第十八話 盗賊
ここから新しい編です。
新キャラが出ます。
「カ〜イ〜ト〜!」
前を走っていた商人らしき人の背中がビクッと反応する。
商人は街道の端に馬車を止めた。
「久しぶりだね。元気だった?」
アルカは駆け寄り、その商人に話しかけた。
「あぁ、お前も元気そうで何よりだ。にしても聞いたぞ。勇者に選定されたんだってな。まぁ、お前ならありえるよな」
「それよりカイトはこの先の街に行くの?」
「あぁ、そうだが…」
「行き先も同じだし、一緒に行こうか」
「まぁ、それは構わないよ」
「何を売りに行くの?っていうか調味料はある?」
「あるが…」
調味料は貴重で高価だ。カイトが渋ると、
「何?それとも嫌なのかな?」
アルカは笑顔で首を傾げる。
「いえ、そんなことありません!もちろんありますとも!」
カイトは命の危険を感じ、即答する。
「そう」
にっこりと笑う。
「お姉ちゃん、その人知り合いなの?」
親しげな様子にマルコは話しかける。
「うん、そうだよ〜」
「誰だ?こいつら」
見覚えのない子供達にカイトは首を傾げる。
「弟子」
「……そうか。お前らしいな」
答えるまで間が空く。
「何よ?」
「いや?何でもない。それよりここら辺で盗賊が出るらしいぞ」
「はぁ?まじで?あいつら何やってるんだ…」
とアルカがぼやいた途端、
「おいおい、まだ獲物がいるぜ。今日は付いてるよな」
「うわっ、まじか。あの女、白髪に真紅の目とか希少価値高いぞ」
「いや、あっちの女もなかなかいけるぞ」
明らかに盗賊だと思われる男達が現れ、にやにやといやらしい目で見てきた。
「何?こいつら?」
アルカは男達の言葉に眉をしかめる。
「さぁ?盗賊じゃねぇ?」
のんきに会話する2人。
「これが?」
アルカは訝しげに男達を見る。
「これが」
それを聞いた男達は殺気立った。
「てめぇ、さっきからふざけたこと抜かすんじゃねぇぞ!」
「そこにある商品を根こそぎ奪ってやる!」
「そこにいる子供も高く売れそうだよな〜!」
「あぁ!?」
それを聞いた2人はさっきまでの表情を一変させ、同時に声を上げる。
「俺の大事な商品を奪うだと?てめぇら殺すぞ」
「こいつら徹底的に叩きのめす」
逆鱗に触れ、無表情で殺気立つ2人は怖かった。
「なっ何だよ…!」
男達は一瞬怖じ気づくが、数の優位を思い出し、余裕を取り戻す。
「俺らに歯向かう気か?命乞いするなら助けてやっても…」
「アルカさん!」
その場にいきなりボロボロの男が現れ、アルカの前に転がり出た。
「ルイス?どうしたの?そんなにボロボロで」
「助けてください!みんな…!」
男達の姿が目に入ったのかルイスはヒッと声を上げる。
「おい、あいつさっきの奴らの生き残りじゃねぇ?」
「あぁ、あんな奴いたな〜」
「って言ってもみんな死んじまったけどな!」
ぎゃはははと笑い声が響く。
「マルコ、ヨハネ、ルカ、テレサ。中に入ってなさい」
「でも…」
「大丈夫。お姉ちゃんは強いからね」
「うん、わかった」
安心させるように笑うと、素直に馬車の中に入った。
ガルドやダン、セリカさんも武器を抜き、警戒していた。
「さて、そろそろその口閉じてもらえる?」
その瞬間、男の一人が倒れた。
「えっ?」
茫然と突っ立つ男達。
倒れた男には首がなかった。
「貴様!」
また一人倒れ、次々とアルカによって首がはねられる。
「ひっ…!」
最後の一人は恐れをなし、逃げ出そうとしたが、アルカはすぐに間合いを詰め、腹に拳を入れた。
ぐらっと崩れる男の首根っこをつかみ、引きずる。
「相変わらず容赦ないな〜。で、そいつはどうするんだ?」
「情報源」
アルカはその男をカイトの馬車の中に放り投げる。
「あっ、そう。っていうか俺の馬車に入れるな。暴れたらどうするんだ。危ないだろ」
「私が遅れを取ると?」
冷笑だった。
「イエ、ソンナコトハアリマセンヨネ」
カイトは引きつった顔で片言で返す。こめかみから冷や汗が流れるのがわかった。
やべぇ、ぶち切れてる…。
「とっとと街に向かうわよ」