回想【親友】
さて、突然なのですが。
私アリアは2025年の日本からの転生者でございます。
私が転生者だと思いだした経緯をお話しますね…
10年前アリアは6歳の時に酷い高熱を出して寝込んだ。
寝込む前アリアは神殿の礼拝堂でお祈りをしていただけだったし、そのときに流行り病などはなかったので、何故こんなにも高熱が出たのかと神殿の者達は慌てた。
6歳の時から優れた魔法を使っていたアリアは神殿でも貴重な存在。城からも一刻も早くアリアの体調が良くなるようにと、名医と呼ばれる医者が何人も神殿に診察に訪れていた。
しかし原因は不明。
神殿の神官達も医者もアリアの高熱の日が7日を越えたくらいで、諦めはじめていた。
アリアは高熱にうなされている時、ずっと違う場所にいる夢をみていた。
夢にしてはかなりリアルで、現実のように感じた。
その夢は見たこともない沢山の建物がならぶ街の中で生活している女の人の夢だった。
その人は20歳を超えているかいないかくらいの人で髪は肩にかかるくらいの茶色の髪。
目は大きな二重で、体型はやせ形。大人の女性にしては小柄。
6歳のアリアが見ても可愛い人だなという印象だった。
アリアはその人を背後からずっと見ていた。というよりその人の後ろから離れることが出来なかった。
その女性の後ろにふわふわと浮いているような感じで体は少し透けている。
実際女性には見えていないようで、こちらを振り向くこともしない。
自分は夢の中で背後霊にでもなってしまったのかと思っていたが、なぜ知らない場所の知らない女性の後ろにいるのか、何か意味があるのかもしれないとアリアは考え、とりあえずこのまま女性の後ろで見守る事にした。
ある日はテーブルが沢山並んでいる場所で、何やら細い板の用な2つ折のものに向かって作業をしている。
またある日は沢山の見たこともない建物が、並ぶ街の中を歩いていたり。
そのまたある日は変な作りの小さな部屋のベッドでくつろいでいたりする様子など様々な場面を見ていた。
(この女性は誰だろう…知っているような気がするんだけど、)アリアは思った。
この女性は他の人に『スズキサン』と言われていたのでこれがこの人の名前なのだろうか、不思議な名前だ。しかしどこか懐かしい気がする…
不思議な部屋のベッドに座っている時、彼女は決まって小さな額を持っている。
最初はあまり気にしなかったが、彼女が大切そうにその小さな額を見ていたので、ある時その額の中に入っているものを後ろからアリアは覗いた。
その中には2人の女性が並んでいる肖像画が入っている。ここまで美しく描かれている肖像画は見たことがない。
彼女の後ろからしか見ることができないが、アリアは物珍しいその肖像画に釘付けになっていた。
その肖像画に描かれている2人の女性の一人は『スズキサン』だろう。でも今よりめ少し若い気がする。
もう一人は…髪は短い茶色の髪。目は大きくはないが綺麗な二重。細身で身長は彼女よりも大きい。
(あれ?この短い髪の女の人…ん?え?私知ってる…?)
「ミキ…」
不意に彼女が声を出した。
(ミキ?聞いたことがある。なんだっけ?)
アリアは思いだそうとしたが、なかなか出てこない。
「なんで…なんで死んじゃったの…うっ……ひっく」
急に彼女は額を抱き締めて泣きだしてしまった。これまでも額を眺めては泣きそうにはなっていたが、今日は本当に泣いてしまった。
この額に入っている肖像画の一人が亡くなってしまったということなのだろう。
自分の両親も馬車の事故で亡くなっている。しかしたったの1歳だったアリアは両親を覚えておらず、教会の神官やその周りにいる人しか知らない。
皆優しくアリアを大事に育ててくれているので、寂しさや悲しい思いなど全くしていない。
しかし彼女は悲しい思いをしている。よほど大切な人だったんだなとアリアは思い祈りを捧げる時のように手を胸の前で組んだ。
(こんなに悲しんでもらえてるんですもの、亡くなった私も浮かばれます)
………ん?私?
(!思いだした!あの肖像画…じゃない!
写真は私だ!ミキは私の名前だよ!
え?あれ?私死んでるの?ここにいる私はアリアだよね?ちゃんとアリアとして過ごしてきた記憶もあ
るし、でもミキは私…どうなってるの?)
アリアの脳内にミキだった時の記憶が段々と戻ってきたのだが、何故自分は死んでしまったのか、今のアリアとしての生は本物なのか、そして今まさにアリアの命の灯が消えそうになっているのではないか!というわからない事に加えてまた死にそうになっているという事態に頭を抱えてしまった。
~国の破滅まで、まだまだ4日~