い方だが、聞かずにはいられなかった。
「例えば……没落したお家の復興や治らないと診断された足を治すとか」
2人の目が輝いていく。
「……あとはアイドルにだってなれますよ」
――心の中は落ち着いてなどいなかった。
叶う!アイドルになれる!私の憧れたあの輝く存在に――。
「ええ!なれますとも!できますとも!何でもかんでも叶え放題!」
「叶う!我が家の復興が……爺!」
「本当に叶うの……もう諦めてた……歩くこと、走ること!」
「なれる!アイドルに!ずっと憧れてた、アイドルに!」
3人は喜び、望みを口にする。だが1人、仁王立ちする彼女は言い放つ。
「ゲームをするということは1人しか叶えられないのではないか?」
「!!」
「ええ。その通りです」
悪魔はニヤリと笑った。
「石をお持ちいただいた皆様でゲームで争っていただき、勝った人のみが望みを叶えられます」
4人の表情が変わっていく。……望みを叶えられるのは1人だけ。
人生終了ゲームの幕が開けようとしている――。