第二十話 討伐準備
アルカ、笑顔です。
ちなみにアルカ本人は戦闘中毒者とは思っていません。
「動きが遅い!もっと考えて動け!」
アルカは怒鳴りつける。
「はい!」
複数の兵士相手に流れるように動くアルカだが、これだけ動いても汗一つかくことはない。
「その目配せ、次の攻撃が読まれるぞ!フェイントも入れろ!」
「はい!」
兵士達の弱点を指摘し、指導するのがようやく終わった。兵士達全員が徹底的にアルカにしごかれたのだった。
「僕の指導はまだまだ甘かったんですね」
ダンはあの壮絶な訓練を見て顔が引きつる。騎士団の訓練も厳しかったが、アルカの訓練はそれ以上である。あまりの的確な指摘に心が折れそうになるが、適切な指導を受けたおかげでめきめきと上達したのも事実である。
「そうね…」
あれがいかに異常な光景かさすがに畑違いのメイでもわかる。
「さすがアルカさんですね」
にっこりと笑うエレナだがあの異常さがまったくわかってない。
あれだけの数を相手に勝ち続けていた、その余裕な姿にみんなこう思った。さすが勇者だと。
「弱い。相手にもならない。面白くない」
期待はずれだとアルカはがっかりとしている横ではぜぇはぁと息の荒い兵士達が死屍累々のようにぶっ倒れていた。話すことすらもできないようである。
「お前が異常に強いんだよ。だからこそ勇者に選定されたのかもしれんが」
兵士達へと指示を出し終わり、訓練場に顔を出しに来たランガはその状況を呆れた顔で眺めていた。
「おう、何だ。もう終わったのか?」
輝いた顔のアルカを見たランガの顔が引きつる。
「いや、それがまだ…」
「ランガ、相手しろ」
有無を言わさず、アルカは木剣を構えた。
「はい…」
逃げられないことを悟り、ランガは項垂れた。
「楽しそうですね〜」
エレナは笑ってアルカとランガの試合を眺める。
アルカはエレナの言う通り、楽しそうに笑っていた。
「戦闘中毒者かよ」
ガルドは呟いた。
それなりのいい試合をしているが、明らかにアルカは手を抜いていた。事実、ランガは必死にアルカに付いていっている。
ふとガルドは思った。アルカが全力だった時はあるのだろうか、と。
本気の時はあった。でも、全力の戦闘を今まで見たことがないのではないか。
魔法だってあれ以来戦闘では使っていない。あの時はダンが危うかったから使っただけなのだろう。アルカが危うい時など今までなかったのだ。
魔法も併用したら今よりさらに強くなるのは間違いない。
アルカは子供達やダンに魔法を教え始めていた。今はまだ基礎しか教えていないが、いずれは俺を越すかもしれない。
「魔法か…」
未知の力。未知の技術。もし俺が魔法を使えるようになったらもっと強くなれるのだろうか?
「アルカ、ユリウス様。盗賊について情報を得ましたよ」
ランガはユリウスとアルカがいる部屋へとノックして入る。
「本当!?」
「やっとか…」
前者は嬉しそうなユリウス、後者は遅いと顔に書かれてたアルカである。
「えぇ、捕らえた盗賊が吐きました。セリカ殿、薬ありがとうございました」
「いえ」
机の上に地図を置き、説明する。
「盗賊の拠点はここら辺で、人数は30〜40人程度。頭領と呼ばれるリーダーがいます。強奪した商品は頭領が流しているそうです」
「つまり頭領の後ろに誰かいるってこと?」
「闇市に流しているんでしょう。頭領は生け捕りね。ランガ、準備が終わり次第、盗賊を討伐するわよ」
「了解」
早急に準備がされ、勇者パーティーと領主の部隊の合同で盗賊の討伐に向かうことになった。
「お前、聖剣は使わないのか?」
ガルドはアルカを見て驚いた。兵士達と同じ剣と鎧を付けていた。
「勇者として討伐する訳ではありませんので。個人的な事情ですし」
「いや、でもなー…」
ガルドの言葉を遮ったのは子供達だった。
「お姉ちゃん、無事に帰って来てね」
「お姉様、ご武運を」
「僕、信じてますから」
「帰って来てもらわないと困るんだからな!」
子供達もアルカに声をかけに来ていた。
「ちゃんと帰って来て、また教えてあげるから鍛練を怠らないように」
「はい!」
「街の子供達と仲良くね」
子供達はアルカの指導がない時は仲良くなった街の子供達と遊んでいたのだ。
子供達が街へと戻るのを見送っていると、
「アルカ殿、準備を終えたそうです」
ダンは兵士達と一緒に訓練を受けていた。だからか一皮剥けたようで雰囲気が以前とは違った。
「さて、目障りな溝鼠を駆除するとしようか」
にやりとアルカは笑った。




