5.挨拶しよう!
えたーなる回避
ガヤガヤとうるさい教室内。
俺はさっきまで先生と話していたことが無かったように誰と話すことも無く黒板に貼られてある紙に書かれてある座席表を見て自分の席に座る。
どうやら俺は人数が多いと喋ることができなくなるタイプのようだ。
情けないぜ…
本来ならここでヒロインを探し、完璧なファーストコンタクトをすべきなのだが…
ノープラン過ぎるし色々と緊張し過ぎて動けないのだ。なんて情けないんだオレッ
というかあの美人な先生と話しただけでやりきった感がある。
オレ…もう死んでもいいや…。絶対死にたくないけど。少なくともヒロイン全員見るまで死ねない。
というかオレの席ヤバない?教卓の真ん前過ぎるんだが?いや確かにオレは主人公じゃないんで窓際の後ろの席には座れないとは思ってたよ?でも前の席だとしてもこれは無いだろ…嫌だよ?これでヒロインのいないクラスで担任がハゲのおっさんとかだったら。それこそショック死すんぜ?
「お前ら早く席つけぇ~」
少し教室内が静かになったっと思ったらいつの間にか担任の先生らしき人が来ていたようだ。
それに気づかないオレ、どんだけ緊張してんだ。
って、このヤニの匂いと気だるげな声は…
「マホちゃん!!!!」
思わず立ち上がり先生ことマホちゃんに抱き着こうと腕を広げて声を出してしまう。
「誰がマホちゃんだ」
瞬間、頭部に衝撃。
洒落にならん痛みがオレを襲う。
生徒名簿、硬ァ!!!!!鉄かよ!!!!
ついテンションが上がってしまった。
というのも主人公がいるクラスの担任は黒峰マホなのだ。
つまりは目の前にその黒峰マホがいるということは主人公とヒロインがセットで確実にこのクラスにいるということになる。やったぜ。
「全員…は居ないが、問題無いな。名前を一人一人呼ぶ面倒なことは面倒なのでせん。必要なプリントだけ渡すからそれ持ってとっとと帰れ」
「ちょっとぉッ!!!人の綺麗な頭ぶっ叩いて何普通に話てんだババア!!!」
もう一回叩かれた。
全員居ないのは多分主人公が来ていないからだろう。
ゲームでは主人公は始業式に理由があって遅れて来ていた。
「いやイテェよ!もう記憶飛んじゃうよッ!!?」
「チッ」
「えぇ…舌打ちしたよこの人…」
「はぁ…まず、私は教師だ。教師をちゃん付けで呼ぶな。そしてババアでも無い。あとお前の頭は煩悩しかないので綺麗なんてことはない。ちゃんと自分のことを理解するんだな」
「ひどいッ!!てかテキトー過ぎるだろ!自己紹介ぐらいしてくださいよ!!!」
「チッ…黒峰マホだ。このバカのようにちゃん付けしたら問答無用で評価を下げる」
「また舌打ちしたよ…てかそんな横暴アリなのかよ!」
「できるからするだけだ。あとうるさいからもう黙れ」
「というかマh…先生!見てくださいよ!この席!正直この席クソだなって思ってたけど麗しの先生が間近で見れるなんてオイラは幸せもんだ!最早運命感じちゃいますよねぇ!!」
またちゃん付けで呼ぼうとしたらすごい目で見られたので怖気づいてしまった。
あれが殺気というやつなのかもしれない…
「んな気色悪いもん感じん。もういいからこれ全員に配って帰れ。いや、やはり佐藤だけはこれ配った後職員室に来い」
それだけ言うとプリントをオレの机に置いてオレが何か言う前に教室を出て行った。
マ?本当にこれ教師なの?なんでクビにされてないねん。
「あ、じゃあ、配りますね…」
まぁまぁな量あるプリントを抱えて後ろを振り向くと珍獣を見るかのような、所謂白い目で皆がオレを見ていた。
オレは委縮し、身体を縮こまらせながら配った。
どうやらオレは多数相手が苦手なようだ。さっきの元気はどこへやら。
プリントを列の先頭に配る時にヒロインを一目見ようとも考えたが皆を見る勇気が出ず下しか向けなかった。僕はチキン。
プリントを配り終えたオレはそそくさと教室を出て本日二度目の職員室へと向かった。
○○○○○○○○○○○○○○○○
「失礼しまぁ~す」
職員室に入ると今朝来た時は無人だったのが数人先生がいるのが見えた
「あの~、2-Cの佐藤なんすけど…」
小心者のオレは職員室という空間に弱いのでどうしても声量が少し落ちてしまうのだ。
「あ、黒峰先生ならそこにいるよ」
キョロキョロしてると優しそうなおじいちゃん教師が指をさしてあっちと教えてくれたので礼を言って今朝と同じ応接間に行く。
「来たか」
そこには飴の袋を丁度あけていた先生がいた。
どうやら流石に他の先生がいるなかタバコは吸えないようだ。
「マホちゃんの顔を拝めるのは嬉しいですけど正直来たくは無かったですね」
「ちゃん付けで呼ぶなって言ってるだろうが」
棒付きキャンディーを咥えながら席に座るよう促してくるので座る
「その飴オレにもくださいよ」
「チッ」
舌打ちはするが飴が入った袋をこちらに差し出してくれたので紫色の飴を取る。
「あざす。マホちゃんやっさしぃ~」
衝撃。
「いやそれ灰皿ァ!!!」
殺す気かッ!
「プラスチック製だ。問題無い」
ちょっと欠けたな…ってちょっと残念そうにしてるけどそれやったのアンタだからな?てか欠けるぐらいの力でオレの頭殴ったの?え?
「体罰反対!!」
「教育だ。」
ダメだ。もしかしてここはヨットでも扱う学校だったのか?
「で、やっぱ説教ですか?」
「当たり前だ」
そこから十数分、朝と似たようなことを言われた。
「だからあまりバカなことをするんじゃない。あとなんで私の下の名前を知っている?」
「すんませんした……へ?」
名前?
急に質問がきた。
そういえば先生が名前教えてくれてなかったな。
自己紹介もオレがマホちゃんと呼んだ後にしたし…
アレ?もしかしてヤバい?
黒峰マホはこんなバカなオレにも優しく説教してくれる人ではあるが一応ゲームでは敵キャラだ。
非人道的なことをしているし間接的に命を奪うようなこともしてる悪人寄りのキャラだ。
もしかしてオレ疑われてる?
コスイの物語では異能力者は皆若いし先生が教師をしているのも表の隠れ蓑とともに学生の中に異能力者がいないか探すためというのもある。
もしかしたらこの返答次第で先生の敵…主人公サイドと判定され消される可能性は無いとは絶対に言えない。
心臓がバクバクと鳴っている。
恐い。ゲームが現実となっているのだ。その証明となるものが今、目の前にいるのだ。
それが恐ろしい。
ゲームで見てきた悲惨なことが、実際にあるのだ、このオレがいるこの世界で。
目の前の事実と共に、事実としてあるのだろう。
「どうした、顔色が悪いぞ」
冷たい目がこちらをジッと見つめている。
なにか、何か言わなければ。
「実は…」
ゴクリと出てもいない唾を飲み込む
「実は、この学校に入学が決まった時にこの学校にいる美少女情報をかき集めていたんですッ!!!」
オレは現時点では異能力を持っているかわからない。いや、持ってなどいないのだろう。ただのゲームの知識を多少持ったモブに過ぎない。
だが、その異能とほぼ遜色無いゲーム知識を使え。
「朝も言った通り!オレはハーレムを作りたいんですッ!!!生半可なハーレムじゃあないッ!美少女を集めた極上のハーレムをッ!!!!」
オレはバカだ。いつも自分では考えて行動しているつもりだがいつの間にかバカをやっている。
それしか出来ないバカなのでその馬鹿を突き進むのみ。
「情報は命!!この学校に入学してくるであろう美少女のデータをあの手この手で入手したんです!!!!」
「小、中、ともに女学校でありながら何故か共学に行くこととなったリアルお嬢様!西園寺 秋葉!あの西園寺財閥の一人娘であり!まさに高嶺の花!好きな食べ物は意外ッ!たこ焼き!」
目の前のイイ面した敵キャラが呆けた顔でこちらを見ているがオレは続ける。
「小中と一緒でした!その時から男女ともに人気!文武両道!実家が剣道道場をやっている藤宮 霧!!こちらもお堅い雰囲気とは裏腹!皆には隠しているがカワイイモノ好き!!!」
だんだんゴミを見る目になっているような気がするが無視する。
「その他諸々!美少女の情報を学年問わず集めました!!!その中にはもちろん入っていたのです!!!」
「あの学校にはそれはそれは美人の先生がいるとッ!!!!」
オレは力強く叫ぶ、もう自分でも気づかぬうちに立っていた。
「黒峰マホ!!!その名を知るにはそう時間はかかりませんでした!!」
もはや目の前の先生は頭を抱えてしまっている。
「…まぁ、ただ先生についてはあまり情報は手に入らなかったですが…」
なんだか目の前の先生を見ていると落ち着いてしまった。
一体何をしているんだろうオレは。
「…スゥー。まぁ、そんな感じ…です」
腰を下ろす。
「まず何から言ったものか…」
「あ!法に触れるようなことは一切してませんよ!!精々人に聞きまわるぐらいです!!」
嘘だが。法に触れるも何もゲーム知識である。
「はぁ…とりあえず正座」
「アッハイ」
先生は胸元からタバコを取り出し吸い始める。
他の先生に気づかれてるだろうが誰かが文句を言いにくる様子は無い。ペラい仕切りがあるだけだもんね…そりゃ聞こえてるよね…。
こんな空間誰も入りたくはないだろうし、タバコを吸うのもしょうがないと思っているのだろうか。
そして長い長い説教が始まったのであった。
説教が終わる頃には昼はとうに過ぎていた。
何か大切なモノを失った気がしたが名前の件は納得(?)してくれたらしいので命の危険は去ったであろうと信じたい
ただ『先生の許可が出るまでお前が調べた人物との接触禁止』を言われてしまったのが途轍もない痛手であった。
…自業自得か…。
バカは治らないらしいがこの世界にあるであろう異能力でもバカは治らないのだろうか。
バカがバカらしくバカなことを考えながら学校をうろつく。
もう構内には人の姿がほぼ無く、いたとしても用務員さんか教師だけだ。
ほぼ放心状態のオレはとくに理由も無く廊下を歩いていると前から誰か歩いてくるのが見えた。
「あれ?もしかして…」
主人公だった。




