魔獣
アリア、カイン、ルイスの3人で図書館でドラゴンに関する本をかき集め調べ続けていたちょうどその頃……
城と神殿中間の森の長、一角狼が森に住む魔獣達を集めていた。
『おろかな人間がいたものだ。ドラゴンの巣から卵を盗ってくるとは…』
長が言うと他の魔獣たちも『全くだ』『これだから欲深い人間は…』などと呟いている。
『しかし…これは好機!』
一角狼を先頭に魔獣達が雄叫びをあげながら、城の城門真っ正面に向かってもの凄い早さで駆けていった。
アリアが張った結界は今回のは防御結界だった為に魔獣たちの恨みの防御にはなっていない。
それも理解しているのか防御結界をいとも簡単にすり抜けた。
(やはり、この結界はいつものではないな…ふんっ!結界を張っていた人間の女を追い出したのか...…ではあの女は今は神殿に戻っているのだな。
愚かなことだ、結界は邪魔であったがあのような有能なものを……)
魔獣の長一角狼は結界を張り続けていた、アリアのことを思い出していた。
実はアリアは何度も森に入り魔獣の長である一角狼との対話をしていた。
人間と魔獣で双方が争わずに生きる方法はないものなのかと、何度も森に赴いては魔獣達の意見を聞きに来ていたのだ。
長い間城の人間と森の魔獣でいがみ合いをしていたが、対話という話し合いで解決しようとしたのはアリアが初めてである。
初めてのことなので、最初は一角狼もかなり警戒していたのだが、追い返しても追い返しても何度もアリアは一人で森に入り話し合いをしてほしいと、望んでいることを教えて欲しいと言ってきた。
何度も懲りずにくるので、次第に警戒はとけ話をするようになった。
魔獣達も森を縮小されたり、食べるものが減り、生きていくのがキツイ状態なので譲るわけにはいかない。
人間達も生きて行くために森を伐採して田畑を作っているとのことで、譲れない。
しかし…やはりその為に木を伐採している者だけとは限らず、貴重な木の実をつける木を売りさばく為に切る愚か者もいる。
それを魔獣達がアリアに報告すれば彼女は必ず取り締まってくれた。
魔獣達とアリアには少しずつ良い関係が築けていけていた。いずれはアリアの結界がなくなっても良くなる日がきたかもしれなかったのだ。
なのに城の連中ときたらアリアの努力を全く知ろうとしない。
特に婚約者の王子の愚行は魔獣達にまで聞こえてきていて、アリアを裏切るだけでなく。
あろうことか森の伐採を密かに命じていたのも王子だったようだ。
その理由は貴重な木の実を愛する彼女にプレゼントするため。だそうだ……
話を聞いてくれた、密猟するものも捕まえてくれた、時には食べ物だって持ってきてくれることもあった、魔獣だからとむやみやたらに攻撃したりしない心優しいアリアを……よくも……
魔獣達の恨みは今やアリアを傷つけ追い出したアイン王子に向いている。
ドラゴンの【怒り】だけでなく魔獣達の【恨み】までアインに向いていることに気がついているのはたった一人しかいなかった。
~国の破滅まで、あと11時間~




