第八話 ゴブリン退治
勇者らしいことをします。
ガルド達が勇者に追いつき、到着した頃にはもう終わっていたようで、勇者は村長らしき人と話し、ダンは怪我人を運んでいた。
何かに襲撃された跡が残っており、斬り殺されたゴブリンの死体があったことから推察するに、
「ゴブリンに襲撃されたのか…」
「ようやく来たか」
勇者がこちらに気づき、話しかけて来た。
「ゴブリンに連れ去られた女性がいるようだ。助けに行くから早急に準備しろ」
口調と表情が普段とはまるで別人のように違った。
「わかった」
いつもならさん付けで敬語だった。だが、そんな疑問が湧く前にガルドは自然と答えていた。
「エレナは怪我人の治療を頼む」
「わかりました!」
エレナはすぐに馬車から出て怪我人の所に向かう。
「セリカはどうした?」
セリカの姿が見当たらないことに気づき、尋ねる。
「逃げたゴブリンの後を付けて拠点を見つけてもらった。今はその拠点の偵察に行っている」
手を回すのが早かった。
「セリカが帰って来たらミーティングだ」
「村を作っているか…。上位種がいる可能性があるな」
「あぁ、その上位種が一匹だけならいいが」
アルカの呟きに答えたガルドの表情は険しい。
「見たところ、村の中央に大きい建物があった。そこに上位種はいると思う。捕らわれた人はその近くにある建物にいるようだった」
地面に簡単に書かれた図をセリカは指差した。
「……別々の場所から襲撃する。私達は派手に暴れて気を引きつけるから、その間にセリカとエレナは捕らわれた人を保護し、避難させてくれ。無事避難が終わったらゴブリンの殲滅に移行する。一匹残らず殺し尽くすぞ」
そのアルカの言葉にゾクッとパーティーメンバーの背筋に悪寒が走った。
ミーティングでは上位種は基本アルカが殺ると言っていたが、状況次第では別に殺っても構わないとは言っていた。
またメイについてもすぐに決まった。
「私はどうすればいいの?」
後衛のメイはアルカ達と一緒に暴れるのは難しい。だからって魔法という強力な攻撃手段を使わないのももったいない。
「ガルド、メイの護衛に付け」
「はぁ!?」
目を合わせた2人はしばらく無言だったが、
「ちっ、仕方ねぇ。やるよ」
ダンでは護衛は無理だろうと2人は判断したのだ。確かに実力はあるが、護衛の経験が少ない。守りながら戦うというのはなかなかに難しいと2人は理解している。ただ戦うのと守りながら戦うのとでは勝手が違うのだ。だが、ガルドは傭兵なので護衛の経験がある。
それらをわかっていたガルドは渋々ながらも引き受けた。
ガルドがあっさり折れたことにダンは驚いた。
「合図はメイの魔法だ。それを合図に一斉に村に侵入、捕らわれた人の避難が終わり次第、殲滅に移行する。いいな?」
アルカの最終確認にみんな頷く。
「配置に付く。メイ、合図頼むぞ」
「わかってるわよ」
それぞれが配置に付き、メイの魔法が打ち上がり、作戦が開始された。
派手な魔法が打ち上がったと同時にゴブリンの村に突入した。
「とりあえず目に付いた奴から片っ端から斬る!」
聖剣を取り出し、アルカは派手に暴れ回る。
聖剣はまるでバターを切るみたいな切れ味で、振るった次の瞬間にはゴブリンは真っ二つに分かれた。
聖剣と防具の性能と勇者の称号を貰った際の効果は実戦にて確認していたが、やはりこれは
「オーバーキルだな」
やりすぎ感が否めない。
横目で救出されて行くのを確認し、派手に暴れていたのをただ的確かつ迅速に殺す動きへとシフトした。
「オォォォー!」
咆哮が轟いた。
「オマエラニンゲンハコロス!」
言葉を話せるのか…。つまり、こいつが上位種!
確かに他のゴブリンに比べて一回り大きいが、ただそれだけだ。
「殺すね〜。もう無理なんじゃないかな?」
次の瞬間には首を斬られていた。
「アッ…?」
だが斬られたことにも気づかず、事切れた。
「後は殲滅するのみか」
もはや単純作業だった。
チラッとダンが見ると、勇者は圧倒的な力で殲滅していた。
救出されるまでの動きはただ暴れていただけだったとわかるくらいにその後の動きは段違いに違った。より的確に、よりスムーズにゴブリンの首をはねていた。ゾクッとする鋭さだった。
「あれが勇者…」
神に選定された者の実力。今までの旅の中でも彼女の戦闘は見てきた。だけど、時折感じるこの畏怖は国王にも勝るものだった。
剣を持つ手に力が入る。
「この旅で僕はもっと強くなってみせる!」