その頃城では…
アリアが神殿のみんなとワイワイ話しをしているちょうどその頃セイクリッド城の主である、エドワード・ビルマ・セイクリッド陛下は側近からの火急の知らせを聞いて頭を抱えていた。
この国、いやこの城になくてはならないアリアをあろうことか違う女性と結婚したいからという理由で婚約破棄にしてしまったという馬鹿げた報告があがってきたからだった。
「アレンは何を考えているのだ!アリアに支えてもらっている国…いや城だというのに!婚約破棄だと!しかも他の女と結婚するだと!馬鹿か!あいつは馬鹿なのか!!」
エドワード陛下はもはや家臣、側近の前でも感情を爆発させて怒鳴りちらした。
「陛下!どうか心を落ちつけて下さいませ。
まだ正式な婚約破棄の書類は受理されておりません。」
側近の一人のベリスがそう告げた。
長年エドワード陛下の側近としてつかえているベリスはアレンの浮気等の問題行動を知り、すぐさまアレンに忠告と陛下へ報告していたのだがそのかいなくこのような結果になったことを酷く落胆した。
しかしまだアリアからの正式な書類は届いていない。
これで書類が届き受理されてしまえば、この城は終わりである。
「しかし…ベリス!あやつは事の重大さに気がついておらぬ!アリアと!婚約破棄など!ありえん!」
完全に頭に血がのぼっている陛下は顔を真っ赤にしている。声はだんだん大きくなっていき、執務室の外にまで内容が聞こえてしまった他の側近や兵等も慌て始めた。
「陛下。アリア様からの正式な婚約破棄の書類が届く前にこちらから手違いだったとお詫びをしてはいかがでしょうか?」
ベリスはなるべく冷静に陛下に伝えた
「そ…そうか。それならばまだ何とかなるやもしれん。ベリス!すぐに手紙を書こう!」
「かしこまりました。すぐにご用意致します。」
ベリスはすぐさま陛下の執務室を飛び出し、アリアに書くお詫びの手紙を出す準備を始めた。
(どうか…どうか間に合いますように…アリア様!どうかお戻り下さいませ!)
ベリスは急いで準備をしながら心の中で願っていた。
しかしながらこの願いは叶わないということをまだベリスは知らない。
陛下の声が聞こえてしまった兵士や侍女たちによりアリアとアレン殿下が婚約破棄してしまったという噂は城全体に届くまでそう時間はかからなかった。
もちろんアレン殿下の母親であるエレン王妃にもこの噂はすぐに耳に入り、あまりの事にショックを受けたエレン王妃はその場で倒れ寝込んでしまった。
殿下のもとにもアレンの側近達が慌てて事実確認をしにきたのだが、本人はいたって普通に
「そうだ!私は本当に愛する人といっしょになるのだ!素晴らしいだろう!」
などと声高らかに告げた。
その言葉を聞いたアレンの側近達3人もあまりの事に倒れてしまったのだが、アレン本人は
「倒れるほど嬉しいのだな!」
と見当違いの事を言っていた。
~国の破滅まで、まだ4日~