カフェでの出逢い
カランカラン
可愛らしいベルの音と共にアリアはカフェに入店した。
「いらっしゃいませ。お一人様でよろしいでしょうか?」
カフェの定員さんであろう若い男性がすぐに寄ってきて声をかけてきた。
「いえ…連れが先に」
と言いながらクリスを探すと、もう既に窓際のとても素敵な席に座って手を振っている。
(はやい…)
アリアはそう思い、定員さんに
「ありがとう。あそこに連れがいます」
と言い、クリスの座っている席に歩いていった。
カフェの店内はとても清潔だし、綺麗な雑貨がインテリアとして飾られていて上品なカフェであることが良く分かった。
「先に何か注文しちゃおうよ」
クリスに言われ、メニューを見てみるとアリアの大好物のイチゴのタルトがあった。
これは前世であるミキの時から大好物で、ミクとよくカフェ巡りをして色んなところのイチゴタルトを食べたものである。
アリアが懐かしい記憶に目を細めて笑っていると、
「やっぱりアリアはイチゴタルトだよね?顔がもうそう言ってるからね。」
クリスが笑いながらこちらを見ていた。
アリアは見られていたことが少し恥ずかしくてそっとメニュー表で顔を隠し、
「私イチゴタルトと今日のオススメの紅茶ね!」
と言った。
「はいはい」
クリスは生暖かい表情で返事を返すとベルで店員を呼び、イチゴタルトとベリーのタルト、そしてオススメの紅茶を2つ頼んでくれた。
クリスは頼み終えると早速という感じで店員さんの観察を始めた。アリアも少し顔をずらして心臓の鼓動の高鳴りの正体を探した。
というかクリスは店員を見ただけで殿下が惚れ込んでいる女性が分かるのだろうか、噂でここのカフェの定員だということは流れてきていたが、どんな女性なのかまでは聞こえて来なかったはずだ。
アリアは不思議に思いながらも、鼓動の高鳴りの方に集中した。
「アリア」
ふいにクリスに名前を呼ばれそちらを見ると、クリスがメニュー表を盾にしながら指差ししている。
クリスは声を落として
「今、奥から出てきた店員さん!髪が茶色で肩よりちょっと短くてゆるふわな感じの女性」
アリアが言われた方を見るとちょうど横を向いてしまったが確かにクリスが言ってる女性がいた。
「あの女性がアイン殿下の惚れ込んでる女性だよ」
(本当にわかるんかい…)
と心の中で突っ込みをいれて、チラっとクリスを見るとメニュー表を盾にしたままその上から目を覗かせて見ている。
(それ…逆に目立つから)
はあ…とため息をもらしてアリアもその女性を再度見た。
すると今度はその女性店員さんはちょうどこちらを見ていて、目があった。
【…ドクッ!!】
【ドクン!!…ドクン!!】
心臓の鼓動が強くなる!女性から目が離せない。
(ああ…この人なんだ。なんでよりによって殿下の思い人がビンゴなんだろう。とにかくなんで反応してるのか確認しなきゃ)
女性は微笑んで会釈して仕事に戻っていったが、アリアはまだ目が離さないで見続けた。
クリスもこちらをちらりと見て、彼女がビンゴなのだと察してくれたようだった。
◇◇◇◇◇
しばらく観察していると、頼んだケーキセットが運ばれてきた。配膳してくれたのは彼女だった。
彼女は元気な声で「お待たせしました!」と言うと2つのケーキセットを置いてお辞儀をした。
「「ありがとう」」
アリアとクリスが言うと頭をあげた彼女とアリアはまた目があった。
その瞬間だった。
【ドクン!!!】
心臓の鼓動の音と共に何故か前世の映像が走馬灯の様に頭に流れてきた。
そして気がついてしまった。
「なんで…」
アリアの口から漏れたのは疑問の言葉
「アリア?」
クリスが心配そうに聞いてきたが、アリアの耳には入ってこない。
「なんであなたなのよ…【ミク】」
アリアのか細い切なげな言葉はクリスにも彼女にも聞こえていない。
~国の破滅まで、まだまだ3日~