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Darker Holic  作者: 和砂
side1
16/113

side1 Darker Holic社 2

《side1》Last目前につき、キャラクタの人気度を調べています。

読者様、お好きなキャラとその萌えpointをお書きの上、コメントお願いします。


 普通の青年のようにラフな、けれどそれなりに礼節を保つ、スラックスとシャツという格好の、DH、No.8のシュートランス。

 今までは黒いボディースーツが常用だったが、今は流行を取り入れたお洒落着を着こなす鏡花。


 二人は廊下の隅にある、以前は喫煙所、社内禁煙が推奨されてからは休息所となっている、ちゃちなベンチに腰掛け、世間話をしている。


 シュートランスはこの休憩が終わって午後になれば、DH幹部として、現代にあって笑ってしまうような黒いマントの制服で出勤だ。

 そして鏡花は、やっと手に入れた長期休暇を満喫するため、彼から色々と情報を仕入れている最中であり、他にあまり目が行っていない。

 もちろん今や社内禁煙のこの場所で、用がある人間の方が少ないのだが。


 シュートランスが以前の癖でタバコを取り出そうとするのを、鏡花はやんわりととめて胸ポケットに戻した。

 楽しみを邪魔されたような表情をしたシュートランスだが、横に動かした視線で《社内禁煙》の文字を見、舌打ちして壁に寄りかかる。


 そんな彼は、ふと廊下に鋭い視線を送った。

 鏡花もつられて顔を向けるが、そこにはトーイがいて、明るく片手を上げて挨拶する。


 それにほっと肩を竦めて、シュートランスは関係ない雰囲気に、欠伸をした。




「これ、頼まれた奴」




 まるでコンビニの買い出しついでに持ってきたかのように、そう言って。

 トーイが差し出してきたものを、鏡花は先ほどまでの明るい表情を消して、神妙に受け取った。


 燃えたか赤黒くなっているそれは何かの金属で出来ており、爆発物の欠片かと、シュートランスは盗み見て判断する。

 それに対しての鏡花の思いなどは皆目検討もつかなかったため、すぐに興味を失くした。


 だが彼女は泣きそうな、受け取れてほっとしたような複雑な表情を浮かべている。

 丁寧に手のひらで包み込んだ。




「正義サイドが勝利したってのは聞いたけれど…No.2は?」


「最終決戦でジウォ側の策略に憤慨して正義サイドと組んだけれど、最終的に相容れなくて。

 一人特攻、機体大破。No.2は行方不明だよ。

 すごい爆発だったらしいから、あまり期待しないほうがいいと思う」




 トーイはあくまで義務的に、つらつらと続けた。

 そうして礼を言った鏡花と、握手を交わして帰っていく。


 彼はまだ役割があるのだろうとシュートランスは見て、「お疲れさん」と見送った。


 鏡花はしばらく金属片を見ていたが、見守る様なシュートランスの視線に気がついた。

 悪びれない苦笑を見せて、そっとハンカチに包み、懐の内ポケットに入れなおす。


 特に何も思わず眺めていたシュートランスだが、はっと気がついた。

 にやにやと、意地の悪い笑みを浮かべる。




「良い男だったのか?」


「…絶対結婚したくないタイプだったけどね」




 肩をすくめて素直に認める鏡花に、彼は毒気の抜かれた顔をして、まじまじと彼女を見た。


 急に気恥ずかしくなったのか、鏡花は手を伸ばしてそれを阻止し、お返しにぽかりと頭をはたく。

 苦笑して頭を撫でるシュートランスに、鏡花は視線を外して思案していた。



 彼は確かに好意を持てるだけの人物であったが、恋愛感情というか、そういうのは湧かなかった。

 ついでにあれだけ傍若無人で、無表情の、偉そうな旦那は欲しくないとも思ったのもある。




「それに私、ほら、悪役だし。先がどうなるのか知っていたけど、見捨ててきたし」


「そりゃ、仕事だからな」




 シュートランスはあっけらかんと言い切った。


 一番それで悩むくせに、変なところで気使いだなと、微妙な顔で鏡花は笑みを作る。

 溜息吐いて腰に手を当てた。


 鏡花が好きだと言った空の都市でも、彼は随分悩み、後悔したのを見ていたから、知っている。


 好感が持てる人物といえば、彼も十分当てはまるのにと、鏡花は恨めしく思った。

 奴は一向に気づかない振りをする、ずるい大人だ。


 まぁ、そういうずるいところもわかってて好きではある。

 けれど、この男もまた、結婚はしたくないタイプだろうなと鏡花はぼんやり思った。




『No.6《キョウカ》、第二セクターまで。

 繰り返す、No.6《キョウカ》、第二セクターまで訪室せよ』




 耳に届いた放送に、シュートランスは顔を上げ、鏡花は黙って腰を上げた。

 手持ちぶさなシュートランスだったが、特に呼び止めようとは思っていないらしく鏡花に手を振る。




「…土産、よろしく」


「はいはい」




 鏡花は肩を竦めて立ち、さっと手を振って廊下から別セクターまで移動した。
















 第二セクターは自動移動のストリートを何本か乗り換えて、廊下を突っ切った場所にある。

 鏡花はそこまでやってくると、個別カードキーにて入室した。



 ここは、DH、No.4の科学者がたむろしている場所でも有名で、鏡花の半壊した漆黒機の修理はもちろん、他の機械類や怪獣などがいる。

 確か、No.9でもある超能力者もここで生み出されたとかいう眉唾の話まであった。



 鏡花が慣れた足取りで漆黒機の傍まで来、やっと直ってきた様子にほっと息をつく。


 その先のあまり脚を運ばない、バイオテクノロジー系と機械系のテリトリーの狭間までやってくると、案内のパネルが浮かんでいた。

 それに従って進み、突き当りの一室、その扉をノックする。




「どうぞ」




 静かな声がして、鏡花は深く考えずに扉を開けた。


 学校の保健室様をした場所であり、白衣の眼鏡男子が、綺麗な笑みを浮かべて振り返る。


 やけに顔立ちの良い、綺麗な男だなと鏡花はぼんやり思いながら、初めて見る顔で自己紹介した。




「No.6《キョウカ》です。御用は?」


「君ね、一度会ったら覚えなよ」




 何だか苦手意識を呼び起こされる尊大な態度に、鏡花は逃亡しそうになった。

 だが我慢して、変わりにうんざりした顔をした。


 初めて見た顔だと思ったのだが、どうやら相手は違うようで、テキパキと書類をどかして続ける。




「No.4だよ」


「はぁっ!? 《マッド》!?」




 さらりと言われた事に、鏡花は素っ頓狂な声を上げて後退し、白衣の男は賞賛を得たように、にやりと笑った。


 その顔は間違いなくNo.4《マッド:マスクイア》であり、鏡花は戦慄する。



 鏡花の知っているNo.4は、無精ひげに汚らしい白衣で、顔が見えない奴である。

 しかもセオリー通り妖しく、激しく変なのである。


 断じて、このように禁断の少女ラブに出てくるような、爽やかな保健医ではない。




 彼は、DH幹部としては珍しくあまり表に立たないのだが、なぜか表側に名前だけ通っており、狂科学者としての最大の特徴がある。




「おやおや、どうして逃げるんだい? 追いかけたくなるだろう?」




 引きつる鏡花の態度を見て、彼はそう言い、きらりとメガネを光らせて詰め寄ろうとした。


 鏡花はその手に光る謎の注射器を見つめながら、気を取り直して彼を見る。


 あまりおびえていると、彼は本気で鏡花を解体する。




「で、用件、何っ」




 鏡花がじっとりと半眼で言うと、彼はすごく残念そうに注射器を置こうとしてやっぱり持ち直し、顔だけはしゅんとして溜息を吐いた。


 頼むから、注射器を置いてくれといいたくなるが、言ったら言ったで怖そうなので、彼女は沈黙する。


 数呼吸後、やっぱり彼は詰まらなさそうに鏡花を見た。




「いや、No.1から君に贈り物を預かっていて」


「面識ないんですけど、No.1は」




 各自忙しく入り乱れるDHでは、同僚の顔を知らないという事態も多々あり、特に幹部はその傾向が強い。


 幹部上位を知らない鏡花がきっぱり言うと、マッドはさもありなんという顔をしていた。

 彼は机からカードキーを取り出すと、鏡花に投げ渡した。


 あまりに乱暴な扱いに、彼女は慌てて両手を伸ばして受け取る。

 扱ったことのないタイプの鍵で、鏡花は困惑してマッドを見た。




「ええと、ここ、この西ブロックわかる? わかるね。そこに檻あるから、中の奴持っていって」


「簡潔すぎて無茶苦茶な。何なんです、それ」




 適当に第二セクターの地図を掲げて適当に指差しながら、言いきるマッド。

 鏡花の何から答えを聞いているのか、彼女本人に気を使わずに、さらっと言った。


 鏡花も、色々と妖しい噂のある彼の雰囲気に慣れてきたか、そう突っ込みを返す。


 途端に、彼は待っていたといわんばかりの、楽しそうな、邪悪な笑みを浮かべて、一言。




「人間の雄」


「………雄ぅ?」




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