第三話 顔合わせ
魔王討伐のパーティーメンバーが勢揃いします。
このメンバーを中心に話が動きます。
「はぁ?魔王討伐って聞いてたが子守りかよ」
部屋に入って来た大柄な男がメンバーを見て、すぐに顔をしかめてそう言った。
「その言葉そっくりそのまま返すわ。こっちこそ、おじさんの面倒なんてごめんなんだけど」
その言葉にすぐに噛みついたのはローブを羽織った小柄な少女だった。その可愛らしい容姿からは想像もつかない毒舌が出てくる。
「何だと?くそ餓鬼が舐めた口利いてんじゃねぇぞ!」
「さすが傭兵。まるで山賊のようですね」
口を挟んだのは気品のある少年だった。傭兵と同じく鎧を付け、腰には剣を提げている。
「あぁ!?」
「あの、喧嘩はやめましょうよ!これからパーティーを組むメンバーなんですし」
止めに入ったのは神官の服装をした少女だった。
「ちっ…」
大柄な男は黙る。
今日はただの顔合わせだけど、初対面からここまで空気が険悪とは……。
これは厳しくない?不安要素しか感じないんだけど…。
こちらをあまり快く思ってない神殿の人はパーティーメンバーとの顔合わせがあるとしか言わず、詳しい情報は何もなかった。
視線が集まっていることに気づき、口を開いた。
「私が勇者のアルカです。よろしくお願いします。今日は顔合わせなので自己紹介をしたいと思います。私から右回りでお願いします」
「近衛騎士のダンだ。このパーティーでは前衛を担当する。見ての通り剣士だ。よろしく頼む」
ぶっきらぼうに自己紹介をしたのは私と同い年ぐらいに見える金髪碧眼の少年だった。
「宮廷魔術師のメイよ。後衛だからちゃんと私を守ってちょうだい。精々、足を引っ張らないでよね」
ふんと高圧的に自己紹介したのは青い髪に水色の目をした少女だった。
小柄で華奢だが、本当に旅ができるんだろうか。おまけに最後の言葉は私に向かって言われた。だけど、それはむしろ私が言いたい。
本当に大丈夫なんだろうか…。
「宮廷薬剤師のセリカ。遊撃。薬草や罠、偵察など何でもこなせる。よろしく」
端的な自己紹介をしたのは栗毛に緑色の目をした少女だった。
壁に寄りかかり、それきり黙り込む。
「傭兵のガルドだ。前衛を担当する。武器は大剣や斧、槍を使う。てめぇら、俺の足引っ張るんじゃねぇぞ」
それを聞いたメイとダンの空気が険悪になる。
「神殿から来ました神官のエレナです!」
慌ててその間に入ったのは金髪に青い目をした少女だった。
「治癒魔法を得意としています。強化といった補助も行います。よろしくお願いします!」
ぺこりと頭を下げた。
毒気が抜かれたようで空気が軽くなる。
だが、再び視線がこちらに突き刺さる。
「ここはお互いのことを知るためにもまず一緒に食事でも…」
「帰るわ」
いきなり立ち上がったのはメイだった。
「えっ?ちょっと待ってください!」
エレナが引き止めるが、
「今日は顔合わせでしょ?自己紹介もしたし。自分の役割をきちんとこなしていれば問題ないはずだわ。これ以上馴れ合う気はないの。じゃあね」
さっさと出て行った。
「じゃあ、僕も帰るよ。では後日」
颯爽とダンは出て行った。
「俺も帰るわ。餓鬼に付き合ってる暇はねぇんだ」
そう言ってガルドも出て行った。
……あいつら…!非協力的だな!
プルプルと拳が震える。
はぁ〜…、本当に大丈夫かな〜?
「あの…、一緒に食べに行きましょう!」
「……そうですね。セリカさんもどうします?食事行きますか?」
残ってくれたということは期待していいんだろうか。
「行く」
とりあえず2名はこちらに協力的か…。うん、2人もいるんだ。ここは喜ぶところだよね。
「じゃあ、行きましょう」
食事に行ってわかったこと。
エレナさんは神殿でずっと育ってきたため、外にあまり出たことがないらしく、ふらふらとしていて危なっかしかった。つまり世間知らず。素直で穏やかな性格だが、天然だった。ちなみに16歳だった。
セリカさんは基本無言。話しかけたら答えてくれるが、必要最低限しか答えてくれなかった。だが、動きに無駄はなく、かなりの実力者だろう。私を観察していたし。こちらの実力を測り、見定めてた感じだったな。見た目で判断しないところはポイントが高い。ちなみに20歳だった。
結論、不安要素しかない。実力はあるのだろうし、こちらに協力的だが、それでも安心できない。
「やっぱり断れば良かった…」
心底、そう思ったアルカだった。