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人生終了ゲーム 〜リバースカード〜  作者: Teko
1章 佐藤 美夢
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01 私の日常

 

「――ありがとうございました」


 栗色の髪のふんわりとしたショートヘアの童顔の可愛らしい小柄な女の子が営業スマイル。

  コンビニの出入り口の際に鳴る軽快な音が響く。


 私はレジ打ちを終え、品出しの続きをしに戻る。

 今出しているのはカード付きの食玩。そのパッケージには、華やかなアイドル達が笑顔で写っている。


 BGA48ウエハース 全四十八種+三種シークレットと表記されている。


「こんな事しに東京に来たわけじゃないのに……」


 不満を口にしながらもガサガサと物音をたてて作業を続ける。


 私、佐藤 美夢は田舎から出てきた何処にでも居る上京してきた高校二年生。夢はアイドル、よくある話だよね。


 とあるアイドルグループに所属しているのだが、なかなか成果が出ない。だからコンビニでアルバイトをしている。


 また、軽快な音が鳴った。


「――いらっしゃいませ」


 笑顔で明るく振る舞う作り笑顔の先に考えていることは――いつまでこんな事、続けるのかな?


「はあ……」


 お客さんに気付かれないくらいの小さなため息を漏らしつつも残りの品出しも手早く済ませる。棚に商品をいっぱいにして残った商品が入った段ボールを手に裏へと戻す。


「すみません……」


 レジに人がいないのかと不満げな声で呼びかける客。


「――はい、お待たせしました」


 客に呼び出されレジを打つ。手馴れた手つきで次々と商品を手に取り、バーコードを読み取る。


「五百八十九円になります」


 菓子パン二個と飲みものなら大体これくらいだろう。お客さんはサッと千円を出す。


「四百十一円のお釣りになります。ありがとうございました」


 代わり映えのないコンビニでのお仕事。


 地元でも出来るような味気ない仕事に今度は、もう少し大きなため息が出た。


「はあ……」


 ――アルバイトが終わり、着替えを済ますと、スマホを片手に歩き出す。まずはメールを確認する。


 ……特に何も来ていない。


 現在、時間は二十二時。東京という都市はすごい。通り過ぎる人の数、街を照らす街灯はこんな遅い時間とは感じない明るさ……田舎ではあり得ない光景だ。


 この煌びやかな都会には成功を求めてくる人が多いのだろう。田舎の友達も上京したいと言ってたし……。


 私も夢を追う人ではあるのだが、最近、自信損失気味である。


 大手アイドルグループの採用を貰って、親の反対を押し切り、東京に来てみればこのざまだ。


 憧れを抱き、胸を高鳴らせていた頃の私は何処へやら、平凡で流れるような刺激のない毎日。


 アイドルのいう職業はそう楽ではないとわかってはいたが、それでも考えが甘かった。


 自分以外にも個性的な()達が沢山いて、私という存在が埋れてしまっているような感覚。


 元々、引っ込み事案な性格の私が個性をアピールすることも出来る訳もなく、現在に至る。


 東京に住むために溜め込んだ貯金を崩しながら学校へ行って、レッスンを受けて、アルバイトへ行く。


「はあ……」


 決まった流れをするだけの刺激のない日常。これが私の今の日常だ。

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