自身が異世界転移したと知った今日この頃
ハロー、オイラの名前は風香奈落!赤子に生まれ変わった高校生だァ!
生まれ変わった後の名前は分かんねえけどな!……しゃーないじゃん!ママンとパパンの喋っている言語がわかんないんだもん!あとなんか昨日は気付かなかったけどこの国の助産婦さんみたいな奴がいた。
なんでこんなテレビもpcもない中世みたいなこの国で、助産婦さんが居るんだよとは思うけどな。
っとそろそろ腹が減って来たな。あ、ナイスタイミングでママンが来た。
ヘイママン。食べさせてくれー!
「はい、アーン」
もぐもぐ、うん美味しい、日本と変わんないぐらい食文化が進んでいるなあ
めっちゃうm
ん?
「どう、美味しい?ノーデ?」
微笑みながら喋りかけてくるママンの声が聞こえていることに気付いた。
「はい、オムツねえ」
あの生まれ変わりから一ヶ月が過ぎた。
急に声が翻訳された時は混乱したものだが、よーく考えてみて、
一日目、俺が寝る時に、声がした事を思い出した。
あの時、眠たくてよく聞こえなかったが、
何か言われたのだろう。それによって父さんと母さんの声が聞き取れるようになったと、言う感じか。
まあ、生まれ変わりということ自体、特殊なことだからな。なんとか日本を目指すことを目標としよう。
こっちにきてからの俺の名前も、父さんと母さんの会話から導き出すことができた。
そして、そろそろ俺も、この赤ちゃんの体に慣れて来た、自分の中の自分ではない自我をはっきりと認識し、高校生だと意識するほどの知能を手に入れたからなのか、感情のコントロールをうまくできる様になった。
そのため全く泣かなくなったのだが、それを両親は心配しているらしい。
まぁ、両親といってもあまり父とは会わないんだけどな。どうやらここは東南アジアのようだ。
いつも狩りに行っていると言ってるからな。俺とあんまり会わないのも納得だ。
ま、夜たまにギシギシアンアンいってるからな。帰って来てはいるんだろう。
この一ヶ月三分の二ぐらいしてるぞ?まだまだ若くてラブラブな夫婦だな
生まれ変わって十五日くらい経った時に、母さんの誕生日が来て、母さんも父さんも十八歳になったっていってたなあ。………んで、ママンとパパンが昨日で初めての結婚記念日って言ってたんだけど……
うん!そこは触れないでおこう!そういうことにした。
唐突に話題は変わるが、赤ちゃんにはハイハイという移動術があるのだ。
そして、高校生の知能で、人体の仕組みを理解しているからなのか……
「だー!あだー!」
「あら!ノーデったらもうハイハイが出来るようになったの!?」
なんと!生後一ヶ月!ハイハイが出来るようになったのだ!生活に革命が起こる!
「すごいわ!ノーデ。お父さんに伝えに行っちゃおうっと!」
いやー一ヶ月ベットの中で練習した甲斐があったわー。
……途中何回か漏らしたけど
まあいい。これで家の中を自由に移動できるのだ。赤ん坊のお漏らし何回なぞ、全く釣り合わない。
そ・し・て!ベットの近くにある階段のように積み重なっている木箱を使ってぇ!窓の外の景色を見る!明らかに登って下さいと言わんばかりの階段があるのだ!だったら登るしかないよなあ!
うん。まあ仕方がない。だって外めちゃくちゃに音が鳴ってるんだもん。気になるやん!
と言うことで、朝飯を俺にくれて部屋から母さんが出て行った時にこっそりと階段を登る
どうやらさっきはしゃいで部屋を出て行ったのは、狩りに行っている父さんに昼飯を届けるとついでに俺がはいはいできるようになった事を伝えに行ったらしい。たまに帰ってくる父さんとの会話で狩場は結構遠いから馬を使っても三十分ぐらいかかるらしいし、ちょうどいい。さて、やるかー!
まあ実際にはっ!結構っ!大変っ!なんだけどな!
よし!登り切った!いざ外の景色を!
「………」
俺は勘違いしていた。生まれ変わったとしても、同じ世界だろうと。
違う国というだけであり、頑張れば日本に帰れるだろうと
「あ?」
それがまさか、地球にすら戻れないかもしれないなど
「あだ!?」
まさか、そこが、魔法のある、別世界だとは
「あだあああああああ!!?」
夢にも思わなかったのである。
衝撃で木箱から落ちてしまった。
「大丈夫!?ノーデ!?」
まだ出発していなくて、俺の叫び声を聞いた母さんが、慌てて部屋に入ってくることも意識の外側に追いやってしまうほど、この事実は重く、冷静に考えないといけない事態なのだ。
落ち着けー。ふう。まず俺がみたのは、杖を持って魔法を打ち合っている中学生くらいの男女5組と、
剣を持って魔物と戦っている。同じく中学生くらいの男女4組だ。
普通に考えれば、地球には、魔法なんてないわけだし。魔物なんて物語でしか聞いたことがない。ましてや、剣だって持ってる奴は奇異の目で見られる。文明が進んでないし、いつも大きい音がするし、何か変だとは思っていたが、まさか魔法の世界だったとはね。想像の斜め上を行くよ。そして、それらのことを踏まえると、ここが、ライトノベルとかで言う、異世界だということだ。まあ、転生者のラノベはよく見てたけど、そこまで簡単に受け止めきれないよね。
俺はそれを望んでいたわけだし。それが叶うとは夢にも思わなかった。
「一応やっとこうかしら」
お?この展開はもしや?
「大地の恵み。癒しの精霊よ。汝、その苦しみから解放せよ。〈回復〉」
やっぱりきたー!ポエム詠唱きたー!
いやー、異世界物だったらこれは必須だね。
地球に戻る方法は探していくとして、こっちで生きていくという選択肢もあるだろうな。
しばらくはこの世界で生きられるよう研鑽を積む。
赤ん坊の頃から練習をしておけば強くはなれるだろう。
そのために大体魔法の本とかがあるはずなんだが。
まあ、その前にあと一年たったら、この部屋から監視がなくなるらしいからな。
思う存分魔法を学んでいこう。剣術の方は力がないと無理だからな。大きくなってからでいいだろう。
急に黙り出した息子を見て、ママンが
「大丈夫?ノーデ?」
と聞いてきたので
「あだ!」
と返して安心させておいた。
年があんまり離れてないせいか。彼女みたいだな。
彼女いない歴=年齢の俺には眼福でしかないな。
っとその時。
『魔力量の増加・および転生特典により、転生者へギフトが贈呈されます。』
ぐっ!
なんだ?急に頭に声が流れてくる!
これがいわゆるチートスキルってやつか!?
おいおい熱すぎだろう!
『なお、該当年齢まで達した時、ギフトが与えられます。該当年齢は「五歳」です。』
え?は?
つまり、五歳までそのチートスキルがもらえないってこと?
………クソガァァァァ!
まあ、シャアナイ。とりあえず一年間待って、魔法を学んでいくか。
あ、
「おぎゃあああ!」
「はいはい、おむつねえ」
すまんママン。霜は我慢できないんや。