03 話が合わない
「貴方……今、望みと言いましたの?」
そのつり目に力が入る。キッと倉田を睨む。
「えっ、ええ。言いましたよ」
「じゃあ、あなたたちもあの広告を見てきたの?」
私が話に割って入る。だが、他3人は不思議そうな顔する。
「広告って何の話ですか?あたしは望みが叶うおまじないをしてみただけで――」
「はぁ?おまじないって何の話ですの?私たちは望みを叶える魔人の召喚儀式をおこなったんですのよ」
「しょ、召喚?儀式?」
「そうですわ。それが逆流してここに来たのかと……」
何だか話がめちゃくちゃだ。おまじない?召喚?何を言ってるんだろう。
そこの道着姿のお姉さん、東堂さんにも聞いてみた。
「ん、私か。私はそこの娘と一緒だ。面白い勝負が出来ると広告があってな……」
「は……はぁ」
ニヤリと楽しいそうな表情を浮かべた。ダメだ。この人は別の意味で通じなさそうだ。
ほのかがエリスちゃんに問いただす。
「さっき事情は知らないって言ってたじゃない。召喚だか何だか知らないけど、私たちを巻き込んだのは貴方達なんじゃ――」
「それはこちらのセリフですわ!まじないだか広告だか訳の分からない干渉があったからではなくて?」
話が噛み合わず、2人は言い争いを始めてしまった。
黒い空間、話の合わない人たち、望みが叶うと言い広告、色々あり過ぎてこんがらがってきた。
「み、皆さん!ちょっと落ち着いて!」
ビクッと私たちは反応する。その声の主はぷるぷる震えている奈々だった。
「……こ、こんな状況だからこそ、落ち着きましょう」
「……ご、ごめん」
「フン」
この中で1番、怯えていた彼女が仲裁するなんて……私も目をパチクリさせて彼女を見た。
「ありがとうございます。金子様でしたか。本来なら私がお止めせねばならぬところを……」
丁寧に爺が話した。そうだよね。ここは冷静に……。
「奈々、ありがとう。……みんな、とりあえず状況整理、確認をしよう」
その通りだと沈黙の了承を頂いた。
コホンッと咳き込み、私から事の事情を話した――。
「――つまり、皆様方、別々の方法でここへ来られたと……」
「事情を聞く限りはそうだね……」
簡単に説明するとエリスちゃんは召喚儀式、倉田さんはおまじない、東堂さんと私は似た広告でここへ来たようだ。
……途中で気付いたが、どうやらエリスちゃんとこの爺って人たちは私が知っている世界から来たわけではなさそうだ。
「でも、結局ここがどこで何なのか、分からずじまいですわね」
「そ……そんな。じゃあどうすれ――」
「キャッハハハハハハ」
ビクッと反応する。あの時の笑い声だ。
「キャッハハハハハハ」
甲高い声で私たちを嘲笑う。
「キャッハハハハハハ!皆様方〜〜ごっきげんっよぉ〜〜。キャッハハハハハハ」
……私たちの目の前に……いや、上から現れたのは赤と黒のチェックが印象的な巨大な魔人だった……。