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「そのパン、おいしそうだね! お姉ちゃん、ここに新しく来た人だよね?」
「ええ、そうだけど。あなたは私のことを知ってるの?」
「うん! ずうっと探してたんだあ。やっと見付けたよ」
「探してた?」
「うんうんっ。私はティエラっていうの。アサネ、私とお話ししようよ。だめかな?」
「えっ、どうして私の名前を?」
「フフフ、どうしてだろうね、なんでだろうね。でもとりあえず歩きながら、ね? ほら!」
「あ、ちょっと! 急に手を引っ張らないで!」
「いいからいいから! そうだ! せっかくだから私がこの街を案内してあげる!」
四月五日、午後三時頃 どこかで行われた他愛もないやり取り。