第四話 それぞれの印象
顔合わせ後の話です。
パーティーメンバーから見たそれぞれの視点です。
メイは王城の廊下を歩きながらパーティーメンバーについて考えていた。
ダンとセリカが選抜されたのはわかる。王宮でも有名で、その実力の噂は研究室に引きこもっている私でも聞いたことがある。
あのむかつくガルドという男や神官のエレナと名乗った女もそれなりの実力はあるのだろう。
だけど、あの勇者のアルカ。あれはわからない。神に選定されたらしいけど、何であれが勇者として選定されたのか理解できない。
「別にあの勇者が使えなくても問題ないわ。私が魔王を倒せばいい話。そして、あいつらに私を認めさせてやるんだから!」
「おう、ダン。顔合わせはどうだった?」
帰って来て早々、同僚から興味津々で尋ねられた。
緊張していたので素っ気ない態度になってしまったと後悔し、反省した。
「勇者に会ったんだろう?」
「あぁ」
よくわからなかった。聞いていた通り、白髪に赤い目と変わった容姿だったが、魔王を倒せそうには見えなかった。
ガルドという男は気に食わないが、高い実力を持つのはわかった。
メイ殿やセリカ殿の噂は聞いているし、その地位が実力を示している。
エレナという女性は神殿から来たのだからそれなりの実力を持つのだろう。あの様子では不安だが。
「あれ?もう顔合わせは終わったのか?」
「はい」
帰って来た先輩が話しかけてきた。
「そうか。まぁ、頑張れよ。期待してるぞ」
「はい、期待に添えられるように頑張ります!」
問題ない。あの勇者が弱くても僕の剣技で斬ればいいだけの話だ。
「はぁ〜…、魔王討伐って聞いてたが、子供じゃねぇか。メイとダンと名乗った奴らは駄目だな。実力があるだけだ。エレナという女も論外。セリカという女はかなりの実力者だが…。問題はあの勇者だ」
ガルドは粗暴に振る舞っていたが、しっかりとパーティーメンバーの実力を見極めていた。
だが、あの勇者だけは読めなかった。そんなことは初めてだった。実力差があったとしても自分より強いぐらいはわかる。だけど、まったく読めなかったのだ。それが何を示しているのか…。
「実力差がありすぎるのか?それとも…」
実力を隠してる?
ぞっと背筋が粟立った。
「実力を読ませない領域にいるってことか?」
ありえないと思う。信じられないし、信じたくない。だが、もしその予想が当たった場合、あの勇者は魔王を倒せるかもしれない。だから、神に選定されたのではないか?
そうであってほしいと、そうであってほしくないと相反する気持ちが両立する。
「勇者か…。思った以上に化け物らしいな」
にやりと笑みを浮かべた。
エレナはアルカさんに送ってもらい、神殿の中の自室に戻る途中で司祭様に会った。
「顔合わせはどうでした?」
「無事終わりました。みんな強そうな人でした」
「勇者はどうでしたか?」
「優しい人で、いろんなことを教えてもらいました。すごく物知りでセリカさんと薬草について盛り上がってたんですよ」
「それはすごいですね」
「ただ…」
気になることがあった。
「ただ?」
「あっ、いえ…、その…、あまり空気が良くなかったんです。みんな個性的な人達ばかりで…仲良くなるには時間がかかりそうです」
「そうですか」
ただ、勇者のアルカさんは不思議な人でした。何かこう…、食い違っているような…、ちぐはぐで…、そう何かがずれているように感じました。
こんな感じで魔王討伐なんて本当に大丈夫なんでしょうか?
でも私、アルカさんの役に立てるように頑張りますから!
「……よくわからなかった…」
こんなことは初めてだ。
セリカは初めての経験に戸惑っていた。
いつもならある程度は実力が読めるはずだ。実際、他のパーティーメンバーの実力は大体把握した。
ガルドは粗暴に見えて隙がなく、かなりの実力者であるとわかった。
ダンは若く、未熟の一言に尽きる。逆を言えば伸び代があるということだ。
メイは迷走しているように思える。周りに気を使って、自分を見失っているように感じた。
エレナは治癒魔法の随一の使い手だと聞いているが、世間知らずでこれからが不安だ。
だけど、あの勇者はいろいろとおかしかった。年齢に似合わず、聡明で博学だった。外面と内面がアンバランスだったと思う。
「あれが神に選定された勇者か…」
これからの旅で見極めればいいか。