No.1キャバ嬢の乙姫
私、乙姫。海底にあるキャバクラ・竜宮城でNo.1キャバ嬢をやっていたけど、なんせ辺鄙なところにあるので、全く客が来ない。
「竜宮城はとっても良いところなのに。そうだ、亀! わざと怪我でもして、人間の男を騙してきなさい!」
困った私は客引きの亀を使い、人間の男をここに連れてくる事に成功した。
亀は運良く人間に虐められたそうで、助けてくれた浦島太郎を連れて来たという。確かにこんな汚い亀を助けるような善良な男。この竜宮城の客にピッタリ。
という事で私は、浦島太郎を精一杯もてなし、毎日ドンチャン騒ぎ。毎日浦島太郎は食い散らかし、酔い潰れていたが、気にしない。私はキャバ嬢として仕事をしたまでだが、最近、浦島太郎は具合が悪そうなのは、気がかりだったが……。
お酒もあんまり飲んでくれず、医者に診察させりると、肝臓や胃に病気がみつかった。糖尿病にも併発しているという。おかげで浦島太郎は歳の割にかなり老け込んでいた。
「さすがに毎日ドンチャン騒ぎは不味かったわね」
とはいえ、これ以上、病気の浦島太郎が竜宮城にいられては困る。
病気の診断書とこれまでの請求書を玉手箱に入れ、浦島太郎に託すと別れを告げた。
浦島太郎は帰るのを嫌がっていたが、仕方ない。連日遊んだツケはどこかで払わないといけないのだ。きっと玉手箱を開けたら絶望するだろうが、こればっかりは仕方ない。
「ねえ、この話って『アリとキリギリス』よりホラーじゃない? 善良の男がただ遊んでいただけで取り返しがつかなくなるんだから」
客引きの亀に話しかける。
「そうですね、乙姫。今頃、浦島太郎も絶望しているでしょうが、自業自得ってヤツだい。いくらおいらを助ける善行したって、帳消しにはできないもんがあるぜ」
亀はそう言うと、竜宮城から地上へ向かう。今日も浦島太郎のような男を騙すために。