続、アリアの休息
いただいたリンゴを片手に商店街をアリアが歩いていると、前方からクリスが歩いてきた。
「あっクリス!」
「ん?アリアか!今日は町を練り歩いていたのかい?」
「そうよ。マリス様にも報告してきたししばらくは休んでくださいって他の神官達からも言われちゃったからね…私全く悲しくないのに」
クリスはその言葉で手を口元に持っていきクスっと笑った。
まあクリスには私が全く悲しくない気にしていないことなんてお見通しなんだろう。
「アリアらしいね。そうだ!暇ならちょっと付き合ってくれない?」
「別に構わないけど…どこに行くの?」
「ふふ…」
(あっクリス悪い顔してる…なんか企んでるな)
アリアはそう思ったが、暇なのは事実だしクリスが何を企んでいるかも気になったので、着いていくことにした。
◇◇◇◇◇
着いたのはお洒落なカフェの前
「クリス、ここって…」
「アイン殿下のお気に入りの女の子、気にならない?見てみようかと思ってさ。」
クリスはそれはもう楽しそうな笑顔をこちらに向けてくる。
(アイン殿下が惚れ込んでる女の子かぁ…うーん、どうでもいいの方が勝ってるんだけど、何か行かなきゃ行けない気がするんだよね…)
アリアはこのカフェの近くに来てから、なんだか心臓の音が聞こえてきそうなくらいドキドキしていた。ただ具合が悪い訳ではなく、何かを察知した時、感じた時にはアリアはいつも心臓が高鳴るのだ。
このカフェの前で心臓の鼓動の高鳴りが一番大きくなったということは、ここに何かがあるということ。
(悪いことじゃないといいけど…殿下の惚れ込んでる人がいるっていうのが何か引っ掛かるなぁ)
「どうする?行く?行かない?」
カフェの前で黙ったまま考えこんでいるアリアを見てクリスが聞いてきた。
「もしかして何か…あるの?」
幼い頃から一緒にいるクリスには、アリアが何か感じとっている時に心臓が高鳴るのを知っているので少し真剣な表情になった。
アリアは無言でコクりと頷くと、すっとカフェの建物を見上げた。
「一旦僕だけ入ってみる?」
クリスが提案してきたが、
「いえ…一緒に行くわ」
「大丈夫なの?」
「この心臓の高鳴りは悪い事だけとは限らないから、確認しておきたいの。殿下の惚れ込んでる人に関してじゃないと良いんだけどね。もう関わりたくないし…」
「そりゃあそうだよね…よし!とりあえず一緒に入って何の件で高鳴ってたのかをアリアは調べてみて。
僕は例の女の子を見つけて観察しながらケーキ食べてるから!」
「…ちょっとクリス!」
今度はいたずらっ子の様ににっと歯を見せて笑ってクリスはカフェの扉を開け、入っていった。
アリアには見えないようにクリスは一瞬無表情になり、その後目は細められて口元だけ弧を描いて笑っていた。
「ほんっとにクリスは」
アリアはそう言いながらクリスの後を追ってカフェへ入ったのだった。
~国の破滅まで、まだ3日~