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第十五話 指導

魔法の説明が少し入ります。

「精霊魔法というのは基本的には精霊を使役することを言いますが、私の場合はエーテルを操作して発現しています」

「質問いいですか?」

ダンが手を上げる。

「何ですか?」

「その、エーテルとかマナとか何ですか?」

「あぁ、わかりやすく言うとエーテルは魔素で、マナは魔力のことです」

「なるほど…」

「まぁ、エーテルやマナは専門用語ですから」

「で、そのエーテルをどうやって操作するの?」

「エーテルを感じ取ってこう操作します」

アルカは手をふわふわと動かした。

「…………そんな説明でわかるか!」

思わずメイは突っ込む。

「…うっ…う〜ん…」

その声にアルカが膝枕をしていた少年の目が開く。

「な…に…?」

「まだ寝てていいわよ」

優しい声音で少年の頭をなでるその姿は母親のようだった。

「うん。じゃあ…、まだ寝る…」

スゥーとすぐに寝入った。

「……その子供は何なの?」

「昨日の晩に知り合った子供ですよ」

「そう…」

メイは詳しくは聞かなかった。

「エーテルなんて感じ取れないんだけど…」

「問題はそこなんですよね。エーテルを感じ取れないとできないですし。空気中に漂っている力なんですが…わかります?」

「わからないわよ」

「そうですか…。こういう力なんですが…」

アルカは手の平を上に向けているが、メイ達には感じ取れず、さっぱりわからない。

「だから人間には難しいって言ったの?」

「はい」

「どうやったらわかるようになるの?」

「何かがきっかけで急にわかるようになるんですが…。一番手っ取り早いのは聖域に行くことですかね」

「聖域って何ですか?」

ダンはまた尋ねる。

「聖なる領域のことです。今回の場合は霊域のほうですね」

「えっと、霊域っていうのは?」

「魔素の濃度が濃い場所のことですよ」

「あんた、本当に物知りね。どこでそんな知識学んだのよ」

「いろいろですよ」

「まぁ、いいわ。その霊域に行けば感じられるようになるのね?」

「感じ取れやすくなります」

「本人の資質が必要ってことね。上等じゃない。その霊域ってどこにあるの?」

「ここから近いのは…あそこですかね…」

「じゃあ、そこに行くわよ!」

「まぁ、いいですが…。久しぶりに寄ってみるのもいいかもしれませんね〜」

行き先が決まったようだった。


「ほら、左が甘い!」

左からの攻撃を何とかギリギリでかわすも次の攻撃には対応できず、ダンは木剣を弾き飛ばされ、首に木剣を突き付けられた。

「弱い」

バッサリと言われ、反論したくなる。

「…いや、アルカ殿が強すぎるんですよ」

今のところ全戦全敗である。事実、アルカ殿は恐ろしく強かった。

アルカ殿を弱いとか思ってた昔の自分を殴りたい。

「あのさ〜、まず根本的に動きが遅い。あと視覚に頼りすぎ。だから死角からの攻撃に対応できないんだよ。経験不足は私との模擬戦である程度何とかなるとして…」

向こうではガルド達がこちらを眺めていた。

「それに単純だから動きが読みやすいのよね〜。次の動きまで考えて動きなさい」

「はい…」

アルカ殿は次の攻撃へと繋げる動きをしていた。流れるような動きは無駄がなく隙などなかった。

「単純な動きっていうのは読まれやすい。逆を言えば無駄な動きがないってことなんだけど…。ダンの場合は動きが大きいし、無駄が多すぎ。あと隙ができるのを待つんじゃない、隙は作るものよ。わかった?」

「わかりました…」

ダメ出しは結構心にくるものがあった。

「ダンは気って使える?」

「気ですか?」

「傭兵達の間ではそう呼ばれてるらしいわ」

「使えませんけど…。そういえば先輩がそんなことを言っていたような…」

「正確に言うと付与魔法の強化のことで、魔力を体に循環させることで強化するんだけど、まぁ、実際にやってみようか」

そう言われ、やってみることになった。

「魔力は感じ取れる?」

「いえ、剣一本で来たので…」

「本当剣バカね〜。まぁ、いいけど」

そういうのは嫌いじゃないと言われた。

「手を貸して」

右手を差し出すとアルカ殿はその手をつかみ、目を閉じた。

つかまれた右手が熱くなってきた。

「どう?感じる?」

「熱いです」

「そう、それが魔力。治癒魔法をかけてもらった時も温かくなかった?」

「そういえば……」

確かに治癒魔法をかけてもらった時、温かかった。

「それが自分の中にあると思いなさい。すべての生き物に魔力は宿っているわ。まぁ、まれに持ってないものもいるけど」

不安になるようなことを言わないでください。

「魔力を感じ取れたらそれが体中を駆け巡ってるのを意識しなさい。今回は時間がないから私がダンの魔力を強制的に動かす」

「はい」

右手から体中へと回って行くのが感じられた。

これが魔力。

循環している魔力を自分で動かしてみる。最初は上手くいかなかったが徐々に動かせるようになってきた。

「スムーズに動かせるように鍛練すること」

「はい!」

「それと魔力操作ができるようになったら次は魔法ね」

「はい?」

次は魔法?

「私でも魔法を使えるのですか?」

「使えるわよ?魔力があるんだから当然でしょ?」

何を当たり前のことをと言われた。

そもそも魔法とはそう簡単に使えるものではない。知識と技能が必要なために習得が難しいのだ。それが常識である。

アルカ殿が言ったように誰でも簡単に使える訳ではないのだが…。

何だろう…。さすが勇者と言うべきなのか…。

「はい、そうですね…」

ダンはもう諦めの境地にいた。

「何よ?」

「いえ、何でもありません。ご指導ありがとうございました」

礼をし、ガルド達がいる場所まで向かうと寝転がった。

「お疲れさん。にしても勇者は強いな〜。さすが選定者」

ガルドが感心したように言う。

「気って扱えますか?」

「あぁ、使えるけどそれがどうかしたか?」

「いえ…」

ショックである。

「上位にいる奴は大抵使えることが多いぞ。逆に上位に行くには気が使えることが必須とも言うが」

井の中の蛙か…。自分は弱い。だからこそもっと強くならないといけない。

もっと強くなれる。もっと遥かなる高みに行けるんだ!

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