表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/3

2

 ここはガバナール王国。大陸西側に位置する、愛と魔法の国。建国神話で「王子様」と「聖女」の恋愛が軸になっていることもあって、貴族でも恋愛結婚が推奨されている。故に身分差の恋にも寛容だ。

 貴族と魔法が使える者のための学校があり、原則として入学は十五歳から。王族も平民も魔法が使える者であれば入学が義務付けられ、魔法の使えない貴族は任意ではあるもののほとんどが通っている。

 そして私はラズベルム伯爵家の一人娘、アルリナ・ラズベルム。父は王宮のお偉い文官、母は社交界の花、兄は微笑みの貴公子というなかなかキャラ立ちした一族の末っ子。

 ざっと振り返って、やっぱり心当たりがないと首を捻る。こういうのって、知ってるゲームや小説に転生するのがお決まりなんじゃないの?

 そう、前世の記憶が定着してまず思ったのはそれだった。前世の私は、一般人と呼ぶには二次元に触れ過ぎている程度の人間だった。小説もアニメも漫画も好きでよく嗜んでいたが、ゲームはそこまで。乙女ゲームは噂には聞けど触ったことがない。ここは恐らく「聖女」が主人公の乙女ゲームだ。お誂え向きに学校があるし。でも、何故心当たりのない私が来たのだろうか。

 うーん、と一通り考えて、サッパリわからず諦める。今はそんなことより考えることある。


「第一王子と婚約、ねぇ」


 この話は、恐らく母が持ってきたものだろう。外面こそ完璧で「社交界の花」なんて言われているが、実態は権力大好きおばさんだ。自分こそが王妃にふさわしいと学生時代は現国王にアプローチをかけまくっていたらしい。けれど現国王が見初めたのは現王妃で、母は恋愛戦争に敗北した。それを根に持っているのか否か、今は社交界を牛耳っているそうだ。

 権力に目がない母だからこそ、恋愛結婚が推奨されているこの国でも容赦なく政略結婚という手を取れる。大方、この前の王妃様とのお茶会で「うちの娘が『王子様と結婚する!』と言って聞かなくて」とか言ったのだろう。この手の発言はそこそこ使われるため、世間で私はすっかり我儘なお嬢さんだ。


「そこは別にいいんだけど、問題はどんな人か」


 ガバナール王国第一王子、ユーリオ・アロン・ガバナール。私は彼がどんな人なのか知らない。会ったことも聞いたこともないからだ。私がデビュタントを済ませていたらもうちょっと情報が手に入るはずだが、今この体は八歳。デビュタントの下限までまだ二年もある。


「好みじゃないって断ったらお母様絶対怒るよねぇ」


 きっと、母の中で私と第一王子が婚約を結んで結婚することは決まっている。この決定を勝手に覆したらどうなるかわかったものじゃない。我儘で思い込みが激しいのだ。


「引きこもりって父様は言ってたわね」


 ならきっと、私が想像する「乙女ゲームの王子様」よりはマシかもしれない。頭お花畑で、真実の愛とやらで身勝手に婚約者を袖にして最終的に国外追放やら処刑やらする「王子様」よりは。

 実機をプレイしたことがないから私の乙女ゲーム知識はほとんどが悪役令嬢ものからだ。その中で描かれる主人公サイドはまぁ酷い。本当に脳みそある? 頭振ったらカラカラ音鳴るんじゃない? と思うような短絡的行動が目立つ。

「よく考えればこれってこうだよね」という視点で書かれていると思うからそこへの苛立ちは置いておくとしても、暫定「乙女ゲームの王子様」に私が惚れるとは思えなかった。だからこその、断りたくなった時の心配だ。


「……ま、会ってから考えよ」


 とにもかくにも、物語が始まらなければ何とも言えない。今は前日譚にもならない段階だ。だって会ってすらないから。

 きっと、私はこれから「悪役令嬢」の役を当てられる。それは別にいい。みんなに好かれるいい子ちゃんよりは嫌われ役の方がやりやすい。ただ、ちゃんと「悪役令嬢」ができるかは不安だ。人に喧嘩売るより図書室で一人静かに過ごす方が好きだし、そもそも王子に恋して狂えるか。

 懸念は減らないなぁと一つあくびをして深く意識を落とした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ