第十七話 教育
閑話みたいなものです。
相変わらずアルカがおかしいです。ちょっとずれてます。
アルカとガルドは表面上は普通だった。子供達の前でそういう空気を一切出さなかったのだ。だが、少し事務的で他人行儀だった。
以前の2人を知らない子供達はそれを普通だと思い、気づかなかった。
少し居心地が悪い程度で思ったより空気は良かった。
「これは食べられるやつ、これは食べたら良くないやつ。ちゃんと生息場所と見た目の特徴を覚えるようにね」
「はーい!」
アルカは子供達にいろんなことを教えている。生きていく上で必要な知識を重点的に教えているのはアルカの優しさである。
他にも武器の使い方を教えていた。
「生きていく上で力は必要です。それは知力だったり、武力だったり、それぞれ得手不得手があります。自分の力を見極めて認めることが大事です。そしてどう鍛えるか自分で考えるのです。わかりましたか?」
「はーい!」
「では教える武器ですが、まずは基本の棒術にしましょう」
「はぁ!?剣じゃないのかよ!」
ヨハネは棒術と聞いて不満そうな顔をし、いの一番に文句を言った。
「駄目だよ、そんなこと言ったら!教えてもらえるだけでもありがたいんだから」
ルカは慌ててヨハネをたしなめる。
「嫌ならそこで見学しとけばいいのです」
相変わらずテレサは冷たかった。
「よろしくお願いします!」
マルコはわくわくした顔で頭を下げる。
「適性を見て重心的に教える武器を決めます」
「武器はどうするの?」
マルコは疑問に思っていたことを尋ねる。
「今から作ります」
「はぁ?」
アルカは周りにある木を見比べ、触る。比較した中で良かった木の前に立った。そして聖剣を出し、斧の形に変えると集中し出した。
まるで空気が圧縮したかのようにマルコ達は感じた。
アルカは斧に魔力を込め、濃密な魔力を斧を纏わせて剣圧で叩き切った。
木は綺麗に切れ、倒れていく。
それを唖然とした表情で周りは眺めていた。
アルカはそんな周りの表情に気づかずにてきぱきと切り出し、棒や剣の形にしていく。
「あぁ、弓も作るか」
と言って弓も作り出した。
「さて、やりましょうか」
アルカが振り返るとみんな茫然とし、突っ立っていた。
「どうかした?」
首を傾げる。
「いえ、何でもありません」
あまりの異様な光景にみんな口を揃えて答えた。
その数日後、模擬戦を行っていた。
「やぁ!」
マルコの振り下ろしをひらりと避け、死角からのヨハネの横払いをしゃがむことで避けた。
「何で!当たら!ねぇ!んだ!よ!」
ひらりひらりと避け続けるアルカに対し、マルコとヨハネはぜぇはぁと息を荒げていた。
そして模擬戦が終わると、二人はぶっ倒れた。
「まったく当たらないんだけど…」
マルコは力の差に落ち込む。
「ヨハネ、あんたは無駄に力を入れすぎ。もっと力を抜きなさい。マルコは悪くないわ。精進するようにね」
「はい!」
「ちょっと待てよ!何で俺だけ!」
ヨハネはすぐアルカに食ってかかる。
「自分で考えなさい」
「ヨハネは全然駄目なのです。教えてもらったことをしていないのですよ」
「振り回されてる感があるよ」
見学していた2人からも言われ、ヨハネは膨れる。
「何だよ!」
「事実を述べているだけなのです。他の人に聞いても同じことを言うと思うのですよ」
「ぐっ…!」
ヨハネもわかってる。だけど認めたくないのだ。
「ガルドさん、俺に剣を教えてくれませんか?」
ガルドはヨハネをちらっと見る。
「アルカに教わってるんだろう。それに俺は人に教えるのは上手くない。俺よりアルカのほうが上手い」
「でも…!」
「お前はあいつの何が気に入らない?」
「それは…」
「お前はアルカに教わるべきだ」
はっきりと言われ、返す言葉がなかった。