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第十一話 オーガ退治 前編

ダン目線の話が多いです。

「オーガの集落があった。数は20以上。上位種が3体はいた」

セリカの偵察した情報を聞く。

「ただでさえ厄介なのに上位種もいるとは…。しかも3体か…」

ガルドは苦々しい表情をする。

「問題ない。やることは変わらない」

「俺達だけじゃ厳しい。応援を呼んだほうがいい」

「足手まといが増えるだけだ」

「それはそうかもしれないがな〜…」

ガシガシとガルドは頭を掻く。

「……それに応援を呼ぶとなると時間がかかる。あまり時間はかけられないぞ」

「……そうだな…」

今の状況は最悪と言える。このメンバーでオーガを相手にするのは危うい。応援を呼べば安全性や確実性が増すが、応援を待つ間に町の人達の不平不満が爆発し、暴動が起こる可能性がある。

そうなる可能性をアルカもガルドもわかっていた。町の人達は精神的に限界に近いのだ。最悪のタイミングでこの町に来たとしか言えなかった。

「仕方ねぇ…。やるしかねぇか」

「オーガに策は不要だ。正面突破する。死ぬなよ」


「思ったより数が多いな。メイ、大規模魔法は使えるか?」

「使えるけど詠唱に時間がかかるわよ」

「構わん。それである程度数を減らす」

「わかったわ」

メイは集中し、詠唱を始める。

「それを合図に突入する」

エレナはメンバー全員に強化の魔法をかけ、それぞれの戦闘準備を終える。

詠唱が終わり、メイの魔法が完成した。

「ファイヤーレイン!」

空を埋め尽くすような大量の火の雨が現れ、オーガ達に降り注いだ。

思った以上の威力にメイを見るとかなりの魔力を消費したようで息が荒かった。予定ではガルドが付くはずだったが変更する。

「セリカはメイの護衛に付いてくれ!」

轟音が響く中、アルカは集落へと走りながらセリカに向かって叫ぶと、

「了解」

こくりとセリカは頷いた。

「ガルドはエレナの護衛を頼む!」

本来ならエレナの護衛はセリカだった。それを交代される。

「わかった」

扇形に広がり、お互いをカバーするような陣形を取る。囲まれたら終わりだ。

お互いの距離を測り、戦闘を開始した。


「はぁーっ!」

ダンはオーガの腕を斬る。

実際に戦ってみて、なぜ勇者やガルドがあんなにも警戒していたかわかった。

確かに厄介で手強い。

あの巨体から繰り出される攻撃は致命傷を負いかねないものだし、またオーガの表皮は硬く、剣の通りが悪かった。つまり決定的な攻撃を与えられないでいたのだ。

相性が悪い。その一言しかない。

騎士ゆえに対人戦は得意とするが基本的に集団行動である。今回のような少人数での魔物との戦闘の経験が少ないのが災いし、悪いほうに動いた。

常に囲まれないように周囲に気を配り、いくら倒してもまた現れるとループ。戦いの終わりが見えず、体力の温存も考えながら戦い続ける。その精神的なプレッシャーがダンの動きを鈍らせた。

剣の技量は高いが、ダンはまだ16歳の少年である。むしろ未熟で経験不足の彼がここまで持ったほうがすごいのだ。

ただ、戦場では一瞬の気の緩みが生死を分けることがある。

オーガから一瞬だけ気が逸れてしまった。そのため、攻撃を避け損ない、体のバランスを大きく崩す。

「やばっ!」

次の攻撃は避けきれなかった。

衝撃を覚悟したがいつまで経っても来ず、それどころかズドンと音がした。

「えっ?」

「敵から目を逸らすな!」

「はい!」

怒鳴り声に思わず返事をする。

「集中を切らすな!切れたなら限界だとちゃんと言え!」

「はい!わかりました!」

そして気づいた。目の前に土の壁があり、オーガとの壁になっていた。見回すと広範囲にできている。

「おい。これは何だ」

振り向くと微妙な顔をしたガルドがいた。困惑と驚愕と怒りと様々な感情が入り混じり、混乱しているようだった。

気持ちはよくわかる。僕も何が起こったのかよくわからない。

「何って見たままでしょう。土の壁よ」

勇者が答える。

どうやらこの壁は勇者が作ったらしい。

「…………魔法か?」

いろいろ葛藤があったようだが、ガルドは我慢して尋ねる。

「そうだけど?」

「魔法が使えるなんて知らなかったんだが」

「使えると言ってないし、今まで使わなかったからね。使うまでもない相手ばかりだったし。それに私は使えないとは一言も言ってないわよ?」

「…………そうだな…」

怒鳴りたいのを我慢するガルド。

「確かに勝手に判断して思い込んだ俺達も悪いが、一言言ってくれ。それだけで作戦も精神的にも違う。…ダン、お前まだいけるか?」

「一旦下がらせたほうがいいと思うけど」

勇者が口を挟むが、ガルドは気にせず、言葉を続ける。

「無理なら無理と言え。無理されても困る」

冷静に自分の状態を分析し、判断する。

「……一旦下がります」

思った以上に消耗していた。これ以上いてもさっきみたいに足を引っ張るだけだろう。

「そうか。お前、魔法は何が使えるんだ?」

「何がって…、基本的に何でも」

「…………期待していいんだな?」

「まぁ、オーガくらいなら何とかなるでしょう」

「……はぁ。ったく心臓に悪いわ。じゃあ、戦闘を再開するぞ」

「はい!」

ガルドがエレナに声をかけ、戻ろうとしたその時、ズドンという音がした。壁が粉砕されていたのだ。

「あれが上位種だね〜。あれは荷が重いだろうし、私が相手するよ」

「……わかった。死ぬなよ」

ガルドは離れ、敵に向かって行く。その後をエレナも追いかけて行った。

「さて、ダンはセリカ達と交代だ。復帰するかどうかは自分で判断しろ」

勇者の顔つきが変わり、一瞬で戦闘の顔へと切り替わる。

「わかりました」

下がる際に後ろを振り返った。

勇者は片手を上げると火の雨を出現させ、振り下ろしたところだった。

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