12 広告
「はぁぁー、そんな事があったの。そりゃ寝込むわ。」
「……私だったら泣き崩れそう」
「……いや、実際泣き崩れたよ。私」
「…………」
私は全部話した。クビになったこと、後輩が劇的デビューを果たしたこと、それを見て絶望したこと。
改めて思う。情けないし、惨めだし、見っともない。
「そりゃあ、やり手社長さんにもやり方ってのがあるかもしれないけど、豚は言い過ぎでしょ!ぶん殴ってやりたい!」
「や、やめなよ〜」
ほのかはまるで自分の事のように怒ってくれた。
「でも、社長の言うこと、その通りだと思う。私、周りに甘えてばかりで……」
「そ、そんなこと言ったら私だってそうだよ。お父さんやお母さん、お兄ちゃんに頼りまくってるよ」
「まぁ、奈々の場合、ぽーっとしてるからね。ほっとけないんでしょ?」
「そ、そんなことないよ!」
ふふっと笑った。少し前はあんなに苦しかったのに、今はそんなことがない。少しずつ心が晴れていく気がした。
「で、別のとこでアイドル目指すの?」
「うーん、とりあえずは保留かな……あそこ以外、落ちてるし……親には何て言われるか分からないし……お金だってないからバイトも……」
気がした、気がしただけ!問題は山積み!ぐちぐち言っていると……。
「だぁーもぉ、やめやめ。パァーッと遊ぼうよ」
ガタンッと椅子から立ち上がる。
「で、でも、私お金が……」
「それぐらい出してあげるって」
ドンっとほのかは自分の胸を叩いた。
「そうだね。思いっきり遊べば気分も晴れるよ」
「じゃあ、やっぱりストレス発散を兼ねてカラオケが定番よね」
いい友達を持ったよ。私!
「そうだね。カラオケだったら食べたり飲んだりもできるしね」
「そうと決まれば、早速どこか安くて長く遊べる場所探すか」
ほのかはスマホを取り出し、片手で画面を叩く。
「でも、いつにする?私はバイトも今、休みにしてるから大丈夫だけど……」
「えっ……今日でしょ?」
「いや、今日でしょ?」
2人は何でそんなこと聞くのって表情でこちらを向く。
「だって、そんなに辛い思いしたんだからさ。早く元気になってほしいよ」
「そうだよ。遠慮なんて水くさいよ。友達でしょ?」
本当にいい友達を持ったよ。私!!歓喜周り2人の手を取り……。
「ありがとう!2人とも!」
「礼なんていいって言ってるだろ?」
「うん!」
ほのかは色々探しているようだ。ここはちょっと高いなぁとかここは安いけど遠いなぁとかぶちぶち言っている。……あとは広告のことも。
「ああ、広告、邪魔」
皆さんもネットサーフィンをしていたら、1度は思ったこと、ありませんか?広告がしつこく出てくること。
「あ、ああもう!」
どうやら不意に出てきた広告に触れたらしい。ほのかは見た目通りって言ったら失礼だけど、指が太い。
「ん?何これ?」
「どうしたの?ほのかちゃん?」
この不意に触れた……いや、本当は不意ではなく、運命だったのかもしれない。
私の「運」を試されるこの世のものとは思えぬゲームの幕開けとなる。
「"人生終了ゲーム"だって」




